2011年2月12日土曜日

米高速鉄道市場は中国が獲得か=苦境に立たされた韓国KTX―韓国紙

2011年2月8日、韓国紙・朝鮮日報は記事「中国、米国に高速鉄道技術を提供=韓国企業は一歩後退」を掲載した。9日、環球網が伝えた。

中国鉄道車両製造大手・中国南車と米GE社は米国に合資企業を設立。中国の高速鉄道技術を米国に導入することとなった。合資企業のカバーする範囲は、単に電動高速列車にとどまらず、中速の列車、地下鉄、ライトレール、ディーゼル機関車など広範に及ぶ。中国南車とGEによる合資会社設立は、高速鉄道KTXの輸出を目指してきた現代ROTEM社に大きな衝撃を与えるものとなった。

今や中国の高速鉄道技術は世界的な注目を集めている。中国南車が製造するCRH380の最高時速は486km。運用速度も380kmに達している。KTXよりも30kmも速度が速い。さらに車内も広く、トンネル通過時の空気抵抗減少技術も取り入れるなどの優位点を持っている。




韓国KTXに問題多発、4カ月で7回…「輸出に赤信号」=韓国
サーチナ 2月12日(土)14時38分配信

 韓国の高速鉄道KTX山川が11日、京釜高速線光明駅の近くで脱線した事故で、線路転換器システムの誤作動が原因だった可能性が高いという。しかし、過去4カ月の間に7回の故障や事故があったことが明らかになり、メディアは「乗客が不安」、「輸出に赤信号」などと伝えた。

 韓国鉄道公社コレールは11日午後5時に会見を行い、「線路転換器システムの誤作動と推定される」と発表した。車両に欠陥(けっかん)があった可能性は低いとみているが、頻繁(ひんぱん)に発生する誤作動や故障を懸念する声が高まり始めた。

 11日の脱線事故を含め、2010年10月からモーター・ブロックの誤作動・客室の暖房機の故障・動力装置の故障・ブレーキシステムの不具合・バッテリーの故障などのトラブルが続き、安全性の問題に不安がつのる一方だ。2011年に入ってからすでに3例目となる。

 韓国メディアは「相次ぐ事故で乗客に不安を与えている」と指摘。「今回脱線したKTX山川は海外進出のために野心を持って開発された韓国型高速列車だが、国内でさえそっぽを向く状況に懸念が高まる」と述べ、「海外進出に赤信号」と厳しい見解を示した。

 このように、韓国国内でもKTXの安全性に懸念を示す声は多い。メディアは高速鉄道に関心を持つ米カリフォルニア州のシュワルツェネッガー知事(当時)がKTXを試乗したことに触れ、「アメリカやブラジルなどがKTXに関心を持っているため、今回の脱線事故の原因が車両の欠陥によるものとなれば輸出にも悪影響を与える」と懸念を示した。

「北朝鮮軍の集団抗命、保衛司令部が鎮圧」

中央日報日本語版 2月12日(土)14時10分配信

脱北者団体のNK知識人連帯は11日、「最近、食糧難に苦しむ北朝鮮軍部隊が集団抗命をした」と明らかにした。この団体は消息筋を引用し、「131指導局第47旅団で先月17日ごろ、飢えた軍人が集団で不満を表し、作業命令を拒否した」とし「今回の抗命事件で軍保衛司令部が現場に出て‘反乱’を鎮圧し、該当部隊の幹部が相次いで処罰を受けた」と明らかにした。この団体は「労働党軍需工業部直属部隊である131指導局は10カ所余りの核兵器開発研究所を管理し、核兵器生産計画を総括する機構で、第47旅団はウラン鉱石を採掘する部隊」と説明した。

NK知識人連帯はまた保衛司令部が集計したという資料を引用し、「軍部隊のうち7割が軍人にテンジャンク(味噌汁)の代わりに塩のスープを食べさせ、江原道昌道郡(カンウォンド・チャンドグン)に駐留する一つの大隊だけでも昨年11月から今年1月まで軍人7人が餓死した」と伝えた。知識人連帯の関係者は「咸鏡南道栄光郡(ハムギョンナムド・ヨングァングン)に駐留する特殊部隊の軽歩兵教導指導局の108部隊軍人も食糧難のため、平壌(ピョンヤン)と清津(チョンジン)をつなぐ近隣道路を通行する人や車から略奪している」と述べた。

