11月30日(ブルームバーグ):株式市場は下落している。欧州は混迷を深めている。現金が生み出すリターン(投資収益)はわずかだ。商品、特に金は一瞬のうちに乱高下する。こんな困難な状況の中、ブルームバーグ・マーケッツ誌1月号で、世界の億万長者10人に対して14の質問を投げ掛けた。世界経済への見方や、どこに好機があるとみるか、最良のアドバイスをくれるのは誰か、などについてだ。
彼らの意見はほぼ一致していることが分かった。従来からある指標は投資決定にほとんど影響を及ぼしていないと、億万長者らは言う。例えば、美容業界の重鎮、ジョン・ポール・デジョリア氏は、経済の健全性を測る上で、美容院に通う頻度がより的確なバロメーターになると指摘する。回答者10人の意見は、ユーロ相場はさらに下落し、ポートフォリオに米ドルを組み込んでおくことが賢明だという点でほぼ一致している。
資産の大部分を債券と現金で保有している弁護士のジョー・ジャメール氏は一般的な信条を雄弁に語った。ヘッジファンドは危険だ、と。
S&P500種株価指数は2012年末までに1200(ジャメール氏)から1400(ブラジルの住宅建設会社MRVエンジェニャリア・エ・パルチシパソンエスのルーベンス・メニン・テイシェイラ・ソウザ社長)まで上昇する可能性があるとの見方もあった。同指数は29日時点で1195.19。金は買いの好機であると同時に、不可解であり、バブルだとの指摘もある。
美術品コレクターのエリ・ブロード氏は、ピカソの名作を購入するのが最も安全性の高い投資だと主張。薬品業界の有力者、パトリック・スンシャン氏は米プロバスケットボールチームのロサンゼルス・レーカーズのシーズンチケットを挙げた。
ロシア富豪、ミハイル・プロホロフ氏のアドバイスには誰もかなわない。現金が100万ドル(約7800万円)あればどうするかとの質問に、楽しいことに使うと答えた。
プロホロフ氏の回答
主要資産:露ポリウス・ゴールド・インターナショナルの株式の36%。居住地:モスクワ業種:コモディティー
鉱山業界の大御所であるプロホロフ氏は、ニッケル生産最大手、露ノリリスク ・ニッケルの株式25%を、同じくロシア富豪のオレグ・デリパスカ氏に売却。2008年のこの取引により50億ドルを超える現金とアルミニウムメーカー、露UCルサールの株式の17%を手にした。現時点の主要資産には、年間売上高約20億ドルのポリウス・ゴールドや米プロバスケットボールチーム、ニュージャージー・ネッツの株式の80%が含まれる。
-あなたの投資に最も影響を及ぼす経済指標を3つ挙げてください。「世界の製造業についてはドイツのIfo経済研究所の企業景況感指数が最適だ。米国の消費者信頼感については米民間調査機関コンファレンス・ボードのデータ、中国の経済成長と輸出については製造業購買担当者指数(PMI)が良い。新興国ではインフレや財政赤字、生産の伸びに関する指数と小売売上高が鍵になる」
-これまでに受けた最高の投資アドバイスは?「背筋を伸ばし、気をもむな。ロシアの格言だ」
-これまでで最高と最悪の投資を教えてください。「最高だったのはノリリスク・ニッケルへの投資だ。われわれのチームが投資した当時、同社は社員に半年間給与を支払っておらず、崩壊寸前だった。それをニッケルなどの金属の世界最大の生産会社に生まれ変わらせた。同社には約30万人の生活がかかっていたから、小さな政府を運営しているようだった。最悪の投資はまだ経験していないことを願う」
-向こう2年間に最も下落すると予想されるのはどの通貨でしょうか。また、ポートフォリオに組み込みたい通貨は?「ユーロだろう。ユーロ圏は輸出を増やして成長鈍化から抜け出すチャンスになるかもしれない。私は現金を米ドルで保有し、ポリウス・ゴールドの株式を担保として保有している。長期的には、高金利あるいは高成長のブラジルや中国、ロシアなど新興国の通貨をポートフォリオに組み入れておきたいと思っている」
-最も安全な投資先は?金地金や米国債、ピカソの名作でしょうか?「私の資産の多くはポリウス・ゴールドに投資しているから、もちろん金地金だ」
-ポートフォリオ全体を信頼して任せられる資産運用者はいますか?「いる。名前はミハイル。私は全ての小切手に自分で署名をしている」
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