2010年10月16日土曜日

PIMCOグロース氏:政府債保有を縮小、MBSを拡大

10月15日(ブルームバーグ):米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)で世界最大の債券ファンドを運用するビル・グロース氏は、9月に政府関連債の保有を減らした一方、住宅ローン担保証券(MBS)を増やした。

  PIMCOのウェブサイトによると、グロース氏が運用するトータル・リターン・ファンド(運用資産2520億ドル=20兆4900億円)は、9月の政府関連債の組み入れ比率が33%と、前月の36%から低下した。一方で、MBSの組み入れ比率は28%(前月21%)に上昇した。同社は組み入れ比率の月次変化に関して直接のコメントはしていない。

  PIMCOのウェブサイトによれば、同社の米政府関連債のカテゴリーには、通常の米国債とインフレ連動債、機関債、金利デリバティブ(金融派生商品)、米国債先物とオプション、米連邦預金保険公社(FDIC)が保証する銀行債が含まれる。

  グロース氏が政府関連債の保有を減らすのは3カ月連続。6月の保有比率は63%だった。

  ブルームバーグの集計データによると、トータル・リターン・ファンドの過去1年間のリターンはプラス11.81%と、同種のファンド74%よりも良かった。過去1カ月ではプラス1.83%で、同種のファンド83%を上回る成績だった。

2010年10月13日水曜日

「超円高」的中の若林氏:1年後にドル安パニック、日銀法は改正を

10月7日(ブルームバーグ):ドル・円相場が1ドル=79円75銭の戦後最安値(ドル安・円高)をつけた1995年4月の「超円高」を独自のチャート分析などに基づき予言した若林栄四氏は、2012年2月に74円前後まで下落すると予想した。巨額の米財政赤字を背景としたデフォルト(債務不履行)懸念による米長期金利上昇とドル安の「パニック」が今から1年後に始まるためだという。

  ニューヨーク在住で、東京の投資情報サービス会社、ワカバヤシ・エフエックス・アソシエイツの代表を務める若林氏(67)は都内でインタビューに応じ、来年前半は米国内外で景気減速懸念が後退し、株高・金利上昇に振れるが「恐ろしい局面は夏以降にやって来る」と指摘。景気回復を映した米長期金利上昇が巨額の財政赤字・累積債務の持続可能性に対する不安に転じ、10月ごろから「米国版ソブリン債パニック」に発展すると分析した。米債売り・ドル売りがドル・円相場にも波及し、4-5カ月後に74円前後の「歴史的な大底」をつけると予想した。

  米国の金融緩和観測と金利低下を受け、ドル・円相場は6日に一時、1ドル=82円77銭に下落。1995年5月以来の安値をつけた。菅直人内閣が9月15日、6年半ぶりに円売り介入を実施した水準を下抜けた。しかし、若林氏は短期的には「11月上旬までに、せいぜい81円程度」で下げ止まり、戦後最安値は更新しないと予想した。

           米国債バブル

  2年債と5年債の利回りが過去最低、10年債は2009年1月以来の水準まで低下(価格は上昇)した米国債相場は「完全なバブルだ」と指摘。米国経済が市場の懸念ほどは悪化せず、行き過ぎた金融緩和観測が11月初めの米連邦公開市場委員会(FOMC)や中間選挙の前後で後退する結果、米金利は「11月以降、上昇に転じる」と予想。ドル・円相場は「米長期金利の関数」であるため「来年前半にかけて、90円までは戻れないかもしれないが、いったん上昇する」と述べた。

  ドル・円相場の長期的な下落に関する若林氏の分析によると、第1の波はニクソン米大統領(当時)が1971年8月に金とドルの交換停止を発表し、12月のスミソニアン協定でドルが主要通貨に対して切り下げられるまでの360円から、78年10月の177円5銭まで。米カーター政権は翌11月、ドル防衛策を打ち出した。第2波は95年4月の戦後最安値79円75銭まで。最後の第3波が2012年2月ごろにつける74円前後だ。

  「相場は3段下げで終わる」と、若林氏は指摘。第2次世界大戦後の国際金融システムを取り決めたブレトン・ウッズ協定(1944年)の下で1ドル=360円体制が固まった49年に起源を持つドル安・円高は約62年間で終えんを迎えると予想した。

          26年までドル高・円安

  若林氏は、来秋からの米国売りは「実は間違ったパニックだ」とも主張。今春に財政危機に陥ったギリシャなどとは異なり、米国は日本と同様、民間部門が十分に大きく、政府部門を支えることができるためだと述べた。ドル・円相場がいったん大底をつけた後は「猛烈に戻る。100円など、すぐに超えてしまう」と予測。長期的には2026年まで、ドル高・円安基調が続くとの見通しを示した。

  ユーロについては、ドル安基調の一環で12年にかけては上昇すると予想。ただ、通貨同盟に必要な「政治統合を果たせず、20年ごろに空中分解するだろう」と述べた。中国の人民元は、日米欧の「民主主義国家と政治的な価値観を共有できない共産主義体制が、国際的な準備通貨になるための最大の障壁だ」と指摘。「経済の問題だけでは律しきれない」と語った。

        日銀は「最悪のパフォーマンス」

  若林氏は日本銀行は「日本が円高・デフレで20年も苦しんでいるのに、景気への配慮が乏しい」と批判。物価の安定だけではなく、米連邦準備制度理事会(FRB)と同様に「雇用の最大化も使命とするよう、日銀法を改正すべきだ」との見解も示した。

