3月11日、東北地方を襲った大地震。株価は乱高下を繰り返し、為替レートは16年ぶりの円高をつけた。今後、マーケットはどう動いていくのか。若林栄四氏に大局的なマーケットの見通しについて伺った。
――震災直後の外国為替市場では、円が急激に買われ、1ドル=76円台をつけました。今後のドル円相場はどう動いていくと見ていますか?
若林
今回の急激な円高の背景としては、保険会社のリパトリエーションと言われています。日本の保険会社は海外の保険会社に再保険をかけているのですが、今回の大規模災害によって、一時的に多額の保険金が必要になるということで、海外の資産を売却するという見方が浮上しました。結果、外貨が売られ、円が買われたというわけです。
ただ、私が思うには、この手の需給による動きというものは、基本的には一時的なものであるということです。今回、急激な円高が進む前は、本来の米ドルの動きをしていたわけですから、徐々にその動きに戻っていくでしょう。つまり米ドル買いです。3月末で1ドル=82円50銭以上であれば、米ドルは崩れることなく、再び上昇トレンドへと向かっていくでしょう。
昨年11月1日に、1ドル=80円30銭というドル安値を付けた後、現在に至るまでドルは横ばいで推移していましたから、相場にかなりのエネルギーが蓄積されていると思われます。移動平均線を見ると、9日、25日、90日のいずれも1ドル=82円台に集中してきているので、次の大きな動きが生じる前兆であると見ています。
日柄的にも、2008年8月のドル高値である1ドル=110円67銭を付けてから31カ月目に相当するのが2011年3月です。あるいは、95年4月につけた1ドル=79円75銭という高値から見ても、2011年3月は160ヶ月目です。黄金分割では162カ月という重要な日柄があり、そこから2カ月足りないだけですから、恐らく、そこは大きな転換点になるでしょう。これを機にドルは上昇へと転じ、今年5月から6月にかけて、1ドル=89円台に向けてドルは上昇すると思います。
――ユーロはどう動くのでしょうか。
若林
以前から私は、ユーロについて非常に懐疑的な見方をしていましたが、ギリシャ問題に端を発したソブリンリスク問題の浮上によって、ユーロがいかに矛盾した通貨であるか、ということを確信しました。スペインの格下げ問題も浮上しており、当面、ユーロには売り圧力がかかってきます。
ユーロ/ドルの月足を見ると、2011年2月は1ユーロ=1.38ドルがせいぜいでした。これは、2008年7月につけたユーロ高値、1ユーロ=1.6040ドルからの31カ月目で、そこに向けてユーロは、1月10日につけた1ユーロ=1.2874ドルの安値から上昇傾向をたどっていましたが、1ユーロ=1.38ドルのところに強い抵抗線があるため、ここを抜くことができませんでした。
そうなると、次は2000年10月につけたユーロ安値、1ユーロ=0.8228ドルからの18度サポートに向かって下げていきますから、目先的には1ユーロ=1.24ドルくらいまでの下げをやってくると思います。そして、そこでユーロは下値を確認し、再び上昇へと向かうでしょう。メドは、2012年に向けて1ユーロ=1.65ドルから1.7ドルと見ています。
なぜかというと、ユーロにとって2012年2月は節目の日柄になるからです。1985年2月、まだユーロが誕生する前の話ですが、この時、独マルクが対ドルで最安値をつけています。1ドル=3.4770マルクですが、これをユーロに換算すると、1ユーロ=0.5633ドルになります。ここからの27年目、つまり黄金分割(※1)の重要な日柄である162カ月の2倍、324カ月が2012年2月なのです。
これはまた、ユーロが誕生した1999年1月から見て13年半、つまり162カ月目でもあります。非常に重要な日柄ですから、ここにかけて大きな動きが生じてくるでしょう。
――ユーロ高はその後も続くのでしょうか。
若林
いえ。ここがユーロの最後の高値だと見ています。つまり、これでユーロ高は終わり、その後はユーロ安に転じるでしょう。
それがどういう形となって現れてくるのかは、今の段階では何とも申し上げられないところではありますが、とにかく今のユーロ体制を震撼させるような、大きな動きがあると思います。長い目で見れば、ユーロ解体ということも視野に入ってくるのではないでしょうか。
また、目先のユーロ/円を見ると、月足では2007年7月に1ユーロ=168円95銭の高値を付けた後、調整をし、さらに2008年7月に1ユーロ=169円99銭という高値を付けることによって、ダブルトップを形成しています。日柄で言うと、前者の高値からの50カ月が2011年9月、さらに後者の37カ月(162週)がやはり2011年9月になります。ここが大きな変化のタイミングと見るのが妥当でしょう。
では、そこに向けてユーロはどう動くのか、ということですが、基本的にはユーロがドルに対して上昇するのと同じように、対円でも上昇していくでしょう。2000年10月に、1ユーロ=88円93銭という歴史的なユーロ安を付けましたが、そこから18度線を引くと、1ユーロ=120円を超えて、1ユーロ=122円~123円程度までユーロ高が進むと見ています。
――人気の高い豪ドルの行方は?
若林
5月に向けて豪ドルは下げ相場が続くと思いますが、ここできっちり下げれば、そこから上昇へと転じるでしょう。1豪ドル=80円を割り込む場面があったとしても、2011年9月に向けて上昇していきます。メドとしては、1豪ドル=84円~85円を見ています。
2011年5月というのは、1豪ドル=55円11銭という安値をつけた2008年10月から数えて31カ月目。さらに、1豪ドル=107円87銭という高値をつけた2007年10月から数えて43ヶ月目になります。ほぼ黄金分割の数字ということで、やはり2011年5月が日柄で見た節目になるでしょう。ここに向けて豪ドルは一時下落し、その後、同年9月にかけて上昇していきます。
――震災リスクなどで改めて金が注目を集めていますが、今後、金価格の動向はどうなるでしょうか。
若林
1999年8月につけた1トロイオンス=252ドルというのが、25年サイクルのボトムです。ここからペンタゴンの高さ、つまりひと相場の動きである1180ドルを加算すると、252ドル+1180ドルで、次のサイクルの高値が1432ドルであると考えられます。
実際の金価格は、すでにそれを上回って上昇しています。つまり、ひと相場の高値を抜いてきたことによって、もう一段の上昇も見込まれています。日柄的には厳しいのですが、1500ドルに向けての動きも考えられます。
ただ、いつまでも上昇するということはないでしょう。25年サイクルボトムで考えると、2011年6月に向けて、金価格は下げていくはずです。ベストシナリオとしては、1トロイオンス=1150ドルまでの下げを見込んでいます。そこまで下げれば、次は上昇トレンドです。この上昇が、非常に大きなものになる可能性が高く、恐らく2150ドルを目指した動きになるでしょう。
ファンダメンタルズからみても、たとえば前回、金が最高値を付けた80年の高値が875ドルですから、そこからインフレ率を加味して、現在の金価格を計算すると、2300ドル程度になります。場合によっては、その水準を抜いて、2600ドル程度の上げも想定されます。
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