7月17日(ブルームバーグ):来日中のモンゴルのサンジャー・バヤル首相は、国内鉱物資源開発のため今後5年間で、海外から250億ドル(2兆3400億円)の投資が必要との見解を明らかにした。朝青龍、白鵬2人の横綱ら幕内力士10人を輩出する相撲大国が国内に眠る世界最大規模の天然資源の開発支援を日本に求めた。
バヤル首相は16日、麻生太郎首相との会談に先立ち、ブルームバーグ・ニュースの単独インタビューに応じ、「年間で1件以上の大規模な開発を行う。そのために毎年50億ドルの投資が必要」と述べた。これは、2008年のモンゴルの国内総生産(GDP)約30億ドルを上回る規模。
バヤル首相と麻生首相は16日夜、原子力分野に関する協力文書に調印した。ウラン鉱山開発や原子力分野などの人材育成などで協力する。日本企業が参入しやすいようにモンゴルの鉱業法の運用などについても今後協議していく。
日本からモンゴルへの投資案件は少ないが、バヤル首相は、「日本のような環境に配慮する技術を持つ国の投資が重要だ」と語り、日本からの投資に期待感を表明した。
外務省によると、日本からモンゴルへ援助は1991年以降、年間50億円の無償資金を供与しているほか、2007年度には新ウランバートル国際空港建設で288億円の円借款を供与した。今年6月30日には、国際協力機構(JICA)が世界的な金融危機で財政難に陥った途上国の貧困層対策を支援する緊急円借款として、約29億円を低利融資した。
銅や金など鉱物資源が総輸出額(08年25億ドル)の7割以上を占めるモンゴルは財政状況が厳しくなっている。07年の経済成長率は10.2%、08年は8.9%だった。しかし、昨年9月のリーマンショック後、鉱物資源価格が急落したことから09年は2.7%まで落ち込む見通し。財政収支も悪化し、国際通貨基金(IMF)は3月、総額で2億2400万ドル相当の緊急融資を決めた。
世界最大級の金・銅資源
世界3位の鉱山会社、英・オーストラリア系リオ・ティントが未開発の金・銅鉱床としては世界最大級と評価しているオユトルゴイ鉱山では、カナダのアイバンホーマインズ社との間で投資契約締結を目指し協議中。アイバンホーマインズ社によると、埋蔵量は金が4520万オンス、銅が789億ポンド。
バヤル首相は金・銅に加え、将来はウランも主要な輸出産品に加える方針で、「ウラン開発では、20億-30億ドル程度の投資が必要」と述べた。07年現在、モンゴルのウラン埋蔵量は6万2000トンと世界の1%程度にとどまるが、国際原子力機関(IAEA)の資料によると、未探査地域には世界最大のオーストラリアの124万3000トンを上回る139万トンが埋蔵されている可能性がある。
ウラン開発
独立行政法人、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、モンゴルのウラン開発は1990年代後半に旧ソ連への出荷が停止して以来、止まっている。現在は地球温暖化対策としての原子力発電再評価から、燃料としてのウランへの関心が高まり、ロシア、フランス、中国が触手を伸ばしている。
ウランなど核燃料のコンサルティングを手がける米トレードテック駐日代表、田上雄司氏は「日本にとっては調達先の多元化という点で意義があるとは思う」としながらも「ウラン鉱石から燃料へ加工する技術をモンゴルが有しているかどうか不明だ。輸出するまではどのくらいの期間がかかるか全く予想できない」と述べた。
0 件のコメント:
コメントを投稿