2010年12月26日日曜日

【コモディティストラテジー2011年】金の高値は継続し、工業用メタルにも注目=スタンダードバンク

サーチナ 12月26日(日)12時22分配信

スタンダードバンク東京支店代表兼支店長の池水雄一氏に金(ゴールド)を中心とした貴金属市場の見通しを聞いた。池水氏は、2011年のコモディティ市場は「2010年の流れを引き継いで強い」と見通している。また、「金以外の銀、プラチナ、パラジウムといった工業用メタルには、金以上の投資妙味がある」とする。

――2011年は、金の価格の見通しは? 

 金は、2011年も引き続き強い。最大の要因は、世界金融緩和の流れ、米国FRBをはじめとした世界の政府、中央銀行が、景気の腰を折らないために資金を市場に大量供給している。そういったお金は、本来であれば、設備投資など景気拡大のために使われるべき資金なのだが、今の状況は、本来の目的には使われず、市場に回流し、それが、金をはじめとした貴金属やコモディティ市場に入ってきている。このジャブジャブの流動性と低金利が変わらない限りは、金は強いと思う。

 また、ヨーロッパの財政危機など、「通貨」に対する不安が台頭していることも、代替通貨として金に注目が集まる理由になっている。これまで金に対する投資を行ってこなかったファンドなどが、どんどん金を買っていることの背景には、過剰流動性と通貨不安という2つの理由がある。これは来年も基本的に変わらない。世界的な金融緩和から、出口戦略へと方向転換が図られ、金融引き締めに動くようになると、金は売られるだろうが、2011年には、そのようなことにはならないと思う。

 一方、需給関係から見て、金については中国の動きが注目されている。たとえば、2010年1月から10月までに、中国が金を210トン輸入していることが明らかになった。2009年の同時期の輸入量が45トンだったので、ほぼ5倍に拡大している。その上で、中国は、世界一の金の産出国であり、年間約350トンを産出している。つまり、輸入と合わせて年間に約600トンを国内で消費している計算だ。このインパクトは大きい。

 たとえば、中国の銀行では日本に学んで「(金の毎月積み立てのような)金貯蓄」を導入する検討が進められているが、中国の4大商業銀行のひとつである中国農業銀行は、保有する個人口座数が3億口座ある。仮に1口座に1グラムずつ金を売ると3億グラム、すなわち、300トンの新規需要が生まれる計算だ。数億口座という単位で個人口座を持っている中国の商業銀行には、巨大な金購入のポテンシャルがある。基本的に、中国人は金が好きな国民であるだけに、「金貯蓄」という金融商品が生まれた場合の金の現物需要は、相当大きな数値になりそうだ。

 一方で、中国の中央銀行である人民銀行でも、外貨準備高に占める金の割合が欧米と比較して低いのを是正しようと考えられている。外貨準備高に占める金の比率は、米国や欧州先進国が60-70%を占めるが、外貨準備高の多い、中国、日本は、金比率が2-3%と異常に低い。代わりに米ドルを大量に持っている。サブプライム問題以降、米ドルの一極集中はリスクだと意識されてきている。そこで、中国では金の保有を2%から引き上げる議論がされてきている。

 この外貨準備の多様化という議論は、中国に限らず、韓国、ロシア、インドなど新興国の課題になっており、現在の米ドル偏重から金の保有高を引き上げるという動きがある。中央銀行は、ずっと金の売り手であったものが、2009年ごろから買い手に転じてきている。2010年から中央銀行セクターは、初めて明確にセラーからバイヤーに変わった。このような金の現物保有を伴う実需の買い手が現れたことは需給バランスの上では、買い方優位に働く。ファンドによる買われすぎで、高値になると下がるのだが、そこで実需の買いが入ってくると底堅くなる。その繰り返しによって、価格が上昇する動きが一段と強くなろう。

――2011年の高値のメドは? 

 もはや、最高値水準を駆け上がっているので、いくらまでという価格予測ができない水準になっている。あえて言うなら、1600-1700ドルがあっても不思議ではないといえるが、その価格には根拠がない。

――金以外で妙味のある貴金属は? 

 たとえば、2010年のパフォーマンスを振り返るとわかりやすいが、1月4日からもっとも値上がりしたのは、パラジウムだった。12月6日までの値上がり率を見ると、パラジウムが92%上昇している。次いで銀が82%上昇。金は28%の上昇だったことと比較して、大きな上昇率になった。プラチナは2009年のうちに値上がりしていたため、2010年は18%上昇にとどまった。

 この金と、他の3つのメタルは特徴的に違っていて、シルバー、プラチナ、パラジウムは工業用メタルといわれていて、実需が80%程度ある。プラチナは、自動車の排ガス用の触媒として使われている。プラチナがなければ、実質的に自動車が販売できないという状況だ。このように常に需要が存在しているので、景気が戻ってくれば、おのずと需要が入ってくる。

 金のように宝飾品として使われているものは、価格が高くなると誰も買わなくなる。シルバーは太陽光電池などに使われている。その需要が戻り始めている。しかも、この3メタルともにETFが組成されてきていて、ETFを通じて資金が入ってきている。すなわち、金と同じように投資資金が入ってきている一方で、実需でも旺盛な需要が出始めている。投資と実需の両面から資金が入ってきている。もし、投資するとすれば、金よりも、3メタルの方に妙味があると思っている。

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