2010年11月3日水曜日

米金融緩和続いた場合、ドル20%下落も=PIMCOグロース氏

 [ニューポートビーチ(米カリフォルニア州) 1日 ロイター] 米債券運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)の共同最高投資責任者(CIO)を務めるビル・グロース氏は1日、米連邦準備理事会(FRB)が、非伝統的な金融緩和を続けた場合、ドルは今後数年間で20%下落する恐れがある、との見方を示した。
 PIMCOの本社でロイターのインタビューに応じた。

 同氏は「ドルは20%下落する可能性がある」と述べ、ドルの下落ペースも投資家にとって重要な検討材料だと加えた。

 ロイターがプライマリーディーラー(米政府証券公認ディーラー)を対象に実施した調査によると、FRBは恐らく今週、少なくとも5000億ドルの長期債買い入れ計画を発表することで、投資家やトレーダーが量的緩和第2弾(QE2)と呼ぶ追加金融緩和を開始するとみられている。

 グロース氏は「QE2は、より多くのドルを生み出すだけでなく、投資家がドルから稼ぐ利回りも低下させ、ドルと重要なつながりのある海外投資家が現在の形や現在の価格でドルを保有する意欲を減退させる」と指摘。

 ある程度は、これが米財務省とFRBがともに望んでいることだと語った。

 その上で「ここでの基本的な問題は、われわれの労働力、先進国経済の労働力が、発展途上国経済の労働力と比べてかなりミスマッチな点だ」と強調した。

 米国では、中国政府が人民元相場を操作し、事実上、米国の雇用を盗み去り貿易赤字を膨らませているとの見方が大勢だが、グロース氏はこれについて、経済のグローバル化の副産物だと指摘。
 「経済のグローバル化は、われわれ自身が過去20―30年間にわたり行ってきたことだ。これは全てわれわれが促進したことだが、それがあだとなって返ってきてわれわれを悩ませている。中国、ベトナム、ブラジル、メキシコの労働力がわれわれと競争し、われわれの経済を圧迫している」と語った。

 同氏は「互角になる、つまり均衡を得る方法の1つは、自国通貨の価値を他国の通貨よりも速いペースで引き下げることだ。ドルは準備通貨であり、これはショックなことだが、時間とともに国際経済が均衡を取り戻すために必要な条件である限り、これがわれわれの向かっている方向だ」と強調した。

 同氏はまた、米経済の低成長が続くことから、米国民は成長を求めて海外への投資を今よりもかなり拡大するべきと指摘。

 「一般的に年金基金や米国民は、債務がドル建てであるため、問題を抱えている。恐らくドルから離れて新興国や成長しているところに投資するリスクを取る価値はあるだろう」と語った。

電子書籍の優等生「メルマガ」の時代が来る--堀江氏が語る個人メディアの試み

デジタルマーケティング関連のイベント「ad:tech Tokyo」2日目の10月29日、企業の展示ブースの一角で元ライブドア社長、堀江貴文氏が自身の個人メディアへの取り組みを語る座談会が開かれた。コンデナスト カントリーマネージャーの田端信太郎氏、ターゲッティング社長の藤田誠氏という2人の元ライブドアメンバーを相手に、ブログ、Twitter、メルマガなどについて語った。以下にその発言をまとめた。

堀江氏:個人メディアはライブドア時代からずっと考えていたことです。ブログサービス「livedoor Blog」を開始したのは2003年の暮れですが、そのずっと前から、たとえば当時ライブドア社員だった宮川くん(現Six Apartの宮川達彦氏)は2001年くらいからMovable Typeを自分のサーバにインストールしてブログを運営していた。

 ウェブコンテンツというのは毎日、1時間ごととか頻繁に更新すれば、みんながずっと見に来てくれる。そのためにはどうすればいいんだろうとずっと模索していて、そんなときにブログってありだよねと思った。

 僕も自分でサーバにMovable Typeをインストールして、ブログを始めました。2002年くらいのことだと思います。当時はアスキーから買収したECサイトの事業があって、そのECサイトの集客のために店長ブログのようなものを始めて、いろいろな商品を紹介していたら、そこそこ成果が出た。

 これをもっと個人が使いやすいように、ウェブから簡単な個人情報をいれたらすぐにブログ作れる仕組み、要はブログのASPサービスをやればいいと思った。そういう個人向けのブログがあれば、みんなが使うようになるだろうと思って始めてみたら、本当に使うようになった。僕はいまアメーバブログを使ってますけど、これはなぜかというと別にライブドアブログでもいいんだけれど、そういう大規模なブログサービスでないと何か出来事が起こってアクセスが集中したときに絶対耐えられないからです。

書籍紹介のアフィリエイトが本屋の売上を軽く超える
堀江氏:僕はブログのアクセス数は全然見ないんです。みなさんは緻密にそういうのを考えていると思うんですけど、僕は昔から大雑把でだいたいこんな感じだろうという程度。ブログを始めてみたようと思ったときに、ダンコガイという人(元ライブドアでプログラマーの小飼弾氏)がいました。彼は書評ブロガーとしてすごく有名で、ダンコガイのブログを見てみたら、月間100万円くらいはアフィリエイトで売り上げているらしいということがわかった。

 これは僕にもできるんじゃないかと思ってやってみたら、100万円はいかないけれど、何十万円かの売上にはなった。あとサイバーエージェントがキーワード広告を入れてくれて、そのレベニューシェアを合わせるとけっこうな売上になるのがわかった。

 僕は個人的にSHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERSというおしゃれな本屋さんに出資しているんですけど、そこの売上は2カ月目で軽く超えましたね。本屋って全然売り上げてないじゃんって思いました。

 ブログで売れる本には相性があります。エンターブレインから出てる「銭」っていう漫画はめちゃくちゃ売れましたね。あと元マイクロソフトの成毛眞さんの本とかは相性がいいです。成毛さんの本もめちゃくちゃ売れて、「大人げない大人になれ!」という本は初月で数百冊売れました。

 でもブログのマネタイズに関していうと僕のレベルでその程度です。それだけだと商売にはならない。いまは1人でどれだけできるんだろうと思ってパーソナルメディアを趣味で研究している段階です。そこで次に目をつけたのがメルマガです。

メルマガで年間1億円の売上達成
堀江氏:メルマガのことはウォッチしていました。磯崎さんという会計士がメルマガを始めていたので、試しに購読してみたんです。月額840円なんですけど、けっこう面白かったし、彼はそれでそこそこ稼いでいると言っていたので、僕もやってみようといろいろ調べていたら、この業界もすごいことになっていることがわかった。一番先鋭的なのは情報商材なんですけど、インフォトップやインフォカートは手数料率が安い。

 僕はインフォトップの人にもいろいろ話を聞いたんですけど、要は彼らは情報商材屋さんのニーズに答えて、手数料を抑えて、いろんな人達に使ってもらえるようにした。たとえば佐々木俊尚さんという人はインフォカートを使ってメルマガを発行してた。でもトップページを見たら怪しいんです。競馬や占いばっかりで、一番多かったのはFX必勝法。ここに一緒くたにされるのは嫌だなと思って、それで二の足を踏んでたら、1年くらい前にまぐまぐの創業者の大川さんから連絡があった。「堀江くん、まぐまぐでメルマガ出さない?」って。「手数料率とか勉強してくれませんか?」とかいやらしい交渉をして、僕はいやらしい交渉は必ずするんですけど、それでまぐまぐでメルマガ「堀江貴文のブログでは言えない話」を始めることになりました。

 そしたら読者数がぶわーっと増えた。これはTwitterのおかげでもあります。Twitterにメルマガの感想が投稿されていたら、全部RT(引用)しました。あれは全部自分で手動でやってるんです。ブログにもメルマガの内容を多少載せたりしていたら、有料会員数が月に数百から1000人以上増えていきました。たぶん年内には1万人を超えます。会員数1万人で月間840円。グロスで年間1億円くらいの売上です。相当な収益源になることがわかってきました。これを元にどうやって広げていくかをいま考えています。

メルマガが電子書籍ビジネスの優等生である理由
堀江氏:メルマガは電子書籍ビジネスのなかで一番の優等生だと思ってます。なぜかというと、まず月額が840円。これは本でいったら新書の値段ですよ。新書って印税率がだいたい10%です。すると取り分は84円。でもメルマガの場合はむしろ発行システム側がだいたい20%、30%になっています。それを考えると、メルマガが1万部出てたら、書籍に直せば実質10万部出ているのと同じ規模なんです。さらにそれが毎月入ってくる。これは毎月新書が10万部ずつ売れて、つまり年間では100万部出てるのと同じことです。1万人に840円で売れるということは、新書が毎年ベストセラーでミリオンセラーになるということ。ものすごいことだと思いませんか。

