日銀は東日本大震災を背景とした金融市場の動揺を抑えるため、3日連続で大規模な即日資金供給オペを実施、合計の即日供給オペの通告額は空前の26.5兆円に達した。震災に加えて東京電力福島第1原子力発電所の事故の深刻化で、短期金融市場では資金の出し手が不在となっている。市場参加者のリスク回避姿勢に改善の兆しが見えない中、日銀は17日以降も万全の態勢で市場を注視する構えだ。
日銀は14日、1日当たりとしては過去最大となる合計15兆円の即日資金供給を実施。15日に8兆円、16日にも3兆5000億円と3日間合計で26.5兆円を即日で供給した。過去に日銀が実施した即日供給の最高額がリーマン・ショック直後の4.5兆円であり、巨額の供給を連発しているのがわかる。先日付の資金供給を含めると、3日間で55.6兆円の供給を打ち出している。
巨額資金供給の狙いについて白川方明総裁は14日の会見で、「先行きの不確実性が高い状況となったため、金融市場において市場参加者が予備的な資金需要を大きく増やし、金融機関が多くの資金を保有しようとする状況となった」とし、「短期金融市場はすべての金融活動の出発点。中央銀行としては、この金融市場の安定をしっかり確保し、資金面に関する不安を解消させることが非常に重要であると判断した」と狙いを説明した。実際、全国地方銀行協会の小川是会長(横浜銀行(8332.T: 株価, ニュース, レポート)頭取)は16日の定例会見で、震災後の地銀の資金繰り懸念について「日銀が震災直後から(潤沢な資金供給で)直ちに手を打ったこともあり、そのような懸念は聞いていない」と評価している。
現実には、11日午後の震災発生直後から16日夕刻現在まで短期金融市場では資金の出し手不在から金利上昇圧力が高まっており、日銀による大規模な供給で無担保コール翌日物金利を政策目標の1.0%以下に抑え込んでいる格好だ。日銀の一連の金融緩和策もあり、これまで翌日物金利の平均は0.1%を下回って推移してきていたが、14日は平均で0.109%まで強含んだ。翌15日も0.103%と0.1%を上回り、16日になって3営業日ぶりに0.092%に収まった。
クレディ・アグリコル証券の加藤進チーフエコノミストはこうした金利上昇圧力について、金融機関のリスク回避姿勢に加え、資金調達需要の高まりもあると指摘する。加藤氏によると、背景には「東北地方の金融機関向けの現金需要や、首都圏などでの生活物資買い占めのための現金需要など日銀の想定以上の資金需要がある」という。日銀は16日までに東北地方の金融機関に対して12日以降、累計2310億円の現金を供給したと公表している。
(東京 16日 ロイター)
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