[ニューヨーク 14日 ロイター] 14日のニューヨーク外国為替市場では、ユーロがドルと円に対して上昇した。強い内容の経済指標の発表を受けて欧州の景気回復に対する懸念が和らぐとともに株式などリスクが高めの資産の購入意欲が高まり、ユーロに対する逆風が一服した格好だ。
ただ欧州の抱える問題そのものが完全に視界から消えたわけではない。ユーロは6月初め以来の高値である1.23ドルに迫った後は、ムーディーズがギリシャの格付けを投機的(ジャンク)等級に引き下げたことを受けて上昇幅を削る展開となった。ムーディーズはギリシャについて、大きなリスクに直面しているとの見解も示した。
アナリストによると、格下げは大方の投資家の予想通りで、注目はユーロ圏の鉱工業生産が予想を上回ったことに集中し、ショートカバーの動きが強まったという。ユーロは先週、2006年以来の安値である1.1876ドルをつけたが、ショートカバーで約4セント上伸した。
BNPパリバ(ニューヨーク)の上級ストラテジスト、セバスチャン・ガリー氏はギリシャの格下げについて「その材料でしばらく前から取引を行っているので、ここにきて格付け会社が現実を追認したという事実だけでは大きな影響はない」と指摘した。
ニューヨーク市場終盤の取引でユーロ/ドルEUR=は0.9%高の1.2225ドルで取引された。高値は1.2298ドル。欧州の株式市場ではFTSEユーロファースト300指数.FTEU3が1カ月ぶり高値で終了した。
ウエストパック(ニューヨーク)の為替ストラテジスト、リチャード・フラヌロビッチ氏はギリシャの格下げについて、一部のトレーダーがユーロ買いを手控える言い訳に使っていたが、ユーロには「依然ある程度の上昇余地があり、1.24─1.25ドルまで上昇するとみている」と語った。
ユーロ/円EURJPY=は0.8%高の111.85円。ドル/円JPY=は0.2%安の91.45円。
ユーロと株式にとっては、一部欧州諸国の債務危機が銀行セクターを脅かし、ユーロ圏16カ国の経済成長を鈍化させるのではないかとの懸念が最近の取引で足を引っ張る要因だった。しかしトレーダーによると、14日の上昇でユーロは、4月9日以来初めてテクニカル上で重要な上値抵抗線を突破した。
BNPパリバのガリー氏は、投資家がリスク志向を回復しており、先週行われたイタリア、スペイン、ポルトガルの国債入札が順調だったことにも勇気づけられたと指摘した。
ただ、一部のアナリストはユーロの下落基調は変わっておらず、ユーロ圏の銀行セクターや債務問題に対する懸念はしばらく尾を引く可能性が高いとみている。
この日の上昇にもかかわらず、ユーロは今年、ドルに対して依然15%近く下落している。
高利回り通貨の豪ドルAUD=D4は米ドルに対して1%上昇し、0.8580米ドルとなった。高値は0.8668米ドル。
ポンドGBP=D4は対ドルで1.48ドルを上回り、1カ月ぶり高値をつけた。英国の政権交代に伴って発足した予算責任局(OBR)が公的部門借り入れ額について、予想よりも早めに減少するとの見通しを示したことが材料視された。
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