 メルマガの制作には編集者を入れて、レベニューシェアにしてます。だから編集者も営業してますよ。最初は全部のコンテンツを自分で考えて、うちのマネージャーが一応ダブルチェックして送信していたんですけど、3カ月くらい前から編集者が入ってます。

 編集者に対して僕が原稿の要素、たとえば日記やQ&Aとかをどんどん送信して、彼が読者から来た質問をまとめたり、時事ネタコーナー用に今週起こった出来事を50~100個くらいピックアップしてくれます。それに対して僕がコメントをつけるというやり方をしています。編集作業はかなり効率化してきました。印刷と違ってレイアウトに気を遣う必要もないし、写真もURLを貼り付けるだけでいいし、編集者も少なくて済む。メルマガは非常にいい電子出版だなと思います。

役に立つことが3つあれば読者は満足
堀江氏:書くのは大変ですが、宝島の新書編集者から、「新書というのは役に立つことが3つ書いてあれば読者は満足しますから」と言われたことがあります。読者は役に立つことが3個書いてあればお買い得だと思うらしいんですよ。

 だから僕は考えたわけです。メルマガは月額840円で月に4回じゃないですか。1通のメルマガに1個役に立つことを書いていけば、読者は満足して継続してくれるんじゃないかという仮説に基づいて、1個は必ず読者に役立つことを書こうとしています。いろいろなタイプの読者がいると思うので、ターゲットをいろいろ人たちに向けられるように、いろいろな種類のコンテンツを入れています。

 メルマガのコンテンツの内容は広くしたほうがいい。内容は雑誌的になりますけど、メルマガは雑誌と違って毎回コンビニとか駅で売るわけではなくて、新聞に近い定期購読モデル。でも新聞と違って紙がかさばらない。だからすごくいいんです。あと定期購読ってみんな辞めないじゃないですか。

メルマガの時代が来る
堀江氏:ニッチなコンテンツがどんどんメルマガとして発行されるとそれは電子書籍ビジネスになると思います。タブレット端末やスマートフォンでもHTMLメールにすればすごく読みやすいんです。誰もまだ言っていませんが、僕はメルマガの時代が来るんじゃないかと思っています。

 メルマガは実はファンクラブ的な要素も持っていると思います。たとえば浜崎あゆみは有料ブログを会員向けにやっていますが、ああいったビジネスモデルがどんどんメルマガに転化していけばいい。アーティストのファンてけっこうファンクラブに入っているんですけど、ファンクラブの会費って意外と安いんです。年間1万円取っているファンクラブってないでしょ。でもそれが有料でブログ、メルマガ両方読める、Twitterでたまに返事をしてくれるといったモデルを作ると、ものすごいことになると思います。

米映画会社MGM倒産へ 「007」「ロッキー」制作

2010年10月30日
「007」シリーズなどのヒット作をつくってきた米国の名門映画会社メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)が米連邦破産法11条の適用を申請し、倒産する見通しになった。事前調整型の法的整理で、新興の米映画制作会社スパイグラス・エンターテインメントの支援で再建を目指す。

 MGMの再建では、著名な投資家のカール・アイカーン氏がカナダの映画制作会社ライオンズ・ゲート・エンターテインメントとの合併案も提案していた。MGMは29日、債権者による投票の結果、破産法11条とスパイグラスによる支援を組みあわせた再建案が採択されたと発表した。

 米メディアによると、MGMの負債総額は約40億ドル(約3200億円)。債務を株式に変えて債権者が大株主になるほか、スパイグラスも一部株式を保有し、同社創業者が新生MGMのトップに就く計画だ。

 MGMは「ロッキー」などでも知られる老舗(しにせ)。2005年にソニーと米投資会社などが共同買収したが業績不振が続き、再び身売り先を探していた。ソニーはMGM株の約20%を保有しているが、ソニーによると、すでに全額償却しており、倒産でも新たな損失は発生しない。

W氏予測(?)

