2010年7月16日金曜日

「ゴールまだ先」原油流出止まるも予断許さず

7月16日20時42分配信 産経新聞

 【ワシントン=渡辺浩生】米南部メキシコ湾の原油流出事故で、英メジャー(国際石油資本)BPは15日、海底の油井からの流出が止まったことを確認した。油井に新たに取り付けたふたが機能したたためで、4月20日の石油掘削施設の爆発事故以来、流出が止まったのは初めて。ただ、原油の噴出を根本から完全に食い止めるまでなお、予断を許さない。

 水深1500メートルの海底にある油井の封じ込め作戦は、これまで試行錯誤の連続だった。BPは5月末、油井に大量の泥水を流し込む「トップ・キル」作戦を試みたが、3日間で失敗。6月に、破損したパイプにドーム形のふたを取り付けチューブを差し込み、海上のタンカーで油を吸い上げてきた。だが、油井とのすき間から原油が漏れ続け、回収量も限られていた。

 このためBPは12日、高さ約5・5メートル、重さ約75トンの密閉性が高い筒状の新たなふたに取り換えた。ふたには、油の流出をコントロールできるバルブ(開閉弁)が3カ所ある。

 BPはふたの密閉性を確認する試験に14日夜から着手した後、ふたの1カ所で漏れが見つかったため、試験を中断して修理し、15日午後にバルブを閉める作業を開始した。

 この結果、米東部時間15日午後3時25分(日本時間16日午前4時25分)、水中ロボットが3つ目のバルブを閉め終わった直後、流出が止まった。事故発生から「85日と16時間25分」(AP通信)が経過していた。その瞬間、BPの作戦司令室では拍手がわき起こった。BPのウェルズ上級副社長は「海中で原油が見えないのはうれしいが、感情は抑えようと思う」と気を引き締めた。

 試験は続けられており、BPは海底から約4500メートルの貯留槽まで伸びる油井内の圧力を計測中だ。圧力が十分高い数値であれば、油井に損傷がないことを示し、作戦は大きく進展する。海上の船で油を吸い上げる作業を再開し、日量最大950万リットルとされる流出量を漏れなく回収できる。ハリケーンの襲来で作業が中断しても、その間バルブを閉めれば漏れも防げる。

 逆に圧力が弱ければ、油井が破損し、回りの地層に油やガスが漏れている可能性がある。その場合は試験を打ち切り、バルブを開放し原油を逃す。封じ込め作戦は一転して困難な状況に戻ることも予想される。

 初動の遅れが批判され、支持率低下に悩むオバマ米大統領も「明るい兆しだが、まだ試験の段階だ」と慎重な態度を崩さない。

 最終的な封じ込めは2カ所で掘り進められている「救援井戸」の成否にかかっている。これを油井につなげ、泥やセメントを流し込み封印する。救援井戸は8月中旬までの完成を目指すが、失敗は許されない作業だ。

 一方、海上を漂流し、沿岸の湿地や海岸線に漂着し、米史上最大の環境汚染となった原油の除去には数年かかる。「ゴールはまだ先だ」(BP幹部)といえる。

0 件のコメント: