7月8日(ブルームバーグ):シンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングスは、アジア地域で資産購入を拡大する方針だ。前期は同地域への投資が奏功し、運用資産価値が過去最大の伸びを記録した。
テマセクが8日発表した年次報告書によれば、同社の運用資産は3月31日までの1年間で43%増えて1860億シンガポール・ドル(約11兆9000億円)となり、それまでのピークだった2年前の1850億シンガポール・ドルを上回った。1年前の運用資産は金融危機の影響で保有する銀行株に損失が出て、550億シンガポール・ドル減少していた。
テマセクのポートフォリオは、シンガポールと日本を除くアジア投資の割合がほぼ半分を占めた。中国やインドの旺盛な天然資源需要に着目し、エネルギー・資源投資の価値は72%上昇した。クレディ・スイス・グループのアジア担当チーフエコノミスト、ジョゼフ・タン氏は、欧州ソブリン債危機の影響をアジアの消費拡大が和らげるとして、テマセクの投資戦略は同社にプラスとの見方を示している。
タン氏は報告書の発表前に「テマセクは新興市場、特にアジア重視の戦略に転換した。アジアは現在、世界で最も明るい地域の一つだろう」と述べ、「その成長は依然として、比較的力強い」と語っていた。
MSCI世界指数は3月までの1年間で49%上昇。ただ、それ以降は欧米の景気回復が鈍化しつつあるとの懸念から10%下落している。
「アジアに焦点絞る」
テマセクのS・ダナバラン会長は報告書で「荒波が待ち構えているが、アジア地域は長期的に成長を維持するだろう」と指摘。「われわれは今後もアジアに焦点を絞る」と表明した。
同社のトウ・ヘンタン最高投資責任者(CIO)によれば、今後10年間、同社はアジアへの投資配分を引き上げるとともに、中南米などの地域への投資も着実に増やす公算が大きいという。
報告書によると、シンガポールと日本を除くアジアへの投資は、3月末時点でポートフォリオの46%を占め、その1年前の43%から拡大。シンガポール国内の投資は31%から32%に増えている。一方、経済協力開発機構(OECD)加盟の先進国への割合は22%から20%に低下した。
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