サーチナ 12月26日(日)13時46分配信
日本ユニコム調査課部長の菊川弘之氏に、2011年のコモディティ市場の見通しについて寄稿してもらった。菊川氏は、「安全資産への逃避で金が買われる流れは、2011年も継続」とし、NY金の価格は1トロイオンス=1800ドルもあると見ている。
――2011年のNY金の予想レンジは?
1200ドル~1800ドル。高値時期は12月頃、安値時期は3月頃。
――強気に見通す材料について
リーマンショック以降、リスク商品が売られる過程の中で、損失補填的に金のロングが解消されて押し目を付ける場面は度々見られたが、振り返ってみると結果として良い押し目買いの機会を提供したことになっており、「安全資産への逃避」で買われる流れは、2011年も継続見通しだ。
――弱気に見通す材料について
QE2が終了する6月以降、米国の出口戦略が見えてくるようなら、過剰な資金供給が解消され、順調な景気回復と共に金利が徐々に上がってゆく「良い金利上昇」となり、ドル・米株上昇、金利がつかない金(GOLD)は売られるシナリオも考えられるが、現段階でその確率は低いと見る。ただし、5月に株式市場で見られたフラッシュ・クラッシュのような動きには注意を払いたい。
――2011年のコモディティ市場における注目の先物は?
FRBは11月のFOMC(連邦公開市場委員会)で、2011年6月までに6000億ドルの量的緩和を実施する事を決定した。過去にない規模の過剰流動性相場が継続しており、商品市場は需給よりも金融相場化した値動きが続く見通し。米国の財政赤字は巨大で、金融機関から政府へ危機が移行したに過ぎず、夏前後には不良債権問題の再燃も懸念される。ギリシャショックに端を発した欧州のソブリンリスクも、スペインや英国の危機に発展するリスクがあり、「通貨」の側面も持つ金が買われるだろう。
アジアの中央銀行を始めとして外貨準備における金の比率を高める動きも継続見通しで、世界最大の金の生産国となった中国は、公的部門・民間部門共に、売り手としてではなく、金の買い手としての存在感が増しそうであり、名目ベースで史上最高値を更新している金が、2008年の原油市場と同様、インフレ換算した実質ベースでも史上最高値をトライする流れを予想する。2010年大きく上昇したパラジウムを始めとするPGM系も、ロシアの在庫枯渇や中国を始めとする需要増加を材料にETFへの資金流入が期待される。市場規模が小さいが故に、値が飛ぶリスクには注意を払いたい。
また、ここ数年の大豊作にも関わらず在庫積み増しができていない穀物市場は、上値リスクが囃され易い。ラニーニャ現象の発生もあり、世界各地で異常気象が報告されている中、主産地での生育不良となるなら、「豊作でなければ旺盛な需要は賄えない構造」の穀物市場に投機資金は流入しやすく、それがインフレ懸念として金(GOLD)の買い材料にもなるであろう。
さらに、中東情勢も懸念材料だ。イランのアフマディネジャ大統領・イスラエルのネタニヤフ首相共に対外強硬派で、オバマ大統領による中東和平の動きは後退しており、中東情勢の有事は、金・原油市場の買い材料となるだろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