4月6日(ブルームバーグ):世界各国・地域の中央銀行が世界的なリセッション(景気後退)に立ち向かうため、過去に例を見ない大規模な資金供給を実施し、消費者物価が上昇に向かう環境を整えるなかで、米国のインフレ連動債(TIPS)のリターンが過去最高水準に達している。
メリルリンチの指数によると、3月のTIPSのリターンは 6.1%と、1997年の発行開始以来で最も高かった。世界的に見ても、3月はインフレ連動債のリターンが4.3%(再投資金利を含む)と、月間としては少なくとも過去10年で2番目の高水準だった。
米資産運用大手ブラックロックや投資信託会社バンガード・グループ、債券ファンド大手パシフィック・インベストメント・マネジメ ント(PIMCO)などの間では、いったん景気回復が始まれば、金融政策担当者らはインフレ抑制に苦労するとの懸念が高まっている。米連邦準備制度理事会(FRB)やイングランド銀行(英中央銀行)、欧州中央銀行(ECB)は過去1年間でマネーサプライ(通貨供給量)を平均で9.2%(2兆ドル相当)増やし、24兆ドルにまで膨らませている。
ブラックロックでインフレ連動債の運用に携わるブライアン・ウェインステイン氏は、米国では消費者物価指数(CPI)の上昇率が「4%ないしそれを上回る水準に戻る可能性がある」と指摘。少なくとも、「TIPS市場はインフレ・トレンドに戻ろうとする方向を示している」と分析した。
CPIの動向
昨年の米CPIは0.1%上昇と、1954年以来で最も低い伸びにとどまった。ブルームバーグがまとめたエコノミスト52人の予想中央値によれば、2009年は0.7%の低下が見込まれている。
経済協力開発機構(OECD)は先進国30カ国の09年の成長率がマイナス4.3%と、ここ半世紀余りで最大のマイナス成長になると予測。ブルームバーグがまとめた55人の予想中央値によると、昨年 6.3%のマイナス成長に陥った米国の今年の成長率はマイナス2.5%となる見通しだ。
国際通貨基金(IMF)が3月6日に公表したところでは、先進国19カ国の政府・中銀は経済危機を終わらせるため、国内総生産(GDP)平均の43%に相当する財政出動や資金供給を行っている。米国や英国、日本の中銀は景気てこ入れのため、政策金利をゼロに近い水準まで引き下げている。
このため物価は世界中の投資家にとってますます懸念材料となっている。ブルームバーグのデータによると、インフレ連動債のリターンは08年7-12月(下期)にマイナス3.1%となったものの、3月は世界的に見て、98年の集計開始以後で昨年12月に次ぐ高い水準を記録した。
バンガード・グループでTIPSファンドなどの債券の管理を手掛けるケネス・ボルパート氏は「金融システムへの資金供給はインフレを促進する効果が非常に大きい」と述べ、「TIPSはアウトパフォームするだろう」と予想した。
通常国債との利回り格差(ブレークイーブン・レート)が示すインフレ率見通しは、過去の平均や金融政策当局が設定する目安、ブルームバーグがまとめたエコノミストの予想中央値をいずれも下回っている。
米10年債とのブレークイーブン・レートによると、投資家が予想する向こう10年間の平均インフレ率は1.41%と、過去10年の平均(2.06%)を0.65ポイント下回っている。FRBが2月18日に公表した1月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録によると、大部分のメンバーが長期的なインフレ目標として2%という数字を支持した。ブルームバーグがまとめたエコノミスト29人の予想中央値によれば、インフレ率は11年末までに2.4%に上昇すると見込まれている。
-- Editors: Phil Kuntz, Dave Liedtka
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