10/31
金相場は、1360-1380ドル で終了 週後半1330-1320ドルに下落一旦下げた後、目標は1465ドルまで上昇

ドル円予測!ドル円は80円半ばで、完全サポート
あとは、11月中旬の米国金利上昇とともに、円安に突入 いまはロングの仕込み時

米ニューモントの7-9月:予想以上の利益-金価格上昇が寄与

11月2日(ブルームバーグ): 産金で米最大手、ニューモント・マイニングの7-9月(第3四半期)決算は、利益が市場予想を上回った。金価格上昇が寄与した。

同社が2日発表した資料によれば、純利益は5億3700万ドル(約434億円、1株当たり1.07ドル)と、前年同期の3億8800万ドル(同79セント)から38%増加。資産売却益を除いた利益は1株当たり1.08ドルと、ブルームバーグ・ニュースがまとめたアナリスト17人の予想平均(95セント)を上回った。売上高は前年同期比27%増の26億ドル。

ニューモントは、今年の金産出量を530万オンスから540万オンスと予想。従来は530万オンス-550万オンスと見込んでいた。

バーグステン米PIIE所長:人民元高は米雇用増につながる

9月15日(ブルームバーグ):米ピーターソン国際経済研究所(PIIE、ワシントン)のフレッド・バーグステン所長は、中国の為替政策は米国の貿易にとって最も重要な問題であり、人民元の上昇は米雇用の50万人増につながるとの見方を示した。

バーグステン所長は15日、下院歳入委員会で証言し、雇用増の大半は製造業で見られることになり、賃金水準は米国の平均より高くなると指摘した。同所長は、人民元は15-25%過小評価されていると推計している。

同所長は、元上昇容認を中国に迫るためにオバマ大統領と議会が講じるべき措置の概要を提示。米国はまず11月に韓国で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)で問題を提起し、第二に中国が元高を容認しない場合に輸入関税が可能かどうか世界貿易機関(WTO)に確認する必要があると述べた。第三には、ガイトナー財務長官が中国を為替操作国に指定し始めるべきだと主張した。オバマ政権はブッシュ前政権に続き、これまでのところ指定を避けている。

バーグステン所長はまた、米国はドル売り・元買いを開始し、中国の元売り介入に対抗すべきだと指摘。中国が介入をやめれば、同国の経常黒字は年間最大5000億ドル縮小し、米国の経常赤字も1200億ドル減少するとの見通しを示した。

「我々は人民元問題で対抗が可能だ」

英フィナンシャル・タイムズ紙 2010年 10/4付
フレッド・バーグステン(ピーターソン国際経済研究所所長)
We can fight fire with fire on the renminbi
By Fred Bergsten

中国は人民元の操作を継続しており、今では少なくとも10パーセントほど割安な水準になっている。日本は円安のために大規模な市場介入を再開した。スイスは最近になってスイス・フランの上昇を防ぐために1000億ドル以上を拠出している。三カ国とも、またこれら以外の諸国も、既に大規模な貿易赤字を計上し、巨額の外貨準備を抱えているのだが、それにもかかわらず、輸出を通じた経済成長を刺激するために自国通貨の為替レートを弱くしようと考えているのだ。

現状、一部の赤字国は(顕著なのがブラジルだ)自国の競争力を守るためにこうした政府介入を真似ざるを得ないと感じている(彼らもやはり巨額の外貨準備を保有しているとはいえ)。実質的に全ての国が(EUと米国も含めて)、自国通貨の上昇を回避しようとしている。手短に言うと、中国による競争的な通貨切り下げがグローバル経済全体に影響を及ぼしているのだ。

このことは、今日の国際金融システムにおける紛れもないギャップを顕在化させている。つまり、収支黒字国に対する実効的な規律が欠落しているのだ。調整の圧力はいずれも収支赤字国の肩に伸し掛かっており、結果的に生来的なデフレに係るバイアスにつながっている(これはグローバルな景気後退局面において特に深刻なものだ)。IMFは世界大恐慌を悪化させた競争的な通貨切り下げを阻止する目的で設立されたのだが、これまでのところ、それを実行するための手段は一切提供したことがない。

こうした欠陥にとりわけ苦しんでいるのが米国である。他の諸国は米ドルの為替レートを上げ、自国通貨の為替レートを下げるために介入を行うことで米ドルの為替レートを定めることが可能だ。実際、中国は過去五年間にわたって一日当たり平均10億ドルの米ドルを購入することで、これを実践している。IMFのガイドラインは加盟国に「他の諸国の利益(各国がその国の通貨に介入を行っている国の利益を含む)」を考慮するよう要請している。しかし、上記のような政府介入でこれが行われているとの兆候は皆無だ。ユーロの国際的な利用性が増すに連れ、欧州も徐々に同様の問題に直面していくことになるだろう。一方、日本は既に中国による円の操作に苦情を申し立てている。

