3月16日7時46分配信 ウォール・ストリート・ジャーナル
世界最大級にして最も謎めいたファンドの1つであるアブダビ投資庁(ADIA)は14日、1976年のファンド設立以来初めてとなる年次評価で、過去20年のリターンが年率6.5%であったことを明らかにした。
しかし、詳細情報の開示は行われておらず、資産総額にも触れられていない。ADIAはこれまで、運用規模や、外部の試算に関するコメントを発表したことはない。最近では運用総額が5000億ドルを超える、とする見方も出ていた。
ADIAは、アラブ首長国連邦(UAE)を形成する7首長国中、最大にして最も裕福なアブダビの原油収入を原資とする、寡黙かつ保守的な機関投資家として長く知られてきた。
パッシブ運用中心との評判を裏付けるように、ADIAは、資産の80%を外部のファンドマネジャーが運用し、60%を指数連動型の金融商品に投資している。
14日に発表された数字で最も興味深いのは年平均リターンだ。ただ、ADIAはリターンを過去20年で6.5%、過去30年で8%としているが、対象期間が長いため、他の機関投資家との比較は困難だ。
近年、ADIAは米シティグループへの75億ドル(約6800億円)の投資で苦い経験をしている。
ADIAは2007年11月にシティグループを救済すべく75億ドルを出資し、代わりに出資証券を取得した。出資証券の配当は年11%と比較的高水準だった。しかし、15日から始まる予定の最初の強制転換は1株当たり31.83ドルが下限になっているのに対し、12日の普通株終値は4ドルを割り込んでいる。
昨年11月、シティグループは、ADIAがこの出資をめぐって「不実表示」があったとして契約解除または 40億ドルの賠償金を求めたことについて、ADIAと調停中であることを明らかにした。民間の調停状況は機密情報とされるため、双方とも詳細についてコメントできない。シティグループの広報担当は14日もコメントを拒否した。
だが当時、これは巧みな取引と思われた。欧米の銀行幹部は、金融危機のさなか、ほかの複数の中東やアジアの政府系ファンドの投資を歓迎した。だがこういった投資は、ワシントンや欧州で政治的反発も招き、これらの取引は外国の影響力を行使するために使用される可能性があるとの懸念も生じた。
そういった懸念に対応するため、ADIAと多くの大手政府系ファンドは、投資活動を商業目的に限定することを定めた一連の投資行動規範「サンチアゴ規範」を国際通貨基金(IMF)とともに策定、合意した。14日に発表された声明で、ADIAは年次評価の開示とウェブサイトの開設は、「サンチアゴ規範に準拠する姿勢を強調するもの」と述べた。
年次評価でADIAは、ポートフォリオについて、資産・地域別内訳の一部を示している。例えば、ポートフォリオの35~45%を先進国株式に投資することを目指している。
クウェート投資庁、シティ株売却で11億ドルの利益
2009年 12月 7日 16:19 JST
【ドバイ】政府系ファンドのクウェート投資庁(KIA)は6日、電子メールの声明で、米シティグループに対する持ち株すべてを41億ドル(約3680億円)で売却したことを明らかにした。優先株を普通株に転換した上で売却し、11億ドルの利益(投資収益率は36.7%)を得たという。
KIAは2008年、シティに30億ドル、メリルリンチに20億ドルを投資した。国内サブプライム・ローンで打撃を受けた米金融機関は当時、増資の引き受け手として海外投資家を求めていた。国際金融危機のピーク時に欧米銀行の株を底値で買った政府系ファンドは現在、こうした出資を引き揚げている。
一方、アブダビ投資庁(ADIA)は、結果的にシティ株の高値づかみになる可能性がある。同庁は10年3月まで11%の配当を得る見返りとして、07年11月にシティに75億ドルを投資。これに関連して、10年3月から1株当たり31.83ドルで同社株を購入し始めることを義務付けられている。これに対し、先週末4日の同社株終値は4ドル強。
また、シンガポール政府投資公社は9月、保有するシティ株の約半分を売却し、16億ドルの利益を得たことを明らかにしている。
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