2010年3月21日日曜日

榊原元財務官:米国は強いドル政策から移行している

3月18日(ブルームバーグ):早稲田大学インド経済研究所所長の榊原英資元財務官は18日午後に都内で、世界的な金融危機後の為替政策について、「米国はどうも強いドルからドル安方向にシフトしたようだ」と述べた。「弱いドルは輸出を振興できる」ため、米国債の保有が多い日本や中国には不利だが「米国の国益からすると、ドル安になってしまう」と解説した。

  榊原氏は国際通貨研究所(行天豊雄理事長)が開いた国際金融シンポジウムで、米国のドル安容認にギリシャなどの財政危機を背景としたユーロ安も加わり、「アジア通貨高傾向になる」と指摘。アジア諸国との貿易が多い日本の「円にも上昇圧力がかかっている」と話した。

  同シンポジウムでは、米コロンビア大学教授でノーベル経済学賞受賞者のジョゼフ・スティグリッツ氏も、米国は輸出促進のため「ドル安を望んでいる」と分析。為替相場はドルやユーロの「ネガティブ・ビューティー・コンテスト」となっているが「引き続きドル安と確信している」と語った。

  スティグリッツ氏は、ドル暴落は「1970年代にもあった」と指摘。「再現しないと考えるほうがおかしい」と述べる一方、ドル安が進めば海外の投資家による米資産購入が増えるため、ドル相場はいずれ安定に向かうとの見方を示した。

          基軸通貨の座は維持

  榊原氏は、基軸通貨としてのドルの地位については「徐々に悪化しているが、置き換わるものは当面ない」とも発言。国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)は「とてもよい手段だ」が「決済通貨や準備通貨にはなり得ない」と話した。

  主要6通貨に対するインターコンチネンタル取引所(ICE)のドル指数は昨年11月26日、一時74.170と08年8月以来の安値をつけた。今年2月19日には81.342と約8カ月ぶりの高値を記録。足元では79台と、やや下落している。

  円・ドル相場は昨年11月27日、中東ドバイ発の金融不安などを背景に84円83銭に急伸。1995年7月以来14年4カ月ぶりの高値をつけた。その後は政府・日銀による円売り介入観測や日銀の金融緩和、米雇用情勢の持ち直しを受け、1月8日には93円77銭と約4カ月半ぶりの円安水準に下落した。

  今月4日には一時1ドル=88円14銭に上昇。昨年12月10日以来の円高・ドル安水準を記録したが、その後は日銀による追加金融緩和の観測報道もあり、90円程度で推移している。円の史上最高値は95年4月の79円75銭。

  榊原氏は1965年に大蔵省(現・財務省)に入省。国際通貨基金(IMF)や米ハーバード大客員準教授などを経て、95年6月に国際金融局長。米国や日銀と協調して円高・ドル安の是正に取り組み、同年9月には100円台を回復させた。アジア経済危機が発生した97年からは財務官を務め、円買い介入も実施。「ミスター円」の異名を取った。

0 件のコメント: