2011年6月8日水曜日

国債市場の「Xデー」、4年後から到来リスク高まる-SMBC日興

6月8日(ブルームバーグ):日本国債の利回りが急騰(価格は急落)する「Xデー」は、今から4年後に当たる2015年からの10年間に到来するリスクが高まる-。SMBC日興証券によると、国債利回りが大幅に上昇した場合、国内銀行が最も打撃を受ける恐れがある。

  末沢豪謙金融市場調査部長は7日の記者説明会で、日本は第2次オイルショック後の約30年間にわたって経常収支の黒字基調を維持し、積み上がった家計の金融資産が主に金融機関への預貯金を通じて官民の資金需要を賄ってきたと説明。昨年ごろから「世界的に財政プレミアムが長期金利に乗ってきた」中でも、日本は主要国でも突出して低い金利を保っていると指摘した。

  米欧の格付け会社が近い将来に日本国債の格付けを引き下げた場合でも「金利上昇を招く可能性は極めて小さい」と強調。しかし、少子高齢化と家計貯蓄率の低下に加え、東日本大震災による景気低迷の長期化や生産拠点の海外移転もあり、将来は大規模な経常黒字の維持は難しくなると分析した。

  「Xデー」は「日本の金利が急騰するタイミング」と発言。仮に経常収支の赤字が続いた場合には「限界的なファイナンスを海外に依存しなくてはならない。海外勢は多分、今の金利水準では日本国債を買ってくれない」ため、利回りが「米国やドイツの水準に近づいていく」と予測した。ただ、日本は世界最大の対外純資産と同2位の外貨準備を保有しているため、ギリシャなど財政危機の渦中にある国々との比較は妥当ではないとの見方を示した。

長期金利は足元1.1%半ば

  長期金利の指標とされる新発10年物国債利回りは足元で1.16%。過去10年間はおおむね1%台で推移。昨年の最高は4月に付けた1.405%。一方、米独の10年債は3.0%台、ギリシャは15%台後半だ。日本の経常黒字額は4月に前年同月比69.5%減の4056億円。震災後のサプライチェーン(供給網)の寸断や電力不足を背景に生産・輸出が滞り、貿易収支は赤字に転じた。

  末沢氏は、長期金利が1%上昇した場合に投資家が被る損失を試算。生命保険やゆうちょ銀行などは国債の大半を「満期保有目的」「責任準備金対応」という時価評価が不要な区分で保有しているが、トレーディング目的での保有額を近年急速に増やしている国内銀は金利が上昇すると「一番大きく投資行動が変わってきやすい」と語った。

  2015-25年の間にリスクが高まる「Xデー」を先送りするには、日本が海外から「常にフローベースで稼げる構造」が必要だと指摘。震災を踏まえ「効果的な復興戦略や実効性ある成長戦略を再構築」しなければならないと述べた。

         公的債務、主要国で最悪

  自民党は8日午後、国債価格が暴落する「Xデー」への対応策を協議する財務金融部会・X-dayプロジェクト(座長・林芳正元経済財政担当相)の報告書をまとめた。国債利回りが急上昇した場合、一部金融機関の経営不安につながる恐れがあると指摘。金利が1%上昇すると1年で1兆円、2年で2兆5000億円の利払い費増が発生すると試算した。

  日本の公的債務残高は国内総生産(GDP)の約1.9倍と主要国で最悪。財務省によると、国債・借入金・政府短期証券を合わせた国の債務残高は3月末に過去最大の924兆3596億円に達した。今年度の第一次補正予算を反映した国債発行計画では発行総額が171兆6000億円、うち市中消化額は144兆9000億円と、それぞれ過去最大。新規国債発行額も約44兆3000億円に及ぶ。

  米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は1月27日、日本の長期国債格付けを約8年9カ月ぶりに引き下げた。4月27日には格付け見通しを「ネガティブ」に変更。ムーディーズ・インベスターズ・サービスも2月22日、日本政府の格付けの見通しを「ネガティブ」に下げ、5月31日には引き下げ方向で見直すと表明した。

3カ月以内に格下げ

  フィッチ・レーティングスも5月27日、日本のソブリン債格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げた。末沢氏は、ムーディーズは日本国債の格付け引き下げで同業他社に後れをとっているため「3カ月以内」に格下げを実施すると予想した。

  もっとも、日本銀行の統計では、公的債務の国内消化余力の目安される家計の純金融資産は昨年末時点で1129兆47億円。国債の95%前後を国内勢が保有している。末沢氏は家計の金融資産には「時価会計基準も適用されないし、ホームカントリーバイアスも強い」と指摘した。

  末沢氏は政府の行政刷新会議が昨秋実施した事業仕分け第3弾で、国債や借入金の償還や利払いに充てる国債整理基金特別会計などの仕分け人を務めた。4月3日付の日経ヴェリタスが報じた「債券アナリスト・エコノミスト人気調査」では債券アナリスト部門で6位。

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