2011年1月1日土曜日

フィデリティが11年日本株読む、「金融など割安」「自動化の恩恵」

1月1日(ブルームバーグ):米運用会社のフィデリティ・インベストメント・マネジャーズのポートフォリオ・マネジャーで、「フィデリティ・日本・アジア成長株投信」を運用するデイル・ニコルス氏は、2011年相場に向け日本株の現状を「ほかのアジア市場と比べ、バリュエーションは間違いなく割安」と受け止めている。

  同社が昨年12月に公表した資料によると、ニコルス氏は、日本株への市場のセンチメントが弱いことは、「割安銘柄を物色する上では良いタイミング」とし、バリュエーションからは特に金融、不動産セクターに魅力を感じるとした。不動産株については、「多くは潤沢な安定したキャッシュフローがあるにもかかわらず、株価はこれを過小評価している」という。

  バリュエーションが割安に放置されている要因の1つとして、ニコルス氏は日本企業の配当政策を挙げた。「配当水準を引き上げる潜在能力を持つ企業は多く、こうした企業が配当重視政策に転じれば、日本株市場へのインパクトは計り知れない」と述べた。東証1部の配当利回りは12月末現在1.8%で、3-5%の欧州や2%前後の米国を下回る。

  一方、中国などアジアでは今後、人口増加や所得増によって中間層が拡大するため、力強い個人消費とインフラ投資需要が今後5年、10 年と持続すると予想。「日本企業もテクノロジー、機械、自動車部品の各セクターは中国向け輸出で恩恵を受ける」と指摘した。

フィデリティがHP上で開示する週次レポートによると、同氏が運用する「日本・アジア成長株投信」は12月17日時点の過去1年の投資リターンがプラス21%と、運用成績の指標であるベンチマークのMSCI ACパシフィック・インデックスの7.8%を大きく上回る。

  11月末時点のポートフォリオでは日本株が31%を占め、組み入れ上位銘柄は、ノンバンク大手オリックス、情報通信のソフトバンク、不動産投資信託(REIT)のケネディクス不動産投資法人、そして保険大手のMS&ADインシュアランスグループホールディングス。

工場での自動化投資、安全性がキーワード

  一方、「フィデリティ・日本小型株・ファンド」の運用を担当する檜垣慎司ポートフォリオ・マネジャーは、「日本経済は世界の景気サイクルと連動している側面が強いため、海外経済の安定が見込まれる11年は日本の景気にも明るさが広がる」との見方を示す。

  檜垣氏によれば、10年度もしくは11年度に史上最高益を更新すると見込まれる企業は、全上場企業の約6分の1に当たる600社余り。これは、08年のリーマン・ショック後の世界的な経済危機に対応した「合理化努力のたまもので、同時に魅力的な新製品の開発や新たな販売市場の開拓、M&Aによる海外展開など、積極的な施策によって現状を打破しようという経営戦略の成果」という。

  成長分野として同氏が注目するのが、工場での自動化投資だ。特に中国でこうした需要が急拡大している。「製品の品質維持、向上のための機械化投資も始まっており、これにこたえる機械設備や部品は日本企業が最も得意とする分野」でもある。

  「安全性もキーワードの1つ」と檜垣氏。中国やインドなど新興国ではモータリゼーションが加速するが、自動車関連分野で今後普及が加速するのはシートベルトやエアバッグといった安全製品。安全製品メーカーは、新興国での自動車生産の拡大以上に売り上げを伸ばすと予想している。

  少子高齢化で需要が伸びないと言われる国内分野でも、技術革新やライフスタイルの変化で成長しているものもあり、「インターネットはその代表例。これをどう活用し、それにより仕事の方法や生活がどう変わるかを考えると、まだまだ発展余地は大きい」と同氏は話していた。

  「日本小型株ファンド」の月報によると、10月末の組み入れ上位銘柄は、シートベルトなどの自動車安全部品を手がけるタカタ、医療関連情報を提供するエムスリー、住宅関連事業を展開する積水化学工業。11月末時点の過去1年間の投資リターンはプラス6.5%で、ベンチマークのラッセル/ノムラ・ミッド・スモールキャップ・インデックスの4.6%を上回っている。

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