2010年12月26日日曜日

中国国家発展改革委と人民銀、2011年融資目標めぐり意見相違=新聞

[北京 23日 ロイター] 2011年の中国の銀行新規融資目標をめぐり、中国国家発展改革委員会(NDRC)と中国人民銀行(中央銀行)の間に意見の相違がある。23日付の経済観察報が関係筋の話として報じた。
 NDRCが経済成長への影響を懸念しているのに対し、人民銀行は銀行融資の抑制を望んでいるという。

 同紙によると、人民銀行が6兆5000億元の融資目標を提案していた一方、NDRCは8兆元を提案。NDRCは結局、国務院(内閣に相当)への最終提案でこれを2010年の目標と同じ7兆5000億元に修正した。

 報道は、政策決定をめぐる当局内部の意見の対立を伝える数少ない記事。

 アナリストによれば、中国人民銀行は金融政策を決定するが、独立性を欠き、金利や人民元に関する主要な決定には国務院の承認を必要とする。

 一方、政府当局者によると、NDRCは政策決定にきわめて重要な役割を果たしている。

米債券投信から資金流出、過去2年で最大-逃避が加速

12月22日(ブルームバーグ):米債券投資信託から顧客が先週引き揚げた資金は、過去約2年で最大規模となった。債券投資からの逃避が加速している。

  米投資信託協会(ICI)によると、15日終了週に米債券ファンドが経験した資金引き揚げは86億2000万ドル(約7170億円)に達し、前週の16億6000万ドルを大きく上回った。これは2008年10月15日終了週以来最大の規模で、当時の資金流出は176億ドルだった。

  債券ファンドから投資資金が逃げ出しているのは、景気回復の兆しと株式相場の上昇で利上げ観測が高まっているためだ。米連邦準備制度理事会(FRB)は11月に6000億ドル相当の米国債を追加購入すると発表したが、それ以後、米国債の売りは加速。ブルームバーグのデータによると、10年債利回りは3.35%と、11月4日の2.49%から上昇している。

  投信コンサルタントのジェフ・ボブロフ氏は、投信から主に資金を引き揚げたのは恐らく機関投資家だと指摘。ファンドを通じるよりも直接購入することで高い利回りを享受するのが目的だろうと分析した。同氏は「個人投資家の大半はじっとしていると思う。資金が別のところに流れているようには見えないからだ」と語った。

  ICIによれば、資金引き揚げは課税対象の債券ファンドからが37億7000万ドル、地方債ファンドからは48億5000万ドルだった。

ブラジル:ABS業界の捜査や融資返済遅延、国内金融システムに警鐘

12月20日(ブルームバーグ):ブラジルでは、資産担保証券(ABS)業界が初めて捜査対象となったほか、消費者向け融資の返済遅延が増加し、銀行の株価が約10年ぶりの大幅安となるなど、国内金融システムの亀裂が表面化している。

規模の比較的小さい銀行の資金調達コストは、資産規模で同国21位の銀行パナメリカーノ銀行に対する11月9日の救済措置が捜査に発展して以後拡大しており、譲渡性預金(CD)の平均金利は11.8%から12.9%に上昇。融資債権の売買市場は機能を停止し、ブラジルの資本市場協会によると、資産担保コマーシャルペーパー(ABCP)の払い戻しは、同行の救済後これまでに合計23億レアル(約1100億円)に達した。

このような国内資本市場のストレスが、ブラジル株の指標ボベスパ指数を2008年12月以降81%押し上げた投資家の楽観ムードに水を差している。

コンプライアンス(法令順守)やリスクに関する助言サービスを提供する1982年創業のFTIコンサルティング(米メリーランド州ボルティモア)は「パナメリカーノの一件は警鐘となった」とした上で、「市場ブームの陰で信用の質低下のようなリスクが見過ごされている可能性がある」と指摘した。

信用リスクコンサルティング会社エクスペリアン(ダブリン)によると、11月のクレジットカードなど消費者向け融資の返済遅延は前年同月比23%増と、01年以来の大幅な伸びとなった。20カ国・地域(G20)で成長率4位のブラジルはまた、外国資本が大量に流入しており、インフレ率が5年ぶりの高水準に達している。

パナメリカーノ銀(サンパウロ)は、同行の経営権を持つバラエティショーの司会者シルビオ・サントス氏(80)から25億レアル(約1200億円)の融資を受けた。この救済措置が、同行の会計処理や融資債権購入、ABS業界全体を対象とする捜査につながった。

