3月3日(ブルームバーグ):地方政府の隠れた借り入れにより中国の債務残高が来年、対国内総生産(GDP)比で96%に達する可能性があり、同国で金融危機が起きるリスクが増大する。米ノースウエスタン大学のビクター・シー教授がこうした見方を示した。
米イリノイ州のノースウエスタン大学のシー教授(政治経済学)は数カ月かけて、中国の約8000の地方政府機関による借り入れ状況を調査。中国に関する著作のある同教授は1日の電話インタビューで、「最悪のケースは、2012年ごろの非常に大規模な金融危機だ」と指摘。景気「減速は少なくとも2年間、あるいはそれ以上続くだろう」と述べた。
シー教授の懸念の主因は急増する地方政府機関による借り入れで、これは中国の対GDP債務比率についての公式統計に含まれていない。米ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は2月23日、中国の債務で膨らんだバブルが今後10年以内に域内でリセッション(景気後退)を引き起こすだろうとの予想を明らかにした。ヘッジファンド、キニコス・アソシエーツの創業者ジム・チャノス氏も、過剰な不動産投資の後、同国経済が落ち込む恐れがあると警告している。
シー教授の試算によると、中国の債務残高は2011年に39兆8380億元(約517兆円)に達する見通し。一方、国際通貨基金(IMF)は中国の今年の対GDP債務比率を22%と予想している。この数字には地方政府の負債は含まれていない。IMFはスペインと米国、ギリシャ、日本の同比率はそれぞれ、69.6%、94%、115%、227%とみている。
不良債権化の波
中国の2009年の新規融資は過去最高の9兆5900億元に達した。シー教授の懸念の1つは、地方政府が設立した投資会社への融資で直接借り入れへの規制を迂回し、そうした会社による借り入れが最大3兆元規模の不良債権化につながることだ。
事情に詳しい関係者が1月に語ったところによると、中国の銀行規制当局は市中銀行に対し、地方政府の資金団体への融資の返済を確かなものとするため6月末までに融資内容を見直すことを命じている。シー教授の推計では、地方政府機関の09年末の債務残高は11兆4290億元となっている。
シー教授は、地方政府の借り入れ引き締めはプロジェクト資金を断ち、不良債権の「巨大な波」を誘発する恐れがある一方、融資抑制を行わなければ2012年までに15%超のインフレを招く公算があると指摘。いずれの場合も銀行への取り付けと金融システムへの信頼喪失による危機を引き起こす可能性があると述べた。
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