12月21日(ブルームバーグ):ナイジェリア北部にある村スンケでは、泥れんが造りの家が寄り添うように建ち、9家族が暮らしている。金採掘熱の高まりを背景に、子供が相次ぎ亡くなる事態がこの村を襲った。
村に住む子供25人のうちウムル・ムサさんの1歳の娘ナフィサちゃんを含む5人が5月に命を落とした。村人たちが近くの丘から鉱石を掘り出した後のことだ。村人は鉱石に鉛が含まれていることを知らなかった。金相場の上昇は思いがけない大きな利益を約束した。一方で、近代医学史上で最悪の鉛中毒危機を引き起こしている。
大人たちが穀物粉砕機で鉱石を砕くと、地面に鉛ダストがまき散らされる。そのそばでは子供たちが遊び、ニワトリは鉛ダストを食べている。金をふるい分けるため鉱石を洗う共同井戸の周辺ではさらに多くの鉛が拡散される。鉛を大量に摂取した場合、子供たちは死に至る。
「金採掘の代償は大きい。神が与えられるもので人間以上のものはない」-。ムサさん(40)は先月、白いマスクを装着した作業チームが自宅の中庭にまき散らされた鉛ダストを取り除く間、こう語った。
政府当局者によると、ナイジェリアのザムファラ州では小規模金鉱山での採掘の結果、8つの村で5歳未満の子供少なくとも284人が鉛中毒のため死亡した。国境なき医師団(MSF)によると、血中鉛濃度が高水準の742人が治療を受けており、この数は来年末までに3000人に達する恐れがある。
脳障害
米コロンビア大学のジョゼフ・グラチアノ教授(環境衛生科学)は、脳障害や流産など鉛中毒による健康被害は数年間にわたってこの地域をむしばむと予想する。
相次ぐ死者は、21世紀のゴールドラッシュの予期せぬ帰結だ。金の仲買人の頻繁な訪問に駆り立てられるように、村人たちは過去2年の間にこぞって採掘業に転じた。この間、金融危機の後遺症に苦しむ投資家が安全な投資先を求め、金現物価格は58%上昇。今月7日には過去最高値の1オンス=1431.25ドルに達した。
米疾病対策予防センター(CDC)の予備検査によると、ナイジェリアでは29の村の土壌から子供たちにとって危険な水準の鉛が検出された。CDCは今回の危機について、死者数と子供たちの血中鉛濃度は「前例がない」と指摘している。CDCはこの地域で検査や治療体制の整備を支援した。MSFによると、一部の症例では、血中鉛濃度は緊急治療を必要とする水準の約15倍に達していた。
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