2011年3月17日木曜日

暴れる巨大エネルギー 静岡誘発? 富士山噴火懸念

産経新聞 3月16日(水)15時22分配信

静岡県東部で震度6強を観測した15日深夜の地震は、11日の東日本大震災をもたらした巨大地震で誘発された可能性が大きい。震源付近では巨大地震の直後から箱根で群発地震が起きており、富士山の火山活動の活発化を懸念する声も出始めた。マグニチュード(M)9・0という巨大エネルギーの“余波”が日本列島を揺さぶっている。

 「この場所で過去に地震はあまり起きていない。想像外だ」。防災科学技術研究所・地震研究部の松村正三研究参事は15日夜、驚きの言葉を口にした。

 巨大地震の発生後、内陸で大きな地震が相次いでいる。12日の長野県北部の震度6強(M6・7)に続き、今度は伊豆地方でM6・4の地震が起きた。 海溝型の巨大地震が発生すると、地殻にかかる力が変化し、内陸直下型の地震が起きることがある。津波で約2万2千人が死亡した明治29年の三陸沖地震(M8・2)では、約2カ月後に秋田県で陸羽地震(M7・2)が起きた。

 ただ、今回の伊豆地方の地震は、巨大地震の三陸沖から遠く離れている。プレート(岩板)構造も巨大地震が太平洋プレートの沈み込み帯だったのに対し、伊豆地方はフィリピン海プレートが陸側に衝突する場所と、まったく違う。

 松村氏は「巨大地震は太平洋プレートの北半分が滑ったが、南半分はまだ動いていない。房総半島あたりで踏ん張っている南半分の力のしわ寄せが及んで、西隣のフィリピン海プレートを押し込んだのではないか」と話す。

 京都大防災研究所・地震予知研究センターの遠田晋次准教授は、東日本大震災の巨大地震で地殻の断層にかかる力がどのように変化したかを計算した。その結果、東北地方の北上山地や房総半島東沖にかかる力が顕著に増加したほか、長野県の一部などでわずかに増加し、地震活動が活発化するとの結果が出た。

 東日本大震災の地震エネルギーがあまりにも巨大だったため、地震学者の多くは、日本列島は東日本を中心に地震の活動期に入ったとみる。ただ、今回の伊豆地方の地震と東海地震の関係については「震源域やメカニズムが違う」(気象庁)と否定的だ。 巨大地震の影響は火山帯にも及んでいる。神奈川県温泉地学研究所によると、箱根火山の周辺では巨大地震の直後から群発地震が発生し、15日夕までに最大M4・8の地震を約850回観測した。

 火山活動に目立った変化はないものの、カルデラ内で揺れを感じることもあるという。

 名古屋大地震火山・防災研究センターの鷺谷威教授は「火山の地下はマグマや熱水で壊れやすいため、群発地震が誘発された」とした上で、「正直に言うと、気持ち悪いのは富士山との関係だ」と明かす。

 富士山の直下では約10年前、マグマ活動との関連が指摘されている低周波地震が頻発した。その後、静穏化したが、今回の伊豆地方の地震の震源の深さ約14キロは、この低周波地震の震源に近いという。

 鷺谷教授は「富士山は宝永の大噴火から約300年が経過し、いつ噴火してもおかしくない。今回の地震が引き金になる可能性もあり、推移を注意深く見ていきたい」と話している。 静岡県で最大震度6強を記録した地震で、同県の負傷者は計33人になったことが分かった。同県によると、静岡市の男性(35)が右足首骨折の恐れがある重傷で、他は全員軽傷という。警察庁によると、神奈川県の負傷者もいずれも軽傷だが、3人となった。

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