パナメリカーノ銀の株価は、10月13日に付けた今年の最高値から64%下落。ブルームバーグと米調査会社ビリニー・アソシエーツのデータによれば、ブラジルの金融株としては、遅くとも2000年から始まったボベスパ指数の上昇局面で最大の下落率を記録した。

パナメリカーノ銀の広報担当者は、捜査中の案件にはコメントしないとしている。サントス氏の経営会社グルポ・シルビオ・サントスの関係者に対して、業務時間後に電子メールと電話で取材を試みたが、これまでのところ返答がない。

金相場高騰の予期せぬ帰結-アフリカの村、鉛中毒で子供の死亡相次ぐ

12月21日(ブルームバーグ):ナイジェリア北部にある村スンケでは、泥れんが造りの家が寄り添うように建ち、9家族が暮らしている。金採掘熱の高まりを背景に、子供が相次ぎ亡くなる事態がこの村を襲った。

  村に住む子供25人のうちウムル・ムサさんの1歳の娘ナフィサちゃんを含む5人が5月に命を落とした。村人たちが近くの丘から鉱石を掘り出した後のことだ。村人は鉱石に鉛が含まれていることを知らなかった。金相場の上昇は思いがけない大きな利益を約束した。一方で、近代医学史上で最悪の鉛中毒危機を引き起こしている。

  大人たちが穀物粉砕機で鉱石を砕くと、地面に鉛ダストがまき散らされる。そのそばでは子供たちが遊び、ニワトリは鉛ダストを食べている。金をふるい分けるため鉱石を洗う共同井戸の周辺ではさらに多くの鉛が拡散される。鉛を大量に摂取した場合、子供たちは死に至る。

  「金採掘の代償は大きい。神が与えられるもので人間以上のものはない」-。ムサさん(40)は先月、白いマスクを装着した作業チームが自宅の中庭にまき散らされた鉛ダストを取り除く間、こう語った。

  政府当局者によると、ナイジェリアのザムファラ州では小規模金鉱山での採掘の結果、8つの村で5歳未満の子供少なくとも284人が鉛中毒のため死亡した。国境なき医師団(MSF)によると、血中鉛濃度が高水準の742人が治療を受けており、この数は来年末までに3000人に達する恐れがある。

              脳障害

  米コロンビア大学のジョゼフ・グラチアノ教授(環境衛生科学)は、脳障害や流産など鉛中毒による健康被害は数年間にわたってこの地域をむしばむと予想する。

  相次ぐ死者は、21世紀のゴールドラッシュの予期せぬ帰結だ。金の仲買人の頻繁な訪問に駆り立てられるように、村人たちは過去2年の間にこぞって採掘業に転じた。この間、金融危機の後遺症に苦しむ投資家が安全な投資先を求め、金現物価格は58%上昇。今月7日には過去最高値の1オンス=1431.25ドルに達した。

  米疾病対策予防センター(CDC)の予備検査によると、ナイジェリアでは29の村の土壌から子供たちにとって危険な水準の鉛が検出された。CDCは今回の危機について、死者数と子供たちの血中鉛濃度は「前例がない」と指摘している。CDCはこの地域で検査や治療体制の整備を支援した。MSFによると、一部の症例では、血中鉛濃度は緊急治療を必要とする水準の約15倍に達していた。

金高騰の「残酷な配当」-タンザニアの鉱山、採掘者の射殺が相次ぐ

12月23日(ブルームバーグ):産金最大手、カナダのバリック・ゴールドがタンザニアのケニア国境部近くに保有するノースマラ鉱山からは毎週、数百万ポンドの廃棄岩が掘り出され、村人が住む地域の周辺に積み上げられる。村人の約半数は1日当たり33セント(約27円)足らずで生活している。

  制服姿の子供たちが岩のがれきの山を横切って登校する。その周辺では、頭の上に水の容器を乗せた女性たちが歩いている。金が少なくとも90年で最長の上昇相場となるなか、バリック・ゴールドは増産を進めている。それに伴ってがれきの山も高くなっていく。

