[東京 15日 ロイター] ギリシャ国債が再びジャンク級に格下げされたことで、市場ではユーロ圏から一段の資本流出が起こる可能性を指摘する声が上がっている。
今回の格下げで、世界の投資家が債券運用の基準とする主要なグローバル指数からギリシャ国債が除外される見通しとなったためだ。資本流出はすでに進行しており今後あらためて加速することはないとの見通しもあるが、実態の不透明さが市場の不安心理を助長している。
4月のスタンダード&プアーズ(S&P)に続き、ムーディーズ・インベスターズ・サービスが14日、ギリシャ国債の格付けを投機的(ジャンク)等級となる「Ba1」へ引き下げたことを受けて、バークレイズ・キャピタルは同日、同社が算出する「グローバル総合インデックス」など世界の金融・債券市場を対象とする複数の指数からギリシャ国債を除外する可能性があると顧客へ通知した。
シティグループも同様に、世界の国債市場を対象とする指数「世界国債インデックス(WGBI)」からギリシャを削除する方針を決めた。両社ともに指数の調整は月末の状況を勘案して実施する。
バークレイズやシティが算出するグローバルインデックスは、世界の機関投資家やファンドなど多くのグローバル投資家が、運用の基準とする「ベンチマーク」として利用。指数とファンドをほぼ同じ資産構成に作り上げて、同等のパフォーマンスを狙う「パッシブ運用」を行う年金基金など日本の投資家も多い。そのため、指数の構成からギリシャ国債が除外されると、指数を利用する投資家が追随していっせいにギリシャ国債から手を引き、資金の一部は多くの問題を抱えるユーロ圏からも流出しかねないとの見方が、市場では浮上している。
複数の大手格付け会社がギリシャをジャンク等級へ格下げすれば、グローバルインデックスから除外される可能性があるとの話は、S&Pが格下げを行った4月頃から市場に出回り、多くの関係者が、指数を利用するファンドの運用総額などから、流出する可能性がある資産規模を割りだそうと試みた。一説には数兆円規模との試算もあるが、世界に広がる巨額マネーの実態は極めて不明確。「あるファンドは先を見越して早々と外したが、急速な価格下落に追いつけず、まだ投げ切れていない向きもある。パッシブ運用者には主要指数とのかい離を嫌い、あえて保有し続けている参加者もいる」(大手銀の顧客取引担当)と、対応もばらばらだ。
実態の不確実さは、市場の疑心暗鬼につながりかねない。多くの参加者は、前日海外の取引でユーロ安が限られた点に着目して「ユーロの悪材料は相場にだいぶ織り込まれ、売りは峠を越えたようだ」(邦銀関係者)とするが、多額の資金を運用するグローバル投資家の動きが市場に与える影響は小さくない。「(資本移動を伴う)実弾売りがどれだけ残っているかがポイント。足元はユーロの切り返しが目立ってきたが、とても買いスタンスで攻める状況ではない」(大手銀のチーフ外為トレーダー)との声が上がっている。
実際、日本の年金などから外債運用を請け負っている国内のある大手運用会社では、グローバルインデックスなどのベンチマークを上回る収益を狙う「アクティブ運用」では、今年3月までにギリシャ国債を売却。しかし、別の大手外資系運用会社のパッシブ運用では「ギリシャ国債はまだ売却していない。(指数から外れることが明確になったため)今月中に売ることになる」(運用担当者)としている。インデックスの調整は月末に行われるが、保有国債の売却は「先駆けて売った方がリターン向上に寄与すると判断すれば、指数のリバランスを待たずに売る」(同)方針だ。
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