一部では、北朝鮮政権が北朝鮮軍部隊内のこうした事態をもみ消すために対南軍事的緊張を高めさせる可能性がある、という指摘も出ている。一部のメディアは「合同参謀本部が最近、北朝鮮軍のこうした事態と関連した機密情報を入手し、幹部を集めて非常対策会議を開催した」と報じた。これに対し合同参謀の関係者は「北朝鮮軍のそういった情報を把握したことも、関連会議を開いたこともない」と否定した。

菓子や冷凍食品、化粧品消える? 「林原」の会社更生法で高まる不安

J-CASTニュース 2月11日(金)15時12分配信

 万一、全国の店頭から菓子や冷凍食品、さらには医薬品や化粧品などが消えたら、市場がパニックとなるかもしれない。そんな悪夢が脳裏をよぎる深刻な事態が起きた。

 バイオ関連企業の「林原」(本社・岡山市)が会社更生法の適用を東京地裁に申請したからだ。これは単なる地方の有力企業の倒産とは次元が異なる。

■甘味料などに使われるトレハロースの世界生産をほぼ独占

 林原は甘味料などに使われる糖質「トレハロース」や抗がん剤「インターフェロン」を量産する世界的なメーカーで、トレハロースの世界生産をほぼ独占しているのだ。トレハロースの取引先は全国で約7000社、製品は約2万品目にのぼるうえ、「他の代替がほぼ不可能」というだけに、食品業界などへの影響が懸念されている。

 トレハロースは、同社によると「食品の乾燥や傷みを抑えたり、うま味を引き出したりするなど数多くの特長をもつ」という。クッキーなど菓子類の甘味料としてだけでなく、冷凍食品の劣化低減、野菜ジュースの苦味抑制などに役立っている。さらには保水性に優れることから、機能性繊維や医薬品、化粧品などにも素材として幅広く使われているという。

 菓子メーカーでは江崎グリコ、繊維メーカーではシキボウ、化粧品では常盤薬品工業、富士フイルムなどが林原のトレハロースを使用している。いずれも「当面の在庫は確保している」としているが、万一、林原の供給がストップするような事態となれば、各社の生産に影響が出るのは必至だ。

■美術館、自然科学博物館の運営、恐竜の発掘調査なども展開

 地方のバイオ関連企業が、これだけ多分野に波及する素材を独占的に生産していること自体が驚きだが、これが現実なのだ。林原は1883年に水飴製造からスタートし、「他社がやらない、他社ではできない独自のテーマで研究を行う研究開発型企業として歩んできた」(同社)という。

 しかし、今回は独自性の強い企業文化が裏目に出たようだ。帝国データバンクなどによると、林原はトレハロースやインターフェロンを量産することで、バイオテクノロジー企業として認知度を高めたが、運輸・倉庫業、ホテル経営、飲食業など事業の多角化を推進。美術館、自然科学博物館の運営、恐竜の発掘調査などメセナ活動も展開したため、「研究開発投資と不動産投資などで、年間売上高を大きく上回る借入金が経営を圧迫していた」という。

■中国銀行自身の審査態勢が問題となる可能性

 非上場の同族企業である林原は、経営面で外部のチェック機能が働かなかったため、長年にわたり粉飾決算を続けていたことが判明したほか、オーナー一族へ違法配当が行われていた疑いも浮上。捜査当局も一連の不正に関心を示しており、刑事事件に発展する可能性もある。

 林原のメインバンクは地元・岡山の中国銀行で、林原が同行の筆頭株主となるなど、「両社は持ちつ持たれつの関係」(地元関係者)だった。中国銀行は、つなぎ融資を林原に行うとしているが、長年にわたる粉飾決算が判明したことで、中国銀行自身の審査態勢が問題となる可能性もある。中国銀行以外の取引金融機関は林原への不信感を高めている。林原は「会社更生手続は事業継続を目的としており、商品の安定供給は確保できると考えている」としているが、果たして甘味料など素材の供給が順調に進むのか。林原の再建問題からは目が離せない。

世界の原油需要・供給予想:国際エネルギー機関(表)