  ノースマラ鉱山は村人の祖先が何十年もの間働いてきた場所だ。村人たちも同鉱山で鉱石を採掘している。その作業は、時には命と引き換えになることもある。

  被害者の遺族や目撃者、地元当局者、人権団体の活動家28人へのインタビューによると、わずかな現金を手に入れるため金が混ざった岩を集める人々を、警備員や警察官が銃撃し殺害したとされている。

  地元政府の最高機関タリム地区協議会のメンバー、マチャジェ・バーソロミュー・マチャジェ氏は「彼らは逮捕したり、裁判所に連行したりはしない。銃撃するだけだ」と語る。

  インタビューした28人によると、この鉱山では過去2年間に少なくとも7人が警備隊との衝突で殺害された。報道によると、そのうち少なくとも4件について、警察当局は銃撃が事実だと認めている。

             負傷者も15人

  4人の子供の父親だったムウィタ・ウェレマさんは2009年10月、金相場が当時の過去最高値を更新した日の翌日に殺害された。チャチャ・ニャマコノさんは家族の中で初めて基礎教育を終えた。その1年後に殺された。妊娠中の妻と将来を築く夢を膨らませていたダウディ・ニャガブレさんは2月に銃撃され死亡した。

  タンザニアのダルエスサラームを拠点とする人権擁護団体、法と人権センターおよびマチャジェ氏によると、この間に15人が重傷を負った。同氏は8月まで地区協議会の副会長を務めていた。

  バリックと、同社が株式の74%を保有する英アフリカン・バリック・ゴールドの文書によると、両社はノースマラ鉱山を警察当局に警備してもらうためタンザニア政府に資金を提供しており、武装した民間の警備員も雇用している。

  金相場は過去5年間で約3倍に高騰し、今月7日には最高値の1431.25ドルに達した。ノースマラ鉱山での暴力行為は金相場高騰の残酷な配当なのかもしれない。

  アフリカン・バリックはこの状況に関する質問に文書で回答を寄せ、ノースマラ鉱山には侵入者グループが頻繁に入り込み、武装している場合も多いと説明。これらの人々は価値のある鉱石を盗む目的で違法に侵入していると語った。

総額92.4兆円と過去最大、新規国債44.3兆円弱-来年度予算案

12月24日(ブルームバーグ):政府は24日夕、臨時閣議を開き、2011年度一般会計予算案を決定した。総額は92兆4116億円と今年度当初予算比0.1%増で過去最大を更新した。新規国債発行額は44兆2980億円に上り、当初予算としては2年連続で新規国債収入が税収を上回る内容となった。また、税収不足を補てんするため7兆円規模の税外収入を確保した。

  11年度予算案は、政府が6月に決定した「財政運営戦略」に沿った枠組みで、国債の元利返済に充てる国債費を除く歳出と新規国債発行額について、いずれも今年度の約71兆円と約44.3兆円を下回る規模に抑制するとの政府目標を辛うじて達成した。

  野田佳彦財務相は同日夜、臨時閣議後の記者会見で「税収よりも借り入れに大きく依存するのは1946年以来のこと。次第に税収は国債発行額に近づきつつあるが、この事態は異常だ。1日も早く脱却し、財政健全化の道を着実に歩めるようにしなければならない」と語った。

  菅直人首相は同日夜、内閣記者会のインタビューで予算案について「財政再建という意味でいえば、まだまだ不十分」としながらも、国債の新規発行抑制など「財政規律の面でもしっかりと約束は守ることができた」と表明。その上で、消費税率の引き上げを含む税制抜本改革については年明けの段階で今後の方向性を示したいと述べた。

  一般会計総額のうち、国債費を除き、政策的な経費に充てる一般歳出と地方交付税を合わせた歳出は、今年度(70兆9319億円)を若干下回る70兆8625億円に抑制した。一般歳出は今年度当初比1.2%増の54兆780億円と過去最大。地方交付税は同4%減の16兆7845 億円と5年ぶりに減少した。

  一般歳出のうち、社会保障関係費は同5.3%増の28兆7079億円と今年度に続いて一般歳出の半分以上を占めた。一方で、公共事業関係費は同5.1%減の4兆9743億円と5兆円を下回った。

  これに対し、国債費は前年度比4.4%増の21兆5491億円を計上した。国債の想定金利は、概算要求時の2.4%から2.0%に引き下げるなどして2兆5830億円を圧縮した。

