2月16日(ブルームバーグ):売買高の大幅な減少に歯止めがかからない東京穀物商品取引所に対して、解散して取引を他の取引所に移管するよう望む声が株主から上がっている。起死回生を狙って72年ぶりに上場したコメ先物の取引が低迷しており、業績回復が見込めないためだ。
東穀取の大株主で、2011年9月末現在2.3%の株式を保有する商品取引会社、豊商事の多々良實夫会長は「コメ先物取引の上場で業績回復を期待していたが、市場の取引高が全くできなかった」と語り、株主の資産を保護するために一刻も早く解散すべきだと述べた。
多々良氏によると、株主の間では東穀取で取引されている農産物商品は、取引システムを統合している東京工業品取引所への移管を望む意見が少なくないという。ただコメ先物に関しては、政府の意向などで小豆とともに関西商品取引所への移管を求める可能性が高いという。
東穀取の渡辺好明社長は10日、移管問題について、ブルームバーグ・ニュースの質問に対し、コメントを拒否した。同取の広報担当の浅見優太氏によれば、21日に取締役会を開き、移管を含めた今後の在り方について議論する。取締役会は社外取締役7人を含む13人で構成されている。
取引の低迷続く
東穀取の前期(11年3月期)業績は、保有ビルの売却に伴う特別利益の計上で純損益が3年ぶりに黒字に転じた。今期は、上期(11年4月-9月)に1カ月当たり2800万円超の損失が出ており、下期(11年10月-12年3月)も昨年8月に上場したコメ先物取引が低迷、業績への貢献は期待外れとなっている。
コメ先物は、1日平均取引成立量が500枚に満たず、渡辺好明社長がスタート段階で必要だとした枚数の1割にも達していない。トウモロコシや一般大豆、小豆など8商品の合計も4733枚と、取引量のピーク時の4%に満たない状態だ。
東穀取の2.7%の株式を保有する日本ユニコムを子会社に持つユニコムグループホールディングスの二家英彰社長は、「農産物取引がどこの取引所で行われようとかまわない」と話す。
「余裕はない」
一方で、東穀取が農産物市場の移管を、商品先物取引の東京工業品取引所や関西商品取引所に申し出たとしても、受け入れるかどうかは不透明だ。
東穀取は10年12月当時、取引所会員で構成する日本商品先物振興協会の提言を受けて東工取へ農産物市場の移管を要請し、協議に入った。しかし、コメ先物取引の上場認可を受けたことを理由に、翌年7月に一方的に要請撤回を通知した経緯がある。
東工取の江崎格社長は今月7日の会見で、あらためて東穀取から農産物市場移管の申し出があった場合について、商品取引市場の「公益的な性格を考えるとビジネスだけで判断していいか分からない」としつつも、「全然ビジネスにならないものをやるほどの余裕はない」と述べた。
国内商品先物市場の低迷は東穀取に限らず深刻だ。日本商品清算機構(JCCH)によると、国内商品取引所の総売買高は03年に史上最高となる1億5400万枚超を記録した後、7年連続で減少、昨年は若干戻したもののピーク時の22%にとどまっている。
05年に7つあった商品取引所の数は、東工取、東穀取、関西商取の3カ所に減少。東工取は国内売買高の9割を占めているものの、減少傾向には歯止めがかかっていない。かつては世界2位の商品取引所だったが、中国の上海先物取引所や大連商品取引所などに追い抜かれ、10年のランキングは11位に落ち込んでいる。
一方、関西商取は11年3月期に純利益218万円を計上したが、2900万円ある収入の5割を占める不動産事業で黒字を維持した。12年3月期決算は、東穀取と同じ昨年8月に上場したコメ先物の広告宣伝費などがかさみ、鈴木勝夫総務部長は「3000万円以上の赤字を予想している」と言う。
農産物市場を他の商品取引所に移管しても取引が活性化される保証はなく、ユニコムグループHDの二家社長は「心配の種は尽きない」と言う。
「総合取引所」構想
一方で政府には、株式や金融先物、商品などを一括して取引できる「総合取引所」を設立する構想がある。
住友商事の高井裕之・エネルギー本部長は10日、経済産業省が開催した産業構造審議会の分科会で、国内商品先物市場について、「このままでは数年のうちに消滅する危機にひんしていると言っても過言ではない」と指摘。株式や債券、為替など金融先物市場の流動性を商品市場に取り込む方策を取るべきだとし、「総合取引所構想は日本の商品先物取引所に残された唯一の生き残りのための道だ」とみている。
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