2月10日(ブルームバーグ): 国際エネルギー機関(IEA)が発表した世界の原油需要・供給予想の概要は以下の通り。



================================================================================
4Q 3Q 2Q 1Q 4Q 3Q 2Q 1Q
2011 2011 2011 2011 2010 2010 2010 2010 2011 2010
================================================================================
-------------------------需要------------------------------
需要合計 90.2 89.8 88.4 88.7 89.3 88.6 86.9 86.4 89.3 87.8
-------------------------------------------------------------------------------
OECD合計 46.6 46.2 45.0 46.4 46.8 46.6 45.2 45.9 46.0 46.1
北米 24.1 24.2 23.8 23.9 24.1 24.2 23.8 23.6 24.0 23.9
欧州 14.6 14.6 14.1 14.3 14.6 14.8 14.1 14.2 14.4 14.4
太平洋 7.9 7.3 7.2 8.2 8.0 7.6 7.3 8.2 7.6 7.8
非OECD諸国 43.6 43.7 43.3 42.3 42.5 42.0 41.7 40.4 43.2 41.7
旧ソビエト 4.5 4.5 4.3 4.4 4.4 4.4 4.1 4.2 4.4 4.3
欧州 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7
中国 10.1 9.9 10.0 9.8 10.0 9.2 9.4 8.9 10.0 9.4
================================================================================
4Q 3Q 2Q 1Q 4Q 3Q 2Q 1Q
2011 2011 2011 2011 2010 2010 2010 2010 2011 2010
================================================================================
その他アジア 10.8 10.3 10.7 10.6 10.5 10.0 10.4 10.3 10.6 10.3
中南米 6.5 6.6 6.5 6.2 6.3 6.4 6.3 6.0 6.5 6.3
中東 7.6 8.2 7.8 7.4 7.3 8.0 7.5 7.1 7.7 7.5
アフリカ 3.4 3.3 3.4 3.3 3.3 3.2 3.3 3.2 3.3 3.2
-------------------------供給------------------------------
供給合計 n/a n/a n/a n/a n/a n/a 87.1 86.5 n/a n/a
-------------------------------------------------------------------------------
非OPEC 54.0 53.6 53.2 53.2 53.2 52.8 52.8 52.4 53.5 52.8
OECD合計 19.0 18.5 18.5 18.9 19.1 18.5 18.8 19.1 18.7 18.9
北米 14.2 13.9 13.8 14.2 14.3 14.1 14.0 13.9 14.0 14.1
欧州 4.1 3.9 4.0 4.2 4.2 3.8 4.2 4.5 4.1 4.2
太平洋 0.6 0.6 0.6 0.5 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6
非OECD 30.6 30.4 30.4 30.4 30.1 29.9 29.8 29.6 30.5 29.8
旧ソビエト 13.8 13.5 13.8 13.8 13.7 13.5 13.5 13.5 13.7 13.6
欧州 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1
中国 4.3 4.3 4.3 4.3 4.2 4.1 4.1 4.0 4.3 4.1
その他アジア 3.6 3.6 3.6 3.7 3.7 3.7 3.6 3.7 3.6 3.7
================================================================================
4Q 3Q 2Q 1Q 4Q 3Q 2Q 1Q
2011 2011 2011 2011 2010 2010 2010 2010 2011 2010
================================================================================
中南米 4.5 4.4 4.3 4.2 4.1 4.1 4.1 4.0 4.4 4.1
中東 1.7 1.7 1.7 1.7 1.7 1.7 1.7 1.7 1.7 1.7
アフリカ 2.7 2.7 2.6 2.6 2.6 2.6 2.6 2.6 2.6 2.6
加工評価益 2.4 2.4 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3
OPEC合計 n/a n/a n/a n/a 34.9 34.6 34.2 34.2 n/a 34.5
原油 n/a n/a n/a n/a 29.5 29.3 29.1 29.1 n/a 29.2
天然ガス液(NGL) 6.0 5.9 5.8 5.7 5.5 5.4 5.2 5.1 5.8 5.3
------------------------在庫増減---------------------------
在庫増減合計 n/a n/a n/a n/a -1.1 -1.1 0.1 0.2 n/a -0.5
-------------------------------------------------------------------------------
OECD合計 n/a n/a n/a n/a -0.7 -0.5 1.0 0.2 n/a 0.0
産業 n/a n/a n/a n/a -0.8 -0.3 1.0 0.2 n/a 0.0
政府 n/a n/a n/a n/a 0.1 -0.2 0.0 0.0 n/a 0.0
流動貯蔵/
輸送中原油 n/a n/a n/a n/a -0.3 -0.2 0.0 -0.2 n/a -0.2
均衡調整分 n/a n/a n/a n/a -0.1 -0.5 -0.9 0.2 n/a -0.3
--------------------------------------------------------------------------------
================================================================================
4Q 3Q 2Q 1Q 4Q 3Q 2Q 1Q
2011 2011 2011 2011 2010 2010 2010 2010 2011 2010
================================================================================
OPEC原油の
需要および
在庫増減 (*) 30.2 30.3 29.4 29.8 30.6 30.4 28.9 28.9 29.9 29.7
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注:数値は100万バレル/1日当り。 (*)は需要合計から
非OPEC供給とOPECの天然ガス液を引いた数値と一致する。