         税収は2年ぶりに40兆円台回復

  歳入面をみると、税収は今年度当初比9.4%増の40兆9270億円で、当初ベースでは2年ぶりに40兆円台を回復。これによって国債依存度は47.9%と前年度(48.0%)をわずかに下回った。毎年の行政サービスにかかる政策的経費を国債などの借金に頼らず、税収などの収入で賄う基礎的財政収支(プライマリーバランス)も22兆7489億円の赤字と、前年度(23.7兆円)より改善する。

  新規国債発行額の内訳は、財政法第4条に基づく建設国債が6兆900億円、単年度の特別立法が必要な赤字国債が38兆2080億円。過去最大だった今年度(44兆3030億円)をわずかに下回ったものの、2年連続で40兆円の大台に乗った。

         国債発行残高、11年度末に891兆円

  日本の国債発行残高は、11年度末に国内総生産(GDP)を38%上回る668兆円程度、国・地方を合わせた長期債務残高は同84%上回る891兆円程度といずれも過去最大を更新する見込み。リーマン・ショック後の景気刺激策を優先し、債務残高が増加傾向にある主要7カ国(G7)の中でも突出して多い。

  税外収入は、過去最大だった今年度当初比32.2%減の7兆1866億円を計上した。基礎年金の国庫負担比率2分の1維持に必要な財源(2.5兆円)を独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」の利益剰余金1兆2000億円や財政投融資特別会計の積立金と剰余金全額の計1兆588億円、それに外国為替資金特会から特例的に11年度分2309億円を充てる。

  進行年度の外国為替資金特別会計の剰余金を前倒しで活用するのは2年連続。このほか、今年度分の剰余金2兆7023億円も全額一般会計に繰り入れることから、税外収入のうち特会の積立金などの埋蔵金は計4.2兆円に上る。

  基礎年金の国庫負担維持について野田財務相は「臨時財源頼みはもはや限界」とした上で、「税制の抜本改革で安定財源を確保しなければならない」と指摘。政府は12年度以降は消費税率の引き上げを含む税制の抜本改革で確保した安定財源を充てる方針を示している。

  歳出のなかでは、特に民主党のマニフェスト(政権公約)の実現や経済成長、雇用拡大などの関連事業を対象とする「元気な日本復活特別枠」で2.1兆円を計上。子ども手当や農業戸別所得補償制度、高校の実質無償化などのマニフェスト関連予算は総額で今年度当初比0.6兆円増の3.6兆円が充てられている。

  財務省は経済危機対応・地域活性化予備費1兆円を要望したが、子ども手当の財源に1500億円、菅直人首相の指示を受けた科学技術振興費の積み増しに400億円を転用するため、8100億円に減額となった。

激論!「日本経済は本当に破綻するのか」 細野真宏VS藤巻健史

週刊朝日 12月25日(土)16時5分配信

日本の借金は積もり積もって1千兆円近い。来年度の年金も減額されることになった。景気は? 消費税は? 社会保障はどうなる? 日本経済は破綻してしまうのか? ……次号から連載を開始する、経済に造詣が深い藤巻健史さんと細野真宏さんが徹底討論した。

藤巻健史(ふじまき・たけし) 1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを経て、現在は投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表を務める。著書に『日本破綻 「その日」に備える資産防衛術』(朝日新聞出版)など。ブログは、http://www.fujimaki-japan.com/takeshi/

細野真宏(ほその・まさひろ) 『経済のニュースがよくわかる本』が経済本で日本初のミリオンセラーに。数学、経済、投資など累計700万部突破。一貫し「数学的思考力」と「金融・経済教育」の重要性を説く


細野 今の日本の問題は、あらゆるニュースを悲観的に捉えてしまうこと。よくよく考えてみたらそれほど悪くないニュースであったとしても、閉塞感があるので、雰囲気で自然と思考が暗い方向に向かってしまう。様々なニュースを断片的に見るのではなく、それが何を意味しているのか総合的に冷静に捉える数学的な思考法が必要不可欠な状況なんだと思います。

藤巻 でも残念ながら、僕は現在の経済状況に関しては悲観的なんです。希望と分析は違う。むしろ楽観論ではいけないと思っています。遅かれ早かれ、日本は破綻する。ただ一度クラッシュした後に大復活をするとは思います。10年後の日本はすごく明るいでしょう。そういう意味では閉塞感を持つ必要はない。今やるべきことは、大復活の前の破綻に備えてどういう保険をかけておくか。あまり楽観的でいると、そのクラッシュを乗り切れない。