  若林氏は、日銀は「過去20年間のパフォーマンスが日本で最悪の公的機関。円高・デフレは日銀の無策・無能の証拠だ」と批判した。「金融緩和が受け身で後手に回りがちだ。優秀な人材を集め、スマートかもしれないが、ワイズではない」と述べた。

  こうした組織の体質は「日銀法に原因がある。FRBは物価と景気の両にらみだが、日銀は物価だけだ」と指摘。少子高齢化が進み潜在成長率が低いデフレ色の濃い国では「なおさら、ダブル・マンデート(使命)にしないとおかしい」と強調した。

  ドル・円相場が12年に下落局面に転じ、円安が日本経済の緩やかなインフレと景気回復、財政赤字懸念の後退という好循環に入る際には、日銀は「拙速な金融緩和解除といった余計な事を、お願いだからしないで欲しい」と語った。

  日銀は5日、追加緩和を実施。政策金利を0.1%から0-0.1%に変更し、物価の安定が展望できる情勢になるまで実質ゼロ金利政策を継続すると表明。長・短期国債やコマーシャルペーパー(CP)、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)などを買い入れるため、臨時に5兆円規模の基金創設を検討するとした。

  若林氏は66年、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。1987年から96年まで勧角証券(アメリカ)の執行副社長を務めた。ドル・円相場が140円前後だった90年代前半に「95年4月に1ドル=80円」と予測。79円75銭の戦後最安値を的中させた。その直後には一転、「10年後は1ドル=150円」と予想。時期こそ外れたが、98年には147円台に上昇した。

ファーバー氏:世界は重要な転機へ-金利は3カ月以内に上昇

10月12日(ブルームバーグ):著名投資家のマーク・ファーバー氏は、世界の市場は「重要な転換点」に向かっているとの認識を示した。金利が向こう約3カ月以内に上がり始めるほか、ドルが上昇するとみている。

ファーバー氏は12日、ソウルで開かれた会議で記者団に対し、各国政府が過度の通貨供給を続けているため、新たな「信用バブル」が発生する恐れがあるとして、投資家に株式を買い、債券を売るよう推奨した。

同氏は「金利は低下ではなく、上昇し始める可能性がある。ドルは下落ではなく上昇するだろう」と予想。「わたしはあらゆる投資先に対して極めて弱気になっているが、政府債よりは株式を有望視している」と語った。

主要6通貨に対するドル指数は7-9月期に8.5%安と、2002年6月以来の大幅安となった。バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が追加的な資金供給の可能性を示唆する中、今月も1.3%下落している。

ファーバー氏は、1987年のブラックマンデー(株価大暴落)の1週間前に株式の売りを推奨した。2007年8月には、米国株が弱気相場入りしつつあるとの見方を表明。S&P500種株価指数はその2カ月後にピークに達し、それ以降57%下落した。


【若林予想に同調する意見であることは考慮するに値する】

金の価格、年内に1400ドルへ上昇も-GFMSウォーカー氏

10月13日(ブルームバーグ):英貴金属調査会社GFMSのポール・ウォーカー最高経営責任者(CEO)は、金価格が高値を更新し、早ければ年内にも1トロイオンス当たり1400ドル程度まで上昇する可能性があるとみている。景気に対する世界的な不透明感やドル安、低金利などを背景に投資家による金価格の上昇期待が高まっているという。

  ウォーカー氏は13日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、金価格の今後の見通しについて「投資意欲がどれだけ旺盛であるかをわれわれは過小評価している」と指摘した上で、「小口投資家の金投資があれば1400ドルに達しても意外ではない」と述べた。

金の現物価格は今月7日に、1トロイオンス1364.77ドルまで上昇し、過去最高値を記録したが、ドルなどの代替投資先としての金の需要は根強く残っている。この日の午後5時21分現在の価格は前日比8.7ドル高の1359.05ドルで推移している。

  ウォーカー氏は同日、都内で開かれた講演会で、歴史的高値圏で推移する金相場について、「現状を維持するためには年間1000億ドルから1500億ドル程度の投資が必要」と指摘。ただ、ドル安や欧州のソブリン債危機などを理由に金市場へのマネーの流入がすぐに途切れることはないとみており、金相場が今後6カ月以内に1300ドルを下回ることはないという。

  金価格の上昇率は年初来で24%程度と、ニッケルを除く非鉄金属や株式、国債などを上回っている。

GFMS予想

  GFMSのまとめによると、10年の世界の金供給量は前年比2.6%増の4389トンとなる見通し。鉱山生産量が2637トンと2.4%増加するほか、中古金スクラップは1753トンと4.8%増える。一方、需要も2.6%増の4389トン。宝飾品など加工用が3.4%増の2499トンとなるほか、金塊退蔵は59%増の337トン、正味退蔵投資は7.6%増の1503トンに増加する。

  中央銀行など公的部門は「買い手」に転じる見通しだ。前年は純供給量が30トンあったが、今年は純購入量が15トンになるという。欧州の中央銀行の買いなどが影響する。

  ただ、ウォーカー氏は、「どのような基準に照らしても、欧州のほとんどの中央銀行では金の比重が超過しており、売り出しに出るところがいくつか出てくることになるだろう」と言い、来年か再来年には50-150トン程度の純売却量を示すとみている。半面、これらを資産のポートフォリオ形成のために金塊を求めている新興国が吸収していくという。