出所:国際エネルギー機関

オバマ政権、ファニーとフレディの段階的廃止を提案

2月11日(ブルームバーグ):ガイトナー米財務長官は、11兆ドル(約920兆円)規模の住宅ローン市場を政府依存から独り立ちさせる複数の選択肢を議会に提案した。同時に、経済的な混乱を避けるため、こうした変更の「責任ある慎重な」段階的導入を求めた。

  ガイトナー長官とドノバン住宅都市開発長官が11日提出した報告書は、将来の住宅金融システム構築に向けた3つの手法を提言している。報告書はまた、米政府が管理下に置く政府支援機関(GSE)のファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の事業を縮小し、「最終的には段階的に廃止」することも求めている。両社はサブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン投資を核にして膨れ上がった、住宅バブルの形成に関与したとされる。

  ガイトナー長官は記者団との電話会見で、新たな住宅金融システムへの移行には5-7年はかかる可能性が高いと指摘。さらに、「米国は改革への道を極めて慎重に進み、景気拡大と住宅市場修復のプロセスは必ず支えるということを強調したい。景気や住宅市場は、危機による打撃で依然として低迷している」と述べた。

  今回の計画では特定の長期的な選択肢や法案の提出を支持してはいない。3つの案にはいずれも、ファニーとフレディに対する政府支援の終了が盛り込まれている。両社が08年9月に政府の管理下に置かれて以降、総額1500億ドル以上の公的資金が注入された。

議会審議

  議会では、今回の報告公表により、住宅金融システム改革の手段に関する政策論争が始まることになる。協議は数カ月から数年はかかる見通しだ。不動産ブローカーやデベロッパーは議会に対し、ファニーメイやフレディマックが牛耳っている住宅市場はあまりにも脆弱(ぜいじゃく)過ぎるため、無謀な抜本改革には耐えられないとの見方を示している。

  信用危機以降、民間による住宅ローン投資が減少したことで、両社と米連邦住宅局(FHA)が住宅ローン担保証券のほぼ97%を保有または保証するに至っている。

  ガイトナー長官は、オバマ政権が議会による立法に頼らずに最初のステップを踏み出せると指摘しながらも、「立法措置をあまりにも長期間先延ばしにすることは望ましくない」と表明。「最終的には市場に対して、結果がどうなるのかを説明しなくてはならない。長くは待てない」と続けた。

  同長官は、この移行期間中も連邦政府はファニーメイとフレディマックの支援を継続すると表明。

  その上で、「ファニーとフレディが改革へのプロセスを進む上で、すべての責務を果たすのに必要なリソースは確保できるようにすることを、政府は市場や投資家に明確にしていく」と述べた。

2011年2月11日金曜日

インタビュー:消費税率15%程度への引き上げ必要=柳沢元厚労相

[東京 10日 ロイター] 柳沢伯夫・元厚生労働相(城西国際大学学長)は10日、ロイターのインタビューに応じ、社会保障の持続可能性と2020年度の基礎的財政収支黒字化目標を確保するには、現在の財政状況を踏まえると、現行5%の消費税率を15%程度に引き上げる必要性があると指摘した。
 デフレ下での増税による経済への影響に配慮すれば、一気に2段階で引き上げるより、小刻みに段階的に引き上げることでインフレ効果も生まれ、デフレ対策になると述べた。他の選択肢も含め、参画する「社会保障改革に関する集中検討会議」で提言する考えを明らかにした。