もっとも、こうしたギャップは、新たな政策手段の導入によって埋めることが可能だ。具体的には相殺的な為替介入である。中国や日本が自国通貨を大幅に割安な水準に維持するために米ドル買いの介入を行った時、米国は抵抗するために同額の米ドルを売るべきなのだ。IMFは必要な場合にはこうした介入の正当性を認め、意図的な自国通貨安に関与して自らの義務に違反している諸国を律するべきである。

違法な輸出補助金に対する相殺関税という伝統的な貿易政策上のツールは有効なモデルである。WTO加盟国が補助金を付与しないとのコミットメントに違反した場合、輸入国側は相殺関税を課すことが可能だ。時として濫用に陥りやすいものの、この手続きはかなり実効的に機能している。先週、米下院は輸出補助金としての意図的な通貨切り下げ(これが事実なのは確実だ)に対処し、相殺関税の正当性を認める法案を可決した。しかしながら、通貨の不均衡は或る国の対外輸出全体(単に特定のセクターだけではない)と、そして輸入全体にも、影響を与えているのだ。したがって、相殺関税よりも通貨面での対応の方が適切なのである。

当然、米国も数々の局面で米ドルのために外国通貨を購入してきた。2000年にはユーロを、1998年には円を購入している。当時、こうした通貨は余りにも割安になっているという点で幅広い合意が存在していた。最も重要な介入が行われたのは1985~87年である。プラザ合意の下、米ドルの割高を是正するために、米国は独マルクと円を購入したのだ。しかし、こうした外国通貨の購入は関係国との協調とともに実施された。その一方、相殺的な為替介入は意図的に自国通貨の為替レートを切り下げている国を罰することになるだろう。このため、対象国は、この新たなツールが広く合意されたシステミックな目的を推進するために利用されていないという説得力のある主張を行うことが出来ると考える場合には、IMFに訴えることが出来るようにしておくべきである。

中国のケースでは、技術的な問題も生じるだろう。人民元は資本フローに対して兌換不能であり、このため、人民元の先物取引や債務証書として代替される物が見出される必要がある。このことは恐らく対抗介入のスコープ(範囲)を中国による米ドル買いのマグニチュードよりも相当に低い程度に制限することになるだろう。しかし、そのメッセージは間違えようがない。民間資本は中国へ流入し(中国当局による資本管理を迂回しつつ)、人民元を必要な水準へと押し上げることになるだろう。より重要なこととして、その原則は明確なのである。つまり、この新たな政策手段はグローバル金融システムにおける重大なギャップを埋めることになり、また、金融安定性と自由貿易の双方にとっての実質的な脅威を減じることになるはずだ。

【参考資料】 「ドルの問題の解決方法」 フレッド・バーグステン FT

「ドルの問題の解決方法」
英フィナンシャル・タイムズ紙 2007年12月11日付
フレッド・バーグステン
How to solve the problem of the dollar
By Fred Bergsten

世界経済は重大な政策ジレンマに直面している。仮に処理を誤れば、あらゆる通貨の危機の原因を引き起こすことになりかねない。多くのドル保有国は(中央銀行、ソブリン・ウェルス・ファンド、民間の投資家を含めて)明らかに他の通貨への多様化を求めている。ドルでの外貨準備高の合計は少なくとも20兆ドルに上るため、こうした希望を穏やかに実現するだけでも、米ドルの急落や、市場や世界経済にとっての大混乱につながりかねないのだ。こうした影響への懸念は政府レベルでも市場でも大幅に広がっている。

しかしながら、多様化を実現させた場合に自国通貨に(現在のドルのような大量の)資金流入を伴うことを望んでいる国は存在しない。とりわけ、ユーロ圏、英国、カナダ及び豪州は、為替レートが既にかなり過大評価されていると考えている。しかし、中国や他の大部分のアジア諸国は、自国通貨が大幅に上昇するのを避けるために過剰な介入を続けている。したがって、更に大規模なドルからのシフトが起こった場合、変動通貨が均衡水準を遙かに超えて上昇し、新たな収支不均衡が発生し、グローバルな経済成長が深刻に停滞する可能性もある。

