2012年2月27日月曜日

年金専門誌が09年に「日本版マドフ」と警告 AIJ運用資産消失問題

ウォール・ストリート・ジャーナル 2月27日(月)10時2分配信

 (訂正:見出しの「格付け機関」を「年金専門誌」)、本文第1段落の「格付け会社の格付投資情報センター(R&I)」を「格付投資情報センター(R&I)」にそれぞれ訂正します。以下は修正を反映した記事です)

 【東京】運用していた企業年金資産の大半を消失させた投資顧問会社、AIJ投資顧問について、 格付投資情報センター(R&I)が2009年に発行したニュースレターの中で米国の巨額金融詐欺事件になぞらえて、日本のマドフ事件になりかねないと警告していたことがわかった。

 日本の金融当局は24日、AIJが運用する年金資産1830億円の大半が消失しているとして、同社に業務停止命令を出した。

 R&Iは2009年の顧客向けニュースレターの中で、市場が落ち込んでいるにもかかわらず、AIJの運用利回りは不自然に安定していると警告した。ニュースレター「年金情報」編集長の永森秀和氏は、ニュースレターでは名指しこそしなかったものの、ほとんどの年金専門家にとってはAIJだとわかるような書き方だったと述べた。

 R&Iがニュースレターで警告する1年前に、R&Iが実施した年金基金の顧客満足度調査ではAIJが1位となった。投資業界に詳しい複数の銀行関係者によると、AIJが常に高収益を上げていることは大手の資産運用会社の間で知られていたという。

 「年金情報」の永森氏はウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、R&IがAIJについて懸念を抱いたのは、同社の運用利回りが市況がどのような状況でも10年にわたって平均リターンを上回っていると年金基金の顧客から聞いてからだったと述べた。永森氏は日本の金融当局者ともこの懸念について議論したと述べた。

 永森氏によると、複数の年金基金の顧客がR&Iに示した報告書では、AIJは運用する3つのファンドが2009年から2011にかけておよそ5%から10%の年間利回りを達成したと主張していたという。永森氏は、日本の投資運用会社のうち3年連続でプラスの収益を上げていたところはほとんどなかったと述べた。

 投資運用業界内部ではAIJについて疑問の声が上がっており、怪しいところがあるとの見方が出ていたことから、警告を発する必要があると感じたと永森氏は話している。

 あまり知られていなかった投資顧問会社で今回、多額の運用資産消失問題が起きたことは、日本の金融監督状況の実態を浮き彫りにしている。

 金融庁は24日、AIJ投資顧問の年金運用資産1830億円の「大半」が消失した件について調査中であるとした。消失したと思われる正確な金額やAIJの顧客数、さらに不正行為の疑いがあるのかなどは発表されておらず、詳細は明らかにされていない。

 しかし、AIJが不正行為をしていたとすれば、少なくとも日本の監督機関がそれを察知していた可能性はかなり低いと言える。

 金融庁によれば、AIJのような資産運用会社は1年に1回、規制当局に業務報告を提出することが義務付けられている。規制当局が問題の可能性があると判断した場合は聞き取り調査を行うことができる。一方、自発的に自社の業務を監査する資産運用会社もある(AIJではない)。

 疑わしい業務活動を行っている企業があったとしても、証券取引等監視委員会の年次監査に引っかかる企業はかなり運が悪いと言わねばなるまい。2011年3月期の1年間で監査を受けた投資運用会社は15社だ。つまり、国内投資運用会社合計299社のうち、監査を受けたのは20社に1社という計算になる。

 金融庁はAIJと同様の資産運用業務を行う投資顧問会社263社を一斉調査することを発表した。

 日本経済新聞によると、AIJは長年にわたって、累積利回りの実績は240%などと顧客に虚偽の情報を提供してきた疑いがある。

 今回の件は日本の金融業界を監督する規制当局にとってかなり憂鬱な話だ。AIJの年金資金消失が発覚するほんの数カ月前には、オリンパスが13年間にわたって約1200億円以上の損失を隠してきたことを認めたばかりだ。

0 件のコメント: