2009年5月30日土曜日

電通の「大赤字」を隠す旭日大綬章

月刊FACTA5月29日(金) 11時 3分配信 / 経済 - 経済総合

「広告と電通を一流の存在として世間に認めてもらう」ことに執念を燃やしてきた電通の成田豊最高顧問が、春の叙勲で財界人の勲章としては最高位となる旭日大綬章を受章した。

4月13日には与謝野馨財務・金融・経済財政相肝いりの「安心社会実現会議」の初会合が開かれ、前総務相、前検事総長や前日銀副総裁ら政官財界のそうそうたるメンバーが顔をそろえるなかで、成田が座長に指名された。与謝野は東大野球部の後輩。その縁で選ばれたと見られるが、与謝野が求める「超然たる立場からの自由な議論」とは裏腹に、電通の暗部を覆い隠すこの栄誉は笑止の極みとしか映らない。

本誌が昨年7月号の「電通中国『アンタッチャブル』」で追及した電通の中国子会社、東方日海の元営業総監(本部長)兼深セン支店総経理、王越が不正経理容疑で中国の公安(警察)に逮捕されてから1年以上経ったこの3月、ついに王越に懲役2年の実刑判決が下ったという。

4月に東方日海の董事長(会長)となった電通出向の花畑賢治・前総経理の告発があったとはいえ、電通中国の子会社が「不正の魔窟」となった理由は、社長時代の成田がタニマチをつとめた中国人女流書家、婁正綱の秘書兼マネジャーだった黄楓を重用、その勝手を許したからだ。王越はもともと婁のカメラマンであり、東方日海や上海東派の設立時、出資を電通と折半した黄のツテで入社した。

その黄楓関連の出費についても、すでに07~08年に東京国税局が「重大な疑義が含まれる」と判断、電通に調査(対象期間は上限の7年)に入った。当時の担当者は財経本部経理局税務企画部の「緒川」だが、「極秘」と銘打たれた電通内部文書によると──

(1)過去の顧問料等の手当に対する成果物が存在せず、社幹部のヒアリングを経てもその存在の実態が明らかとはなっていない。

(2)北京事務所および上海東派間で同一の証憑コピー貼付(主に出張関連費用)が多く確認され、当該事務所費用が根拠の無い出費と判断された模様。

結局、「上記の追徴課税対象額の合計は約4億円。重加算税の適用は免れたため、追徴金合計は対象額の約50%の2億円規模」だったようだ。

日中当局が確認したこれら不正事実を、電通は一切公表していない。成田の責任に直結するからである。

もうひとつ、成田のイチジクの葉は、09年3月期決算で計上された447億円(単体ベース)の有価証券評価損だろう。連結では511億円の特別損失を計上、最終損失は204億円と、創業期の1901、02年以来の赤字を記録した。評価損の大半を占める377億円は、電通が02年に鳴り物入りで資本参加したフランスの広告大手ピュブリシスの株式とORA(株式で償還される債券)によるものなのだ。

当時の電通は、先に21%の株式を保有していた世界7位の米広告会社Bcom3が、世界6位の仏ピュブリシスと合併、世界4位の新ピュブリシス・グループに生まれ変わるため、新会社の株15%を保有しようと5億ドルを追加出資した。Bcom3が破綻寸前で、手を差し伸べたピュブリシスに飛びついたのが、当時の成田社長、大島文雄副社長、高橋治之取締役(2008年6月号、FIFA疑惑の主役)である。案の定、ピュブリシス株は以来7年、取得価格の一株39ユーロを超えることが一度もなく、評価損計上を余儀なくされた。107年ぶりの赤字の元凶となったのに、張本人の成田は知らん顔である。

国内でも新聞やテレビなど「マス4媒体」の広告取扱高が9%も減少して1兆円を割った。新分野のネット広告も傘下のオプトが110億円の評価損と八方ふさがり。それでも俣木盾夫会長、高嶋達佳社長は、続投にあたって「過去のことは忘れて」と成田“天皇”の擁護に余念がない。(敬称略)

(月刊『FACTA』2009年6月号)

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