3月18日(ブルームバーグ):主要7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁会議による緊急電話会議が18日午前7時から行われ、G7が為替市場で円売り・ドル買いの協調介入を実施することで合意した。野田佳彦財務相が会議後記者団に明らかにするとともに、G7声明も発表された。介入は東京外国為替市場で午前9時に実施した。
今回の緊急電話会議は、11日に発生した東日本大震災と東京電力福島第一原発事故を受けて円相場が戦後最高値を更新するなど、金融市場が不安定になっていることに対応するもの。G7声明は「日本当局からの要請に基づき」、米英カナダ、欧州中央銀行は18日に「日本とともに為替市場における協調介入に参加する」と言明した。
声明は「為替レートの過度な変動や無秩序な動きは経済および金融の安定に悪影響を与える」と指摘。「われわれは為替市場をよく注視し、適切に協力する」としている。
G7声明はまた、「日本における最近の劇的な出来事を議論」するとともに、日本当局から「現在の状況、当局がとった経済・金融面での対応について説明を受けた」と述べた。その上で、「困難な時における日本の人々との連帯意識、必要とされるいかなる協力も提供する用意がある」などとしている。
野田財務相は会議後の会見で、「困難な状況にもかかわらず日本経済は引き続き健全だ」と述べた上で、震災後の円の急伸を受け「日本当局からの要請に基づき、米国、英国、カナダ、欧州中央銀行(ECB)は本日、日本とともに為替市場における協調介入に参加することで合意した」と説明した。
ユーロ買い介入も
介入実施後の同日午前の閣議後会見で、野田財務相は為替市場での「過度な変動、無秩序な動きに対する対応策ということで引き続き取り組んでいく」と述べ、相場動向を見ながら継続的に介入を実施する方針を示した。介入の対象通貨については「基本的にはドル・円だが、ECBはユーロをやるかもしれない」と述べ、ECBによる円売り・ユーロ買い介入の可能性を示唆した。
野田財務相はまた、G7各国が協調介入に同意した背景について「日本が市場における過度な変動、無秩序な動きについてG7各国に理解を求め、認識を共有した」と説明。各国が日本経済を支える強い意志を持ち、躊躇(ちゅうちょ)することなく日本の要請を引き受けてくれたとし、「日本に協力したいという思いがG7各国にあった。友情ある協調だ。感謝したい」と語った。
一方で、円高の要因の1つとして指摘されていた日本企業や投資家による外貨資産の円転換などのレパトリエーション(自国への資金回帰)の動きについては、「日本企業が円資金を確保するため、海外資産を売却するようなことはない」とG7各国に説明したことを明らかにした。
潤沢な資金供給
一方、日本銀行の白川方明総裁は電話会議後の会見で「日銀は為替市場におけるG7各国との協調行動が為替相場の安定的な形成に寄与することを強く期待している。日銀としては、強力な金融緩和を推進するとともに、金融市場の安定を確保するため、今後とも潤沢な資金供給を行っていく方針である」との声明を公表した。
今回の大震災では、被災地にある東京電力福島第1原発の放射能漏れ懸念の広がりが金融市場に大きな影響を及ぼしている。 円相場は17日早朝の外国為替市場で急騰し、これまでの戦後最高値だった1995年4月の1ドル=79円75銭を突破した。18日午前の東京市場では午前9時55分現在1ドル=81円28銭前後で推移。野田財務相の会見直前の午前8時55分現在は同79円45銭前後だった。
G7による協調介入は、1999年1月のユーロ誕生後のユーロ安を受け、2000年9月にユーロ買い介入を実施して以来となる。
みずほ証券の林秀毅グローバルエコノミストはG7の協調介入合意について、「日本大震災と原発事故が世界的なリスクとして認識されて、協調態勢ということが合意に至りやすかった」と指摘する一方、「原発事故の状態がどうなるかまだ予断を許さないが、少なくとも放水活動などでさらに悪化するとの懸念は一服している」との見方を示した。
震災の経済への影響
日本経済は、昨年10-12月期の実質国内総生産(GDP)に前期比年率1.3%減と5期ぶりのマイナスとなったが、今年1-3月期成長率はプラスに復帰すると、震災発生前に多くのエコノミストはみていた。政府も2月の月例経済報告で「景気は持ち直しに向けた動きがみられ、足踏み状態を脱しつつある」として、判断を2カ月連続で上方修正した。
しかし、震災による日本経済への影響は甚大とみられており、とりわけ急激な円高は輸出企業を中心に企業収益を圧迫し、足踏み状態から脱しつつある景気を懸念する声も出ている。
日本銀行の白川方明総裁は14日の会見で、「今回の地震は観測史上最大規模であり、その被害は地理的に広範囲に及んでいる」と指摘。「家計や企業マインドの悪化が意識される」との認識を示していた。
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