12月24日(ブルームバーグ):政府は24日夕、臨時閣議を開き、2011年度一般会計予算案を決定した。総額は92兆4116億円と今年度当初予算比0.1%増で過去最大を更新した。新規国債発行額は44兆2980億円に上り、当初予算としては2年連続で新規国債収入が税収を上回る内容となった。また、税収不足を補てんするため7兆円規模の税外収入を確保した。
11年度予算案は、政府が6月に決定した「財政運営戦略」に沿った枠組みで、国債の元利返済に充てる国債費を除く歳出と新規国債発行額について、いずれも今年度の約71兆円と約44.3兆円を下回る規模に抑制するとの政府目標を辛うじて達成した。
野田佳彦財務相は同日夜、臨時閣議後の記者会見で「税収よりも借り入れに大きく依存するのは1946年以来のこと。次第に税収は国債発行額に近づきつつあるが、この事態は異常だ。1日も早く脱却し、財政健全化の道を着実に歩めるようにしなければならない」と語った。
菅直人首相は同日夜、内閣記者会のインタビューで予算案について「財政再建という意味でいえば、まだまだ不十分」としながらも、国債の新規発行抑制など「財政規律の面でもしっかりと約束は守ることができた」と表明。その上で、消費税率の引き上げを含む税制抜本改革については年明けの段階で今後の方向性を示したいと述べた。
一般会計総額のうち、国債費を除き、政策的な経費に充てる一般歳出と地方交付税を合わせた歳出は、今年度(70兆9319億円)を若干下回る70兆8625億円に抑制した。一般歳出は今年度当初比1.2%増の54兆780億円と過去最大。地方交付税は同4%減の16兆7845 億円と5年ぶりに減少した。
一般歳出のうち、社会保障関係費は同5.3%増の28兆7079億円と今年度に続いて一般歳出の半分以上を占めた。一方で、公共事業関係費は同5.1%減の4兆9743億円と5兆円を下回った。
これに対し、国債費は前年度比4.4%増の21兆5491億円を計上した。国債の想定金利は、概算要求時の2.4%から2.0%に引き下げるなどして2兆5830億円を圧縮した。
税収は2年ぶりに40兆円台回復
歳入面をみると、税収は今年度当初比9.4%増の40兆9270億円で、当初ベースでは2年ぶりに40兆円台を回復。これによって国債依存度は47.9%と前年度(48.0%)をわずかに下回った。毎年の行政サービスにかかる政策的経費を国債などの借金に頼らず、税収などの収入で賄う基礎的財政収支(プライマリーバランス)も22兆7489億円の赤字と、前年度(23.7兆円)より改善する。
新規国債発行額の内訳は、財政法第4条に基づく建設国債が6兆900億円、単年度の特別立法が必要な赤字国債が38兆2080億円。過去最大だった今年度(44兆3030億円)をわずかに下回ったものの、2年連続で40兆円の大台に乗った。
国債発行残高、11年度末に891兆円
日本の国債発行残高は、11年度末に国内総生産(GDP)を38%上回る668兆円程度、国・地方を合わせた長期債務残高は同84%上回る891兆円程度といずれも過去最大を更新する見込み。リーマン・ショック後の景気刺激策を優先し、債務残高が増加傾向にある主要7カ国(G7)の中でも突出して多い。
税外収入は、過去最大だった今年度当初比32.2%減の7兆1866億円を計上した。基礎年金の国庫負担比率2分の1維持に必要な財源(2.5兆円)を独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」の利益剰余金1兆2000億円や財政投融資特別会計の積立金と剰余金全額の計1兆588億円、それに外国為替資金特会から特例的に11年度分2309億円を充てる。
進行年度の外国為替資金特別会計の剰余金を前倒しで活用するのは2年連続。このほか、今年度分の剰余金2兆7023億円も全額一般会計に繰り入れることから、税外収入のうち特会の積立金などの埋蔵金は計4.2兆円に上る。
基礎年金の国庫負担維持について野田財務相は「臨時財源頼みはもはや限界」とした上で、「税制の抜本改革で安定財源を確保しなければならない」と指摘。政府は12年度以降は消費税率の引き上げを含む税制の抜本改革で確保した安定財源を充てる方針を示している。
歳出のなかでは、特に民主党のマニフェスト(政権公約)の実現や経済成長、雇用拡大などの関連事業を対象とする「元気な日本復活特別枠」で2.1兆円を計上。子ども手当や農業戸別所得補償制度、高校の実質無償化などのマニフェスト関連予算は総額で今年度当初比0.6兆円増の3.6兆円が充てられている。
財務省は経済危機対応・地域活性化予備費1兆円を要望したが、子ども手当の財源に1500億円、菅直人首相の指示を受けた科学技術振興費の積み増しに400億円を転用するため、8100億円に減額となった。
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