2010年9月29日水曜日

介入後も円高観測、日本のデフォルト懸念は韓国より深刻-当社調査

9月28日(ブルームバーグ):政府・日本銀行の円売り介入にもかかわらず、円・ドル相場の先高観測はなお根強いことが、世界の投資家調査で明らかになった。また、日本のデフォルト(債務不履行)懸念は英国と並び、米国・ドイツ・フランスより悪く、11月に20カ国・地域(G20)首脳会議を開く韓国にも劣ると評価されている。菅直人首相の政策に対しては、悲観的な見方が多かった。

  ブルームバーグが世界の投資家やアナリストなど端末ユーザー1408人を対象に今月16、17日に実施した四半期調査では、政府による15日の円売り介入後も、年内に円・ドル相場が上昇するとの見方が41%に上った。「現状程度」が24%、下落するとの回答は28%だった。極端な上昇や下落の予想は、いずれも3-4%にとどまった。

  今回の「ブルームバーグ・グローバル調査」によると、公的債務残高が国内総生産(GDP)の約1.9倍と主要国で最悪の日本がデフォルトに陥る可能性が「あり得る」との回答が7%。米英と同水準で、独仏や韓国、ブラジルより高かった。「あり得ない」は89%。英国とともに5カ国で最低だった。

  PIIGSと称される欧州の重債務国ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインや、1990年代以降に債務危機を経験したアルゼンチン、ロシア、メキシコはいずれも「あり得る」が10%を超えた。欧州債務危機の発端となったギリシャは67%で最も高かった。

  日本の財務省によると、国債・借入金・政府短期証券を合わせた国の債務残高は10年6月末に過去最大の904兆772億円。3月末から21兆1538億円増えた。ただ、日本銀行の統計では、公的債務の国内消化余力の目安となる家計の純金融資産は6月末に前年同期比0.9%増の1077兆7923億円。国債等の約94%は国内で保有されている。

        菅内閣の政策、評価は最低

  投資環境に影響を及ぼす政策に関しては、菅首相に「楽観的」な投資家は27%。米英独仏と中国を含む6カ国中、サルコジ仏大統領と並んで最低だった。「悲観的」との回答は47%で、オバマ米大統領とサルコジ仏大統領に次いで高かった。

  「楽観的」が50%以上だったのはメルケル独首相と中国の胡錦濤国家主席、キャメロン英首相の3人。「悲観的」が最も多かったのはオバマ米大統領の64%、サルコジ仏大統領は56%だった。

  10カ国・地域のうち、来年にかけて有望な投資機会を聞いたところ、日本が「最も有望」(複数回答)との見方は7%で7位。債務危機に見舞われた欧州連合(EU)を下回った。「最悪の見通し」と評価された国・地域では、EUが35%で最多。日本が30%で続いた。

  「最も有望」が3割を超えたのはブラジル、中国、インドの3カ国。米国は24%、アフリカが11%で5位に入った。「最悪の見通し」では米英が日欧に次ぐ20%超、ドバイ・ショックから約10カ月の中東が14%で5位、不動産バブルが懸念される中国が13%で6位となった。

        人民元の上昇、小幅にとどまる

  オバマ米政権や米議会は、中国の為替政策に対する圧力を強めているものの、人民元相場が来年末までに対ドルで「数%」以下の上昇にとどまるとの予想が68%を占めた。「5%前後」との回答は13%。「5%超」を見込む向きは8%だった。

  今後3カ月間のユーロ・ドル相場については、投資家やアナリストの見方は割れている。ドル高予想が34%、小動きが32%、ドル安との回答は30%だった。

  円・ドル相場は15日に一時、1ドル=82円88銭と95年5月以来の高値を記録。同年4月の戦後最高値79円75銭に迫った。菅内閣は同日、2004年3月以来6年半ぶりに円売り介入を実施。円・ドル相場は1カ月ぶり安値をつけた。政府は今後も、輸出や株価に打撃を及ぼす円高加速は介入で抑止する構え。日銀の白川方明総裁も、円高が日本経済に及ぼす影響を注視し、適宜対応する姿勢を示している。

         二番底、失われた10年

  今回の調査で、投資家やアナリストの57%は米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策運営は「おおむね適切」と評価。87%が債券購入による金融緩和を見込んでいる。しかし、この追加緩和が米経済を押し上げるには至らないとの見方は65%を占める。

  米国経済が今後6カ月以内に二番底に陥る可能性があるとの回答が62%。日本の「失われた10年」と似た経路をたどる恐れがあるとの見方は69%に達した。米財政赤字が今後2年間に信用危機を誘発し、長期金利の劇的な上昇をもたらす「可能性がある」との予想は、「わずかながら」(33%)も含めて86%。「あり得ない」は13%だった。

  ただ、米金融緩和の長期化観測を背景とした債券相場の上昇に対しては、一定の警戒感も見られる。米国債相場が現在、バブル状態にあるとの回答は46%、否定的な見方が45%で拮抗。今後6カ月で米10年債利回りが上昇するとの予想は49%、「下落する」は26%にとどまった。同時期に金相場は50%、S&P500種株価指数は49%、原油相場は44%の投資家やアナリストが上昇見通しを示したが、下落予想との差は米10年債が最大だった。

  来年にかけて「最も高い」収益を期待する金融商品は株式が36%、商品が32%、通貨が16%。「最低の」運用成績になると見ているのは債券が49%、不動産が24%だった。今後6カ月の投資戦略で「増やす」のは株式が44%、商品が36%。債券は「減らす」が49%に達した。

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