2009/03/02 13:15
3月2日(ブルームバーグ):金と銀の価格差が過去13年で最大となっていることから、銀が今年、1979年以降で最高の年間リターン(投資収益率)を上げるとの見方が投資家の間で強まっている。79年にはハント兄弟が銀を買い占めた。
米政府が総額9兆7000億ドル(約950兆円)規模の景気刺激策を打ち出したため、米国債が下落するとの懸念が広がっている。S&P500 種株価指数が過去1年間で47%下落するなか、資産運用会社は貴金属の購入を進めている。貴金属調査会社、英GFMSのフィリップ・クラプウィジク会長は、金相場が今年25%上げ、銀相場は58%上昇し1オンス当たり18ドルになると予想している。
ハンティントン・アセット・アドバイザーズで総額155億ドルの資産運用に携わるピーター・ソレンティーノ氏は「銀相場はうまく連動して上昇するだろう」と予想。「価値の保存を目指して投資家らは貴金属に逃避している。銀相場は出遅れたが急速に追い上げている。ただ、依然としてパフォーマンスの差はある」との見方を示す。ハンティントンは資産の約7%を銀に、約3%を金に、それぞれ投資している。金相場は過去最高値を1オンス当たり約80ドル下回る水準で取引されている。
銀相場が上昇すれば、世界最大の銀生産会社フレスニージョ(メキシコ)やペルーのリマを拠点とするホックシールド・マイニング、カナダのパン・アメリカン・シルバーなどの利益につながる可能性がある。銀の主要生産国であるペルーとメキシコの輸出収入も拡大が見込まれる。一方、銀は写真用品の原料となるため、写真用品大手の米イーストマン・コダックはコスト増に直面することになる。
前回、銀相場のパフォーマンスが金を上回ったのは2006年だった。 24銘柄で構成するスタンダード・アンド・プアーズのゴールドマン・サックス商品指数(S&P GSCI商品指数)は今年に入って3.7%下落している。2008年は年間ベースで43%下げ、同指数が導入された1971 年以降で最大の下落率を示した。
「まだ高騰していない」
銀現物相場は過去1年間で35%下落し、1オンス当たり13.2350ドル。金相場の下落率は3.2%にとどまり、1オンス当たり951.80ドルとなっている。
このため、金と銀の価格差が広がった。ブルームバーグ・ニュースが集計したデータによると、金1オンス当たりの価格で購入できる銀の量は72オンスと、過去2年間の平均である58オンスから増加している。昨年10月には84.39オンスと、95年3月以降で最大となった。
デルタ・グローバル・アドバイザーズ(カリフォルニア州)で10 億ドル相当の運用を手掛けるチップ・ハンロン社長は「銀相場は最近上昇を始めたばかりで、まだ高騰していない」と指摘。「金相場がさらに上昇すれば、心理的に金を購入するのが困難になってくる。そのため、人々は銀に目を向ける」との見方を示し、銀相場が20ドルに達すると予想する。
世界の大手金融機関が総額1兆2000億ドルを超える評価損や損失を計上し、世界経済がリセッション(景気後退)に陥るなか、投資家らは他のほぼすべての投資先よりも貴金属に好んで投資している。
「貧しい人々にとっての金」
グレシャム・インベストメント・マネジメント(ニューヨーク)の調査ディレクター、ダグ・ヘップワース氏は「銀は貧しい人々にとっての金であり、貧困層は以前と比較して非常に多くなっている」と指摘。「現在のような環境では、商品銘柄のうち金と銀だけが高騰し得る」との見方を示す。
ダラス在住の資産家、ネルソン・ハント氏とウィリアム・ハント氏の兄弟が銀を買い占めたため、79年年初に1オンス当たり6ドルだった銀相場は80年初めには50ドルに高騰した。兄弟は88年に相場操縦の共謀容疑で有罪判決を受け、罰金1億3000万ドルの支払いを命じられた。
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