サーチナ 12月26日(日)12時46分配信
第一商品フューチャーズ24の村上孝一氏に、2011年のコモディティの見通しについて寄稿してもらった。村上氏は、「世界の経済・金融の先行きが不透明なことや、先進国を中心とした量的緩和策による財政赤字拡大やインフレ懸念などにより、ペーパー資産に対する信用が低下しつつある中、資産運用先として商品先物が今後もより一層、注目される」とみている。
――2011年のNY金の予想レンジ
1トロイオンス=1250ドル~1700ドル。高値時期は、10月~11月頃、安値時期は、7月~8月頃。
――NY金の強材料は?
先進国を中心とした金融緩和政策による過剰流動性の継続。米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和策の継続を背景とした、将来のドル安とインフレ懸念。米国の減税延長措置を背景とした米財政赤字拡大と米国債の格下げ懸念による、中・長期的なドルの信認低下。ユーロ圏の債務危機問題の長期化と周辺国への拡大懸念。新興国を中心とした中央銀行の金保有量増加見通し。中国やインドでの需要増加見通しなど。
――NY金の弱材料は?
米景気回復を示す経済統計発表によるドル高・米長期金利上昇、投資資金の株式市場などへの流出。 米FRBの追加量的緩和(QE3)の見送り。ユーロ圏の債務問題の後退。中国の金融引き締め策による国内景気の悪化と商品需要の減退懸念。米国での商品市場の持ち高制限導入など。
――2011年のコモディティ市場における注目の先物は?
金に注目している。
2011年の金相場は、現在の中・長期的な強基調を継続するとみており、最大の注目材料は米FRBの金融政策。大型の所得税減税の2年間延長を柱とする包括減税法が成立したことで、経済や雇用の回復が期待されている。しかし、米FRBが重視している雇用情勢は失業率が10%近くの高水準にあるうえ、長期失業者の高止まりなどの本格的な改善を阻む構造的な要因がある。さらに、12月のFOMC声明では「雇用者は依然雇用増に消極的」と雇用情勢の厳しさを指摘している。現在の量的緩和第2弾(QE2)による米国債購入は2011年6月で終了するが、厳しい雇用情勢とインフレ指標に変化がみられず、FRBがQE3実施の観測が強まった場合や、7月以降にQE3に踏み切った場合、10月~11月頃に1700ドルを付ける可能性はある。
米国の量的緩和や財政赤字拡大に加え、長期化の様相を呈しているユーロ圏の債務問題により、安全資産としての金の魅力が高まり、投資資金の流入が期待される。また、こうした要因から通貨に対する信用が低下することになれば、中国やインドなどの新興国の中央銀行が外貨準備高に占める金の比率を高めるため、金購入に踏み切る可能性もある。中国では経済成長に伴い富裕層を中心に金購入量が増加しているうえ、政府による金市場自由化策によりさらなる需要増加が期待されている。
弱材料として挙げた4つの要因、特に米国の追加金融緩和が見送りとなった場合、2011年第3四半期にも1250ドルまで下落する可能性はある。しかし、強材料として挙げたように、通貨に対する不安感により、中・長期的な強基調は継続するとみている。
また、白金系貴金属に注目している。
米国の量的緩和策やユーロ圏の債務危機を背景に、先物市場や上場投資信託(ETF)への投資資金流入が継続するとみている。需給面では新興国を中心した自動車販売台数の力強い成長を背景とした自動車触媒需要の増加が期待される。特に、パラジウムはロシアの国家在庫が枯渇するとの観測が現実味を帯びるようだと、1000ドル台に乗せる可能性がある。
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