 インタビューの概要は以下の通り。

 ──05年の自民党財政改革研究会報告で「消費税の社会保障目的税化」を打ち出した。当時、政調会長代理として問題提起して以後、最近までの状況をどのように受け止めているか。

 「当時、財政の問題が頭痛の種だった。研究会のテーマは財政問題だが、財政の最大のプレッシャーは社会保障分野で、財政健全化=社会保障の問題。これは今も同じだ。明確に社会保障の目的税としての消費税を打ち出し、それが社会保障の安定財源になると同時にプライマリーバランス(基礎的財政収支)の均衡回復に役立つことを検証しながら検討を進めた。明記はできなかったが、高齢者3経費(年金・介護・医療)と社会保障の機能強化で消費税率10%が透けて見える報告書をまとめた」

 ──その後、消費税率10%を提言した。

 「(その後の報告書で安定的な社会保障制度構築には)少なくとも消費税率10%への引き上げが必要との報告書をまとめた。しかし、リーマン・ショック後に前提となる税収が、(リーマン・ショック前の)50兆円台から37兆円まで落ち込み、プライマリーバランスを同時に回復させることを目的とすると10%はもう崩壊している。今日では、10%以上が必要、15%程度が必要という状況になってきている」

 ──社会保障の持続可能性を維持し、同時に財政再建を確保するには、15%程度は必要ということか。

 「今回はもう少し精緻(せいち)に考える必要がある。目的税にした場合の対象経費をどうとらえるかだ」

 ──子ども手当も対象とする考えか。

 「『子ども手当』というと、(民主党がマニフェストで打ち出した)あのタイプの子ども手当の財源になるので、その言葉は使いたくない。育児や若年者の雇用など、どの範囲で取り込むのか考えなければならない。そうした試算はまだできていない」

 ──6月の成案では、消費税率の上げ幅と時期を明記すべきと。

 「率については、プライマリーバランスの回復を考えるべきだ」

 「時期については、気合いの問題。デフレ克服の課題とこの財政再建・社会保障安定化をどうからませるのかは考え方がいくつかある。

 ひとつが、財政赤字が増えることには目をつぶって、デフレ克服のために財政・金融政策を出動し円安に誘導する。この3点セットを3年間行い、3年後に(引き上げを)スタートさせるという考え方。もうひとつが、デフレにあまり重荷にならないように小幅に、段階的に引き上げていく。そうすれば、かえってインフレ効果が生まれる。第3が、何年か先に5%ずつ引き上げる。しかしこれはデフレ効果がきつすぎ、経済が冷えきってしまう」

 「個人的には、2番目の選択肢が現実論として良いと思う。実施スケジュールの選択肢は考えられるが、決断するのは総理。総理が不退転の決意でやらざるを得ないことだ」

──デフレ下では増税は難しいとの認識か。

 「デフレ下でも、たとえば2%ずつ、1年おきに上げていくと、需要の強化に役立つ。デフレ対策にもなる」

 ──自民党は与野党協議には慎重だ。消費税の社会保障目的税化では一致しているが、安定財源を確保してバラマキと批判している子ども手当の財源となることを警戒する。増税しても財政再建につながらないリスクはないか。

 「そうならないような設計をする」

 ──消費税率は15%程度への引き上げが必要との認識か。

 「おおよそのメドとしてはそういうことだろう。ひとつは遅れたこと。リーマン・ショックで土台が下がったこと。この2つで5%近くのものが増えてしまった」

 ──格付け機関は政府の実行力を注視している。

 「その通り。諸外国と違って、(最悪の財政状況でも)危機だと言われないのは唯一、(消費税の)上げ幅に余裕があるということと、不確かだが、政府として取り組む姿勢が評価され、かろうじて一人前のレーティングになっている。しかし、財政赤字はほとんど『クレージー』なレベルに達している。悠長なことを言っていられない」

