2011年6月26日日曜日

J・K・ローリング氏、電子書籍版「ハリポタ」直販へ―オンラインサイト立ち上げ

【ロンドン】世界的ベストセラー小説「ハリー・ポッター」シリーズの生みの親、J・K・ローリング氏は長年、同シリーズの電子書籍版の発売を拒否してきた。だが、今年ついにオンラインサイトを立ち上げ、電子版を読者に直販すると発表した。同サイトはソーシャル・ネットワーク・サイトの機能も備えており、ハ リー・ポッターの魔法の世界を一層楽しむことができそうだ。

 このサイトは「ポッターモア」と名付けられ、アクセスは無料。7月31日に開設されるが、当初の登録者は100万人に限定される。さらに、10月には誰でも利用できるようになり、電子書籍店舗も同時に営業を始める。同店舗では数カ国語版のシリーズ全巻が購入でき、市販されているすべて電子書籍端末にも対応しているという。

 ローリング氏は今回、米アマゾン・ドット・コムやアップルの「iBookstore(アイブックストア)」などのオンライン小売店を通じてではなく、読者に対して電子書籍版を直販するという大胆な販売方針を採用した。他の作家は、出版元が印刷版と電子版の両方の出版権を所有することが多いが、同氏は「ハリー・ポッター」シリーズの電子書籍の出版権を自ら所有している。同シリーズを出版する英国のブルームズベリー出版社と、米国での出版権を持つスカラスティック社はいずれも、電子書籍版の出版権を保有していない。

 ブルームズベリーは23日付の声明で、「ポッターモア」サイトで販売される電子書籍版の売り上げの一部を受け取ることになっていると発表した。

 「ポッターモア」はハリポタの世界を満喫できるようになっている。ユーザーは「ホグワーツ魔法魔術学校」に入学したり、シリーズ第1作目の舞台を旅することができる。またポイントを獲得したり、ゲームを楽しむこともできる。そして、最も注目を浴びそうなのは、ローリング氏がこれまで執筆した未発表部分や、執筆ノートから掘り起こした材料であろう。これでパリポタの熱狂的なファンは、主要登場人物や舞台、プロットに関する背景や解釈を知ることができる。

 ローリング氏は23日、ロンドンで行われた記者会見で、「ハリー・ポッターの世界について長年蓄積してきた追加の情報をファンと共有するつもりだ」と述べるとともに、「この本を書き始めた1990年には存在しなかったメディアを使って、創作活動を続けることができる」とサイト立ち上げの抱負を語った。

 全7巻からなる「ハリー・ポッター」シリーズの第1巻を1997年に出版して以来、ローリング氏はハリポタを巨大なビジネスに育て上げてきた。2007年に出版された最終巻を含め、シリーズの販売部数は世界で4500万部を超え、一方、タイム・ワーナー傘下のワーナー・ブラザースによって、8部作の映画が制作された(最終作は間もなく公開予定)。さらに米フロリダ州オーランドのテーマパーク、ユニバーサル・オーランドには、「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」というアトラクションが設けられている。「フォーブス」誌の推定によると、ローリング氏の2010年の純資産は10億ドル(約800億円)だという。

 「ポッターモア」は、完結したシリーズのビジネスを今後も維持していくための新たな試みだ。

 このサイトの立ち上げのために2年間作業が進められてきた。ユーザー登録には電子メールアドレスの提供が必要となる。つまり、理論的にはローリング氏は100万人以上のパリポタ・ファンに直接コンタクトできる。

 ソニーは主要パートナーとして、同サイトの制作に携わってきた。ソニーの広報担当者によると、同サイト上のオンライン店舗が10月にオープンすると、ソニーはポッターモア・ブランド製品をシリーズの電子書籍版とともに売り出す計画。製品には、ソニー製のポッターモア・ブランドの電子書籍端末だけでなく、ハリポタ関連の電子製品やソフトも含まれる可能性がある。

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