細野 10年後の日本がどうなるかは、これから1、2年の国民の理解度によると思います。「消費税が上がると景気が悪くなる」という誤解があります。これは「未納が増えると年金が破綻する」というのと同じ「ひっかけ問題」。消費税を上げると景気が悪くなるのではなく、消費税を上げない限り景気はよくならない。
 なぜなら、例えばこのままの状態が続くと財政破綻の心配がますます強くなり、国民の将来の不安は強まり続けます。しかも、このまま財源不足が続くと、社会保障も維持できなくなり、さらに将来不安が大きくなり続けます。日本の財政悪化の本質は、日本の年齢構成が変化し、高齢化率が世界一高い社会になったからです。社会保障のために消費税を上げ、医療や介護、年金、保育の分野に資金が回るようにし、国民の安心が得られる状態にしない限り、財政に対しても、社会保障に対しても、国民の将来不安は消えない。つまり、このままの状態では、個人金融資産が1450兆円もあっても将来が不安で使えないという状態がずっと続いていくわけです。

藤巻 消費税を上げれば景気がよくなるのか、悪くなるのか、僕にはわかりません。ただ、今や消費税を5%程度上げただけでは破綻が避けられないほど財政が悪化している、とは言えます。時すでに遅し、です。なにしろ、税収よりはるかに大きい額を長年支出してきたからです。最近は特にそれが加速している。
 家計でもそうですが、収入以上に目いっぱいカネを使っていれば破綻するのは当たり前です。日本はバブル崩壊以後、財政出動をして30兆、40兆円もの巨大赤字を毎年のように積み上げ続けた。そして累積赤字が今年度末には973兆円にもなるわけです。1年に10兆円ずつ返しても完済に100年かかるんですよ。今年度予算での税収が37兆円、税外収入をあわせても48兆円ですから、10兆円返すためには38兆円しか使っちゃいけないところを、92兆円も使っている。それでは100年かかっても返せっこない。
 さらなる問題は、今は金利がゼロだからいいけれど、5%に上がったら、金利の支払いだけで、いずれ50兆円に達してしまうということです。税収はバブルの絶頂期だった1990年度でも60兆円でした。このときは消費税は3%でしたが、5%だったとしても65兆円でしょう。それなのに50兆の金利支払いがあったとしたら、財政は破綻するのに決まっています。

細野 僕は今の日本の一番の問題は、思考停止だと思います。実は2008年末までに社会保障国民会議という、日本医師会、経団連、連合などが参加した総理直轄の有識者会議で、これからの「あるべき社会保障の像」について徹底的に議論をし、精緻なシミュレーションもやって、すでに議論の段階は終わっていたわけです。
 ところが民主党が「予算を組み替えれば簡単に10兆、20兆すぐ出てくる」といった勘違いを国民に広めてしまったため、この2年間は思考停止状態が続き、まったく状況が変わらず、閉塞感だけが漂っていたわけです。ようやく菅首相とその周囲は予算を組んで現実が見えてきて、「2011年の6月までには消費税をいくら上げるかを決める」というところまできた。当初は「政権交代からの4年間は消費税の議論すらしない」と言っていたことを考えれば、随分な進歩ですよね。要は、何党が与党になろうが、実は選択の余地はほとんどなく、日本が進むべき道は2008年末の段階で決まっていたんです。

藤巻 そのとおりで、「事業仕分け」でも無駄が省けなかったから、この数年間は埋蔵金でなんとかやりくりしてきた。しかし、今や埋蔵金ではなく埋蔵“借”金です。巨額の赤字があっても、今は景気が悪く金利が低いので、なんとか予算を組めていますが、景気がよくなったら間違いなく破綻します。景気がよくなればお金を借りる人が多くなり、金利が上がるからです。