──最近の長期金利上昇の受け止めは。

 「米国の長期金利も上がり始めたので、米国が金融政策をどう運営するかにもよるだろう」

 ──自民党は「Xデープロジェクト」で、国債が暴落した場合の対処方針の検討を始めた。

 「その感覚の方が正しい。そのぐらい(財政状況は)緊迫した問題だ」 

 ──税・社会保障一体改革が実行されなければ、格付けは下がり、エコノミストはトリプル安を懸念する。

 「私が集中検討会議に参加するのは、自民党政権がもう一度(政権に)復帰するまで待っている時間的余裕はないと思ったから。この1点だ。政府は少なくともスケジュールを明確に打ち出すべきだ」

新興国から先進国への資金シフト継続、過剰流動性がUターン

[東京 10日 ロイター] 新興国から先進国への資金シフトが継続している。日米株は高値警戒感もあって利益確定売りが出ているが景気回復期待を背景に高値圏を維持。一方、新興国株はインフレ対応による金融引き締めを警戒し軟調な展開となっている。
 先進国の金利上昇傾向が強まっているが、米失業率は依然高過ぎるとしたバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の発言から、マーケットでは米量的緩和第2弾(QE2)がしばらく継続されるとの見方が多い。維持された過剰流動性はこれまで流入していた新興国から先進国へのUターンを強める見通しだ。

 <日米株は高値圏維持> 

 新興国株からの資金流出が続いている。中国の追加利上げの影響は限定的だったが、中国を除く主要なアジア株はいずれも前日に続き軟調な展開。南米でもブラジルのボベスパ株価指数は年初からの下落率が8.2%に達するなど年初からのパフォーマンスがさえない。

 高い成長率に支えられBRICsや他のアジア市場は、2008年の世界的金融危機以降も投資先として人気を集めていたが、最近の食料品などのインフレへの対応で金融引き締め姿勢を強めていることを懸念し、投資家が資金を引き揚げているためだ。

 トムソン・ロイター傘下の投信情報会社リッパーによると、2月2日までの1週間に新興国株式ファンドからの純資金流出額は41億ドルとなり過去最大を記録した。

 一方、日米など先進国経済は順調で株価も高値圏にある。米ダウと日経平均は高値警戒感もあって利益確定売りに押されているが、下げは小幅。前日の米市場では「フローで大きく利食いに来る向きは少なく、下落時の押し目買いは継続」(外資系証券トレーダー)とされ、新興国から先進国への資金シフトが継続しているとの声が出ていた。

 元メリルリンチの投資ストラテジスト、リチャード・バーンスタイン氏は8日、米国の中小企業株はBRICs株よりもはるかに高いリターンが見込めるとの見解を示した。2009年には米国経済や米国株に対してより悲観的だったバーンスタイン氏だがスタンスを一転、2年近く続く米国株の上昇は今後も続く余地があると述べた。「米経済は世界でも有数の改善をみせた。米小型株のグロースとバリューは、世界でも最大の成長ストーリーだ」という。

株式市場だけでなく債券市場でも米国回帰の傾向は強まっており、今週の四半期定例入札(クオータリー・リファンディング)の第2弾となった米10年債入札は、海外勢や大手機関投資家を含む間接入札者の比率が71.3%に達している。

 <バーナンキ証言で過剰流動性の維持予想>

 日米の株価を押し上げているのは景気回復期待であるが、実はそれを支えているのが新興国経済だ。

 1月の米ISM製造業景気指数が約7年ぶり高水準となるなど「米国の製造業は新興国経済の拡大を享受している」(T&Dアセットマネジメント・チーフエコノミストの神谷尚志氏)という。日本も新興国向けだけではなく、新興国向けが拡大し経済が堅調な米国向けにも輸出が増加するなどダブルメリットを享受、10年12月の輸出は前年比13%増と加速している。

 金融引き締め傾向が続き多少伸び率が鈍化したとしても、新興国経済は人口増などに支えられ成長が続くみられている。IMF(国際通貨基金)によると2011年の世界の経済成長率見通しは4.4%(2010年は5.0%)。先進国の2.5%(同3.0%)に対し新興市場国および途上国は6.5%(同7.1%)と新興国がけん引する構図は続く見通しだ。

