9月15日(ブルームバーグ):野村証券の池田雄之輔外国為替アナリストは、鳩山由紀夫次期内閣で財務相就任が有力視される藤井裕久民主党最高顧問が約16年前の蔵相時代と同様に、外国為替市場での円売り介入を決断する公算があるとみている。日米欧の通貨当局がドル買いの協調介入に踏み切る可能性も否定できないという。
池田氏は14日のインタビューで「民主党は円売り介入に慎重だとされるが、経済・金融情勢に不透明感が根強い中で無秩序な円高が進めば話は別だ」と指摘。1ドル=85円に向けて円高が加速すれば、円売り介入があり得ると予想した。ドル安が国際金融資本市場を動揺させる恐れが強まった場合には、日米欧の「協調によるドル買い介入の可能性も排除できない」とも述べた。
15日付の日本経済新聞朝刊は、民主党の鳩山代表が16日に発足させる新政権の財務相に藤井氏を起用する方針を決めたと報じた。藤井氏は1993年8月に発足した非自民8党連立の細川護煕内閣で大蔵大臣に就任した。直後の同月17日、財務省が公表している91年5月分以降では当時の過去最高額となる2002億円の円売り・ドル買い介入を実施。戦後初の100円突破が迫っていた円高・ドル安を100円35銭で食い止め、ひとまず反転させた経緯がある。
藤井氏は3日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、為替介入は基本的に「あまり乱用すべきではない」が、投機的で「異常」な動きに対しては「介入してもいいというのが1つある」と述べた。
足元の円相場は対ドルで11、14日に一時90円21銭に上昇。2月12日以来、約7カ月ぶりの円高・ドル安水準をつけた。1月21日には87円13銭と、1995年7月以来13年半ぶりの高値を記録。2007年6月の安値124円13銭から30%上昇した。戦後最高値は95年4月につけた79円75銭。財務省によると、政府・日銀は04年3月を最後に、為替市場介入を実施していない。
米国も容認、協調の可能性も
池田氏は、輸出依存から内需主導への転換を図る民主党が円高阻止の為替介入に慎重であったとしても、ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)からかい離した急激な円高進行は株価急落や企業・消費者心理の冷え込みを招き、景気の底割れにもつながりかねないと強調する。
チャート分析の観点からも、1月につけた87円13銭を超えると、95年4月につけた戦後最高値「79円75銭まで円高・ドル安に歯止めがかからなくなる可能性もある」と指摘。新政権が円売り介入を余儀なくされる公算があると語った。
池田氏は、今回の円売り介入は米国の理解を得やすい面もあると指摘する。足元でドルの全面安が進んでいるためだ。無秩序なドル安は海外投資家の対米投資を萎縮させ、米国内外の金融資本市場に深刻な混乱を招きかねないためだという。
防衛ラインは「85」
米連邦準備制度理事会(FRB)が算出するドルの実質実効相場(全通貨対象、73年1月=100)は、主要通貨が変動相場制に移行するきっかけとなったニクソン・ショック後、73年1月の統計開始から今まで85を大幅に割り込んだことがない。
ドル指数は78年10月に84.16まで下落したが、米カーター政権は翌11月にドル防衛策を発表。ドル相場の底割れを回避した。メキシコ危機を背景としたドル安の面もあった「超円高」の95年4月から7月にかけても84台に下落。日本銀行の利下げや、同年6月に大蔵省国際金融局長に就いた榊原英資氏らが演出した日米協調介入もあり、ドルは上昇に転じた。
米証券ベアー・スターンズが破たんした08年3月には84.77に下落した後、ドルは持ち直した。同年8月28日付の日本経済新聞朝刊は、日米欧の通貨当局が3月にドル買い協調介入を柱とするドル防衛策で秘密合意していたと報じた。
FRBによると、3月に97.26だったドル指数は足元で89.55。池田氏は「ドルが87-85円、1ユーロ=1.50-1.55ドル前後」まで下落すると、事実上の「防衛ライン」に到達すると試算。米株式・債券・ドルの「トリプル安などの混乱を回避するため、日米欧などの通貨当局がドル買い協調介入を選択する可能性も排除できない」と話した。
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