高い評価を受けた著書「This Time is Different(今回は違う)」を共同執筆した著名なハーバード大学経済学教授ケネス・ロゴフ氏はこのほど独週刊誌シュピーゲルとのインタビューで、非常に気の滅入るような見解を表明した。
この中で同氏は、ユーロ圏の崩壊を防ぐ唯一の方法は「中核的なメンバー」、つまり北部諸国が「ユーロ圏を純粋な政治同盟に変えることだ」と述べた。
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質問者がこの提案に信じられないとの反応を示すと、同氏はその見解が厳しいものと受け止められることを承知しているようで、「恐ろしいのは政治同盟の準備を本気で進めている国はほとんどないということだ」と述べた。同氏は、欧州諸国の手にほとんど何も選択肢が残らないほどに危機が悪化することを期待していることを示唆した。
同氏の分析は、最近まとまった対ギリシャ救済策に金融市場が非常に懐疑的に反応した理由の一つを提供している。多くの投資家は、ギリシャの債務返済を疑問視し、あまり間を置かずに欧州の危機が再燃するとの不安を抱いている。
ロゴフ氏の極端な見解は広範な現実を反映したものだ。つまり、ユーロ問題は徐々に解決に向かうという期待が広がったあと、ユーロは結局絶望的かもしれないとの見方が再び広まっているのだ。
同氏はインタビューで、ユーロ圏にギリシャばかりでなくほとんどの南欧諸国も入っていることが大きな誤りだと述べた。ギリシャとポルトガルの他に同氏は除外すべき具体的な国名を挙げなかったが、その後、ドイツと中国の両国と競争できない国々について話している際に、スペインとイタリアを含むグループを口にした。
極端な同氏の提案の中で質問者を驚かせたのは、ギリシャとポルトガル、それにおそらくは他の南欧諸国にもユーロ圏からの「長期休暇」を取らせ、高いレベルへの社会的、政治的、経済的発展を遂げるまで、一時的にそれぞれの旧通貨(ギリシャはドラクマ)を使わせるというものだった。いつ、どのようにこれをするのか。読者はギリシャ人がドイツ語を習い、レーダーホーゼン(南部ドイツの肩ひも付き革製半ズボン)をはいているところを想像してしまうだろう。
南欧諸国は中国やインドといった国と競争するために、一部産業での賃金カットが必要で、同時に、ドイツなどと競争できるように高度な産業を創出し磨きをかける必要がある、と同氏は言う。
そして欧州全体としては、真の欧州合衆国を創り出すための一歩として税金、支出、銀行規制の権限を中央の機関に与える必要があるという。
シュピーゲルの質問者は、こんなことが起こり得るという考え方に驚かされ、現実の政治的権力を連合した欧州に移すという考え方について、「あなたの楽観論に敬意は払うが、欧州の人たちはこうした考え方には同調しない公算が大きい」と述べた。ロゴフ氏は、それ以外の道はユーロの崩壊だとする。これが、ギリシャ救済策への関心が薄い理由の一つである可能性がある。
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