 しかし、新興国にとってはインフレが悩みの種。インフレは新興国自体の内需拡大が主因とはいえ、先進国の金融緩和によって生み出された過剰流動性が商品市場などに入り込むことで加速させている面も大きい。その過剰流動性の大きな出どころである米量的緩和第2弾は、バーナンキ米FRB議長が9日、米国の景気回復は力強さを増している兆しが出ているものの、失業率は依然として高過ぎるとの認識を示したことで、市場ではしばらく続きそうだとの見方が強まっている。

 T&Dアセットマネジメントの神谷氏は「先進国のソブリン問題もいったん小康状態となっている。金融引き締めが続く新興国よりも金融緩和が維持されている先進国への投資を選択する方が無難だと投資家は判断している」と述べる。そのうえで、今月18─19日にパリで開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議で、先進国の金融緩和に対する新興国からの批判が強まるのかを注目しているという。

 <ドル円はしっかり、円債先物は小反発>
ドル/円は82円前半から82円半ばへとじりじり上昇。82円後半からの輸出企業の売りとの攻防になっている。米長期金利のレンジが切り上がったことがドル/円を押し上げているが、83円からは輸出企業の売りが厚みを増すため、上値には限度があるとみる声が多い。

 前日こそ米長期金利は低下したものの「レンジは上方シフトしている」(三菱東京UFJ銀行シニアアナリストの亀井純野氏)との見方は多い。米金利に比べたドル/円の出遅れ感から「上を攻めたい」(国内金融機関)として、ドルは輸出企業の売りが待ち構える82円後半に上値を伸ばしている。

 円債市場では、国債先物が小反発。米債高を受けて朝方は高寄りしたが、引けにかけて上げ幅を縮小した。市場では「中期ゾーンで売りが出ている。簿価で買いやすい来週の5年債入札に応札するため、銀行勢が調整的に売りを出しているのではないか」(外資系証券)との見方が出ているが、下値不安が広がるには至っていないという。

 バークレイズキャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジストは「場合によって今週で金利がトップ形成となる可能性があり、少なくとも、来週頃までの時間帯でピークアウトするがい然性が高まったのではないか」と話している。

ベトナムが通貨ドンを8.5%切り下げ、許容変動幅も1%に縮小

[ハノイ 11日 ロイター] ベトナム中央銀行は11日、通貨ドンVND=を8.5%切り下げると発表した。ドンの切り下げは昨年8月以来。過去3年近くで6度目となる。
 新たなドンの対米ドル基準値VND=SBVNは2万0693ドン。基準値は昨年8月以降、1万8932ドンに設定されていた。

 中銀はまた、ドンの対米ドル相場の許容変動幅を基準値の上下3%から1%に縮小することを発表した。

 ベトナムでは、ドンの公式レートと非公式(闇)レートVNDUNOFF=VNの格差の調整するための切り下げが広く予想されていた。

米JPモルガン:原油価格、政情不安が沈静化すれば「顕著な修正」へ

2月8日(ブルームバーグ):米JPモルガン・チェースは、北アフリカや中東で政情不安が緊迫化しないと原油価格が今週、下落する可能性があるため、既存の買い持ち高を売却することを検討すべきだとの見方を示した。

  エジプトの政情不安が中東の供給を中断させ、地域の情勢を不安定化させる懸念が強まり、ニューヨーク市場の原油先物は1月31日、2008年10月以来の高値に上昇したほか、ロンドン市場の北海ブレント原油は1バレル=100ドルを超える水準で取引された。

  JPモルガン・チェースは7日のリポートで、デモ行動が落ち着くことは相場に「顕著な修正」があることを意味するとの見方を示した。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、ヘッジファンドの原油の買い越しは過去8週間で最大の増加を示した。

  ローレンス・イーグルス氏(ニューヨーク在勤)率いるアナリストらはリポートで「新たに情勢が緊迫化することがなく、政治的な進展があると認識されれば、今週の原油は下げ相場になるだろう」と述べた。

  7日までの5営業日で原油価格は5%下落した。エジプトではムバラク大統領の退陣を求めるデモ行動が沈静化し、政府は反政府派の指導者たちと協議を行った。

  CFTCによると、原油相場上昇を見込むヘッジファンドなど大口投機家の買い越しは1日終了週に17%増加した。