【ニューヨーク】世界最大級の米資産運用会社のブラックロックは、依然として不透明な景気見通し、ソブリンリスクの高まり、インフレ圧力の低下などを踏まえ、このところ米国債投資を拡大している。
ブラックロックの債券投資を統括するカーティス・アーレッジ最高投資責任者(CIO)は、ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューに応じ、同社が、昨年アンダーウェイトであった米国債の投資スタンスをニュートラルに引き上げつつあると語った。
ブラックロックは同時に、オーバーウェートであった社債や不動産担保証券などの保有を大幅に減らしている。これらの市場が昨年大きく反発したことがその理由だとアーレッジ氏は説明する。
「リスク資産から安定資産へ資金が動いている」と同氏は述べ、10年以上の米国債は特に「魅力がある」と付け加えた。
1988年、ローレンス・フィンク最高経営責任者(CEO)によって創設されたブラックロックは、英バークレー・グローバル・インベスターズを買収後、世界全体で3兆ドル(265兆円)以上の資産を運用している。バランスシートは米連邦準備銀行よりも膨らんだ。そのため世界の金融市場、特に債券分野では、圧倒的な影響力を持つ。
消費者・企業ローン金利の指標となる10年米国債利回りは3日終盤で3.625%。2年物は0.812%。10年利回りは昨年6月以降、4%未満で推移している。
同氏によると、今年2月の初旬に米政府が国債発行の規模を縮小する可能性を示唆して以来、個人投資家による国債の購入が殺到しているという。税収が増えれば国債発行高が減る可能性もあり、それが国債市場のさらなる活性化につながるとしている。
また多くの政府が、支援を必要とする経済状況と、債務を削減する必要性の両立という難しい課題に直面しているとし、ギリシャ政府の財政緊縮策を例に挙げた。
だがブラックロックのギリシャ国債の保有高は明らかにしなかった。
ギリシャ政府は3日、48億ユーロ(約5800億円)規模の赤字削減策を発表した。同国の債務問題がユーロ圏全体に波及し、さらには世界経済の成長を阻害するのではとの懸念が高まるなか、大規模な赤字削減策を打ち出すことで、ドイツやフランスなどの主要EU(欧州連合)加盟国から支援を獲得する道を切り開いた。
アーレッジ氏によると、ギリシャ救済には、公的支援だけではなく、大規模な資産運用会社など民間部門も加わる公算が高いという。そして民間の投資家から支援を得るために、ギリシャ政府は財政問題に対応するため「明確かつ信頼できるプラン」を提示する必要があると主張し、次のように語る。
「問題は、それを確実に実行させるために誰がギリシャの背中を押すか、ということだ。ギリシャ問題の解決策には、同国が従う条件も含まなければない。ギリシャは自らの財政問題に取り組むための規律を定める必要がある」
また債務がギリシャと同じ水準にあり、政治・経済不安を抱える英国に関しては、英国債ギルトと通貨ポンドの下落が著しいと指摘したものの、現時点では中立的な立場を取っていると述べた。
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