3月11日(ブルームバーグ):英銀HSBCホールディングスのスイスのプライベートバンク部門は、現存の1万5000口座の詳細データが元従業員による窃盗に遭ったことを明らかにした。
ジュネーブを拠点とするHSBCプライベート・バンク(スイス)の11日の発表によると、情報技術(IT)部門の元従業員が約3年前に口座情報を盗んだ。2006年10月までに閉鎖された口座9000件についてのデータも盗まれていたという。同行の現在の口座数は約10万件。
プライベートバンクのアレクサンダー・ゼラー最高経営責任者(CEO)はジュネーブで記者団に対し、「顧客のプライバシーが脅かされている」として、「この状況について深く反省し顧客に心から謝罪する」と述べた。1億スイス・フラン(約84億円)を投じてセキュリティーを改善する計画も示した。
盗難に遭ったデータを入手したフランス当局はスイス側に、情報を「不適切に」利用することはしないと伝えたという。ドイツのメルケル首相は先月、スイスの銀行口座に関する情報を同国政府が買い取ることもあり得ると述べていた。
スイスは国際的な税務調査への協力をめぐる条約で各国と交渉しており、HSBCのデータ盗難事件は摩擦の火種となっている。スイス政府は1月に、盗難が絡む件では外国政府への協力を禁じる法案を作成する意向を示した。仏政府は昨年12月に、元HSBC従業員から入手したものを含めフランスの納税者がスイスに持つ銀行口座についてのデータを所有していることを明らかにした。スイスはHSBC問題を理由に同月、条約に関するフランスとの交渉を停止している。
HSBCは、「盗まれたデータによって第三者が顧客口座にアクセスしたことはまだなく、今後もそれが可能だとは考えられない」としている。
スイスの銀行監督当局、FINMAはこの日、昨年12月以来HSBCと緊密に連絡を取っていると電子メールで公表した。HSBCに対する行政手続きを開始したとし、盗難が起こり得た状況を調査していると説明した。
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