産経新聞 4月1日(金)7時58分配信
フランスのサルコジ大統領が31日に来日し、菅直人首相と首相官邸で会談、東京電力福島第1原子力発電所事故への対応で協力を約束し、世界中に日本への支援を呼びかける意向を表明した。東日本大震災後に外国首脳が東京を訪れたのは初めて。今年の主要8カ国(G8)と20カ国・地域(G20)の議長国を務めていることから訪日は主導権を確立するチャンスだと踏んだようだ。加えてフランスは「原発大国」。「原発不信」の連鎖を食い止めたいとの焦りもにじみ出ている。(酒井充)
「日本国民が大きな試練を尊厳と勇気で乗り越えようとしていることに尊敬の念を伝えたい。福島の原発で作業を続ける人々の勇気ある行動にも大きな感銘を受けた。必ず日本は再生する!」
首脳会談でサルコジ氏は日本への最大限の賛辞を贈った。5月26、27両日に仏北西部のドービルで開かれるG8首脳会合では原発事故を主要議題とし、原発の安全に関する共同声明を出す考えを表明。年末までに世界共通の原発安全基準をまとめる考えも示した。
日本滞在はわずか3時間。サルコジ氏がいかに日本への「一番乗り」にこだわったかを如実に示す。
訪日直前には中国・南京で開かれたG20関連の国際通貨システムに関するセミナーに出席しており、大震災と原発事故が世界経済に与える影響を相当憂慮しているとみて間違いない。
そもそもサルコジ氏は、親日家のシラク前大統領と違い、日本との関係をそれほど重視してこなかった。むしろ大統領就任前に相撲を「知的なスポーツではない」と酷評するなど、どちらかと言えば「日本嫌い」と言われてきた。
それでも訪日を強行したのはG8と、11月3、4両日にカンヌで開かれるG20で議長国として今後の国際金融・経済分野で主導権を確立したいと考えているからだ。
サルコジ氏には苦い経験がある。2008年秋の金融危機「リーマン・ショック」では、G7にかわる国際協議機関としてG20を提唱、持論である「基軸通貨の多極化」に国際世論を誘導しようとしたが、日中韓などはドル基軸体制を支持し、面目丸つぶれとなった。今回のG20で通貨制度見直しを再び議題とする構えを見せており「失地回復」を狙っているのは間違いない。
それだけに今回の訪日は「地ならし」に欠かせなかった。サルコジ氏は17日に訪日の意向を突然表明。日本側は多忙を理由に受け入れを渋り、首相も18日の電話会談で「G8で会うのを楽しみにしている」とやんわりと断ったが、最後はその熱意に根負けした。
なりふり構わない理由はもう一つ。フランスは電力の8割を原発に依存する原発大国で他国への売り込みにも力を入れる。福島の事故で世界中に原発不信が広がることは何としても避けたいのだ。
「明日原発が廃止されたら何が失われるか。安全基準を高めて原発を推進するしかないのだ」
サルコジ氏は31日の共同記者会見でこう強調した。来年に大統領選を控え、それまでに原発事故の「克服」を手柄にしたい。「善意」の裏にそんな「本音」が顔をのぞかせている。
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