こうしたジレンマの解決策で全ての関係国を満足させるような内容は一つだけである。すなわち、IMFにおける代替勘定を創設し、それを通じて、不要なドルが特別引出権(IMFが1969年に初めて導入した国際通貨であり、現在は340億ドル相当が存在する)に変わっていくという方法である。こうした勘定は、1978年から1980年にかけて、現在の状況に酷似した通貨の多様化とドルの急落の動きが見られた際に相当に検討が進んでいた。

当時、こうしたイニシアティブが全世界的な通貨の安定性を向上させるという広範な同意が存在していた。それは影響力の強い民間セクターのグループや議会の指導者、そして、IMFの理事会に至るまでであった。この取り組みが上手くいかなかったのは、ただ単に、ドルが大幅に上昇し、米連邦準備理事会による1979~1980年の金融引き締めによってその論理的根拠の大部分が消失したこと、そして、確固たる地位を得たドルの更なる下落の結果として当該勘定が名目上の損失を計上した場合にどのように埋め合わせをするのかを巡る欧州と米国の意見が収斂しなかったせいである。

代替勘定のアイディアはシンプルである。ドルを市場で他の通貨に交換する代わりに(ドルを押し下げ、他の通貨を押し上げる)、ドル保有国はIMFの特別勘定で不要な外貨準備金を預金することが可能となる。これらは同額のSDR(又はSDR建て証券(certificates))として貸方に記入され、各国は将来的な収支赤字や他の正当なニーズに対するファイナンスを行うためにこれを利用し、勘定そのものに償還したり、他の加盟国に振り替えたりすることが可能である。したがって、当該資産は全面的に流動的となる。

IMFのメンバー国は、新たなSDRを必要なだけ発行することで需要を満たすよう、これを承認することになるだろう。これは、全世界的なマネー・サプライに全く影響を及ぼさない(したがって、世界の経済成長やインフレにも影響が及ばないことになる)。なぜなら、その運営は、或るアセットを別のアセットで置き換えることになるからである。代替勘定はドルの預入金を米国債券に投資することもある。仮に追加的な支援が必要だと判断されれば、IMFが保有する800億ドル相当の金があれば充分過ぎるだろう。

全ての国が利益を得ることになる。過剰にドルを保有していると考えている国は、(ドルが44パーセント、ユーロが34パーセント、円及びポンドが各々11パーセントという)通貨バスケット建てのアセットを受け取り、市場ベースの利益とともに追求している多様化を一挙に達成することになる。彼らは、ドルを過度に押し下げることを回避し、残りのドル準備金での損失を最小化し、システミックな(連鎖破綻の)混乱を未然に防ぐことになる。

米国は、更なるドルの大幅な下落から発生するインフレの増大や金利の上昇といったリスクを免れる。仮にこうしたリスクが現実のものとなった場合、その影響は極めて厄介である。現時点で、米国の経済成長は抑制されており、更に来年以降の景気後退の見通しが高いのである。

国際金融のアーキテクチャーは代替勘定によって大幅に強化されるはずである。戦後初期のドルの危機の後、IMFの加盟国は、それ以降は国際通貨システムが単一通貨に依存することがないようにするための戦略の中心としてSDRを採択した。

1970年代に大部分の主要国で起こった変動為替相場への動きによって、こうした戦略を妥結させる必要性が先送りされたが、同時に、極端な通貨の不安定性を産み出すことになり、勘定に係る正式な検討を促した。ここ数年間におけるグローバルな収支不均衡や通貨の大幅な揺れや、本質的に固定為替相場に戻っている諸国による公的なドル準備金の積み上げが加速していることから、SDRの創設と、勘定に係る交渉の双方につながる条件が再現されている。

代替勘定は、国際通貨に係る全ての問題を解決するわけではないし、また、安定的なグローバル金融システムの回復にとっても充分ではない。

米国の対外収支における均衡を回復するためには更なるドルの下落が必要となる。中国、他の多くのアジア諸国及び大部分の産油国は、短期的には自国通貨の相当な上昇を、長期的には現状に比べて相当に柔軟性の高い為替レートを受け入れる必要があるだろう。しかし、早い段階で代替勘定を採用することで、現時点での収支不均衡の調整や、ドル及びユーロに基づく二極化した通貨システムへの避けようのない構造上のシフトに係るリスクを最小化することになるだろう。