5月11日(ブルームバーグ):バーナンキ米連邦準備制度理事会FRB)議長は、破綻した場合に金融システムのリスクとなる恐れがある金融機関に対する規制案をFRBが今後数カ月以内に提案する計画であることを明らかにした。
バーナンキ議長は12日、上院銀行委員会での金融安定監視評議会(FSOC)の進ちょく状況に関する公聴会で証言。証言原稿によると、「意見を募るため、われわれは今年の夏、一連の規則案の公表を予定している」と述べた。規則は、金融規制改革法(ドッド・フランク法)の規定に従い、資本規制の「強化」やFRBによる毎年のストレステスト(健全性審査)などが対象になる。
同議長は、「さらなる詳細が必要だと考えている」とし、「国民により多くの情報を提供し、しっかりとした意見やコメントを得ることには賛成だ」と語った。パトリック・トゥーミー上院議員(共和党、ペンシルベニア州)の質問に答えた。
【転載】
ドッド=フランク法の要点と今後
ドッド=フランク法は、ルーズベルト大統領が1920年代のアメリカにあって金融的投機がもたらした世界金融不安、そして大恐慌の発生を根絶すべく成立させたGS法(グラス=スティーガル法)の現代的再来である。
GS法はその後、1970年代末頃まで、アメリカの金融システムを規定するものであったが、金融自由化を希望する声が高まるなか、そして新自由主義(ネオ・リベラリズム、ワシントン・コンセンサス、市場原理主義)の後押しを受け、また金融工学(効率的市場仮説など)からの後押しも受け、次第に骨抜きにされていった。その最終的象徴が、1999年のGLB(グラム・リーチ・ブライリー法)である。
こうしたなか、SBS(Shadow Banking System)が肥大化し、ついには証券化商品の異常な多層化のもと、ついにはリーマン・ショックからのメルトダウンに突入していく。
ドッド=フランク法案はSBSの根絶とそれを政府の監督下におくことで、健全な市場経済を復活させる法的枠組みを再構築しようとするものである。精神においてグラス=スティーガル法のそれを継承するも、この30年間の金融市場は複雑な発展を遂げてきており、当然ながらそれへの対処は20年代とは異なる。GS法の現代版であって、GS法の復活ではない。
ドッド=フランク法の要点を示そう。
(1)消費者金融保護局(Consumer Protection Agency) を、FRBのなかにおく。しかし、それは独立したものであり、それを明示するために、トップは大統領による任命である(これは上院案に従いつつ、下院案、大統領の見解を反映した妥協的なものになっている)。
この趣旨は、サブ・プライム・ブームのとき、金融機関がついには無審査で住宅ローンを組む(Ninja Loan [no income, job or assets]など)までに至り、その結果多くの人が無謀なローンを組み、購入後、デフォルト状態に陥った。こうした事態の再発を防止すべく、消費者が金融機関に騙されたり、不公正な契約をさせられたりすることを防止するために設置されるのが、この消費者金融保護局である。
(2)ヴォルカー・ルール
これは銀行が「自己勘定取引」(proprietary trading) を行うことを禁ずる条項である。預金を預かる銀行が、同時に投機的行為に走ることで、預金者の預金を危険にさらすことを禁ずるものである。
(3)リンカーン条項(この言葉は実際には使われていない)
ブランチ・リンカーン(上院農業委員会委員長)によるもの。OTCデリヴァティブ(Over the Counter.相対取引によるデリヴァティブ)を廃止し、公開の市場を創設することで取引を透明・公正なものにすることを目的とする条項。
この条項はオバマ大統領は反対していたが、ドッド=フランク法のなかに組み込まれた。
(4)システミック・リスクを防止するための委員会(9 member council)
財務長官をトップにすえた9人からなる委員会
(5)ニューヨーク連銀のトップは大統領による任命制に変更する。
これはウォール・ストリートの影響力を遮断する目的をもっている。
(6)巨大金融機関が破綻しそうな場合、そのスムーズな清算・解体を金融機関からの資金で遂行する。
TBTF(Too Big Too Fail)思想を禁止する。巨大銀行は、自分が巨大であるがゆえに、万一経営に失敗しても、国はかならず助けてくれる(もし助けなければ、アメリカ経済全体が危機にさらされるから)と考えがちである。そうするととんでもない危険な投機行為に走ることになる。典型的なモラル・ハザードである。こうした考えに挑み、破綻しそうな金融機関の清算処理に必要な資金を国民の税金ではなく、金融機関の自己負担で処理させようとするもの。
(当初は銀行税[大手銀行およびヘッジ・ファンドを対象に5年間に200億ドルの徴収]が考えられていたが、スコット・ブラウン議員を賛成に回すため、ドッドは最終局面にあって、この条項を棄却した。それに代わるものとして、TARPからの110億ドルおよびFDICルールの変更があげられている)。
[当初、FRBから4900の小銀行および850の州立銀行はFDIC [Federal Deposit and Insurance Corporation.連邦預金保険会社] に監督権限を移す案であったが、これは上院で(90;9で)否決された。
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