◆国の借金はゼロにする必要なし◆

 ところで、巨額の借金を返すために、孫子の代までただただ働くのか? なにせ10兆円ずつ返しても100年かかるのですから。それとも我々の世代でつくってしまった借金だから我々が責任をもってきれいにして、きれいな日本を孫子に渡すのか? 徳政令で借金棒引きにするのも一法ですが、これはあまりに過激で、銀行などがつぶれてしまうからだめです。残るはハイパーインフレしかない。だが政治的には許容できない。唯一残されているのは、マーケットが反乱してハイパーインフレになるというシナリオです。国債の入札で応札額が募集額に届かない、つまり未達が起きて、株と債券と円が大暴落する。
 でも円が大暴落すれば、不幸中の幸いがある。日本はそれを武器に輸出を伸ばせるわ、工場が日本に戻ってきて仕事が増えるわで、10年後には大回復することができるのです。今の韓国がそうです。97年の通貨危機で通貨ウォンの価値が3分の1になった。それで大回復した。

細野 藤巻さんの論で一つ申し上げておきたいのは、藤巻さんの前提は「国の借金をゼロにするには」ということですが、個人の借金の場合とは違って、国の借金についてはゼロにしなくちゃいけないというわけではないですよね。会社と同じように国家も長く存続していくものなので、借金があること自体が問題ではなくて、要は、借金をしながら回していければいいわけですよね。財政破綻が起きるのは貸手がいなくなるからで、1998年のロシアを例に挙げると、短期国債の利率が172%という、とんでもない金利になっていた。そこまでいってデフォルト、破綻ということになる。
 日本は2010年6月に「財政運営戦略」というスキームを作って、2015年度までにプライマリーバランスの赤字を半減し、2020年度までにプライマリーバランスを黒字化させる、という枠の中で予算を組むことを決めています。消費税を安定的に上げていくことなどによって、雪だるま式に増えていた借金を一定ラインで落ち着けることができれば、持続的に回していけるわけで、必ず破綻するというわけではないと思います。これは、冒頭でお話ししたように、「これから1、2年の国民の理解度による」という話が大いに関係あるわけですが。

藤巻 僕は、国家は原則、借金をしてはいけないと思っています。借金をして、それを元手に利益を生もうという企業とは違うのです。国家が、例えば借金をして橋を造るのなら、その橋が老朽化するまでにその借金を返済しておかなければなりません。そうしないと、建て替え用の借金がその上に積み重なってしまうからです。残念ながら日本国の借金は巨大化してしまった。

◆5%の金利変動は珍しくない◆

 プライマリーバランスというのは国債の元利払いを除いた話です。プライマリーバランスを達成したところで、金利が上がって5%になったときに発生する金利50兆円の支払いをどうするのかということです。累積赤字が100兆円、200兆円ならプライマリーバランスを達成することに意味はあるけれど、973兆円の元本があると別の話です。今の日本は480万円の年収の人が毎年920万円使っている。そして、すでに借金は9730万円に膨れあがっているのと同じ状態です。収入を600万円に上げ、金利支払いと元本返済以外の支出を600万円に抑えたとしましょう。600万円の収入に対し600万円の支出ですから、プライマリーバランスが達成できたのです。このとき借金総額が100万円といった少額なら将来に望みがあります。しかし、借金はすでに9730万円もあるのです。金利が5%になれば金利支払いは約500万円です。600万円の給料ではまったく追いつかない。1100万円の収入にしないと、借金はぐいぐい増えていってしまうのです。
 ちなみに1100万円の収入では借金は増えなくても元本は減りません。人生、借金を返すためだけに働くのです。プライマリーバランスを達成しても、何にも解決にならないことがおわかりかと思います。

細野 国の財政破綻の話は2段階で考える必要があるわけですよね。まずは「国の仕事を毎年の税収の中でやりくりできるようにする」というプライマリーバランスの話。そして、もう一つは、借金の金利の話ですよね。国の借金というのは、対GDP比、経済規模との比較で考えるもの。つまり、国の借金が雪だるま式に増え続けないようにするには、プライマリーバランスの黒字化と同時に、借金の金利以上に経済成長をする必要があるわけですよね。これは、なかなかハードルが高いと思います。だからこそ、政治を中心とした今のような思考停止が続いている状態は問題だと思っています。

藤巻 5%の金利って珍しいことでもなんでもない。今の政策金利0~0・1%も異常金利ですが、僕がディーラーになった80年には、今の政策金利に相当する金利は12・75%でした。そう考えれば今から金利が5%上がるのは、決して想定外の話ではない。金利の支払いだけで税収がすべて消えてしまう可能性がある。そのときにどうやって公務員の給料を払うの?っていう話です。毎年40兆、50兆の国債が新たに発行されてきたわけですが、これは個人がお金を銀行に預けて、そのお金で金融機関が国債を買っているからできる話です。つまり個人金融資産が増えないと、新たに国債を買うお金が出てこないわけです。
 ところが個人資産は10年ほど前の1400兆円から50兆円しか増えていない。最低でも毎年100兆円ぐらい個人資産が増えていないと、毎年新たに発行する40兆から50兆の国債を吸収できないはず。じゃあ、お金はどこからやってきたのか。これまでは金融機関が貸付金を引っぺがして、そのお金で国債を買っていた。でもそのお金ももうない。だから危ない、国債が売れない可能性があるというのです。

細野 確かに日本は世界一の借金国ではありますが、ここで押さえておきたいのは、そもそも、その973兆円の借金はどこへ行っているのかという点です。消えてなくなっているという誤解があると思うんです。例えば公共事業などで使われたお金は、民間の企業に発注され、最終的にそこで働く人々の給与や株主の配当になって個人に回っている。つまり基本的に国の借金というのは個人金融資産になっているという面があるわけです。しかも、日本は経常黒字の国なので、国内のお金は増え続けてもいるんですよね。

藤巻 でも、毎年40兆~50兆円新たに発行される国債を買うほどには増えていない。これは新規の借金なんですから。だから、国がいつまで借金をし続けられるのか心配なのです。そこで、為替について一言、言っておきたい。80年と比べると、米ドルに対する通貨の価値が中国の人民元で4分の1ぐらい、ウォンでも2分の1になっている。それに比べて円は3倍。だから日本は、これらの国々に比べてダメなんです。景気が悪くなったら通貨を安くして国際競争力を増やさなければいけないのに、円高にして競争力をそいできた。
 もし円が今、1ドル=240円になったら、輸出もよくなるし、工場は国内に戻ってくるから仕事も増える。工場の周りの商店街やレストランも栄える。観光客もたくさん来る。こうして景気もよくなるから、年金問題もなくなるし、財政赤字もなくなる。それなのに、みな為替は動かせないと思っている。動かすのは簡単です。外貨建て商品の利益にかかる税金をゼロにすればいい。1450兆円の個人資産のうち10%動けば145兆円。これだけの円売りがあれば、かなりの円安になる。ポイントは1450兆円をどうやって海外に向けるか。そうすれば円安になり景気もよくなり財政出動する必要もなかった。

◆国にできることは高が知れてる◆

細野 最後に消費税増税についても誤解が多いと思うのですが、実は2009年に成立した改正所得税法で消費税は社会保障の目的税化しているんです。つまり、これから消費税の増税分は、すべて国を通して私たちの社会保障に回っていくことが決まっているわけです。もっと具体的に言うと、医療や介護や保育で働く人の給与となったり、私たちの年金になるわけです。
 例えば消費税2%分で5兆円の財源が生まれます。これは160万人の給与分に相当し、これだけ雇用が増えれば、現在5%台の失業率は2・8%程度にまで低下するという試算もできるわけです。消費税の増税というのは、社会保障の安定とともに雇用の創出も行うわけで、国民の金融資産がそのまま国民の金融資産に向かっていくだけの話なんです。
 そして、私たちは必要に応じて医療や介護や保育といった社会保障のサービスを安価で受けることもできるようになるわけです。日本は「お金がないから景気が悪い」というわけではなく、お金はそこそこ持っているのに、「漠とした将来不安があって、使えないから景気が悪い」という状況。消費税を上げるのは実は「家計から家計への新しいお金の流れをつくる」ことで、私たちの過剰な将来不安が解消されていく、という話なんです。

藤巻 いずれにせよ、今は政府に頼っちゃいけない。カネがなければ政府は何もできない。アメリカ人的に「自分のものは自分で守る」という認識をもたないと、人生も財産も失ってしまう。

細野 その点は賛成です。「政権交代すれば景気がよくなる」というのが「ひっかけ問題」であったのは、まさにそこが本質です。藤巻さんの仰るとおり、財源がなければ、国にできることなんて高が知れているわけです。多くの人は「少なくとも今ぐらいの社会保障は維持してほしい」と考えていると思います。そろそろ「無駄の削減」と「社会保障のための消費税のアップ」は両立できるものだという話に気付くべきタイミングなんだと思います。そこに早く気付かないと、藤巻さんの仰るような財政破綻ということまで視野に入れざるを得ない状況になってしまいますから。