2011年3月5日土曜日

米金融当局、国債購入の6月終了を示唆-期間より規模を重視

3月4日(ブルームバーグ):連邦準備制度理事会(FRB)の当局者は、6月末に終了予定の第2次米国債購入計画(6000億ドル)の出口戦略について、第1次国債購入のときに取った段階的な終了ではなく、一気に終了させることが望ましいとの考えを示唆している。

アトランタ連銀のロックハート総裁は3日、記者団に対して、「段階的なアプローチに回帰したところで多くの利益があるとは思えない」と述べ、フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁も先月、段階的な撤廃は「必要ないと考えている」と述べている。

次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)は3月15日に開催される。ミラー・タバクのダン・グリーンハウス氏は、「これが金利上昇にも耐えられる自律的な回復であれば、米国債購入を終了したらいいだろう」と述べた上で、「しかし、今の米経済が、広範にわたる障害をもたらすことなくFRBの資産購入終了に耐えられるかどうかは心配だ」と述べた。

FRBは昨年11月、景気回復の押し上げと失業率の引き下げを目指し、6月末までに6000億ドルの国債購入計画を発表した。

米ニューヨーク連銀の市場部門責任者、ブライアン・サック氏を含めて、FRBのスタッフの中には、長期金利に影響を与えるのは購入のタイミングではなく、購入の規模だと指摘する。バーナンキFRB議長もこの考えの一人だ。

バーナンキ議長は1日、上院銀行住宅都市委員会で半期に一度の金融政策に関する証言を行った。その中で、「新規購入の流れよりも国債保有の合計規模のほうが金利の水準を左右する」と述べた。

米ライトソンICAPによると、米国債購入を実際に遂行しているニューヨーク連銀は、1カ月当たり800億ドル程度の国債を購入している。

利上げはまだ先か

ただ米国債購入計画の終了が、すぐに金融政策の引き締めを示唆するとは限らない。ブルームバーグ・ニュースが先月初めにまとめた民間エコノミストの予想によると、FOMCは2012年第1四半期まで事実上のゼロ金利を継続する。インフレ率がFOMCの目安となる2%を下回っているためだ。

総務省で「周波数オークション懇談会」、まずは論点整理から

総務省で2日、「周波数オークションに関する懇談会」第一回会合が開催された。昨年総務省で進められた会合の中で、オークション制度について検討すべきと示されたことを受け、今回議論の場が設けられた。3月~5月にかけて、事業者へのヒアリングなどを行い、6月に論点を整理して、その後、とりまとめに向けて、さらに議論が進められる見込み。

 冒頭、挨拶を行った平岡秀夫総務副大臣は、今回の会合が昨年12月にとりまとめられた「光の道」構想のタスクフォースによる基本方針の中で、周波数オークションについても議論を進めるとしたことにあるとして、「今年中に結論を得るとしており、その方針を踏まえて本会合が発足した」と述べた。

 政府が2015年頃を目処に全世帯でブロードバンド環境を利用できる環境の実現を目指す上で、ワイヤレスブロードバンドは重要な位置にあるとして、周波数オークションがその一助になるとしたほか、オークション制度について「新たな財源とする声もあるが、国民の共有財産である電波をいかに活用するか、そのためにオークションが必要ではないかという点を問題の根源として出発したい。政治的な判断が必要な場面では、政治家が政治的に判断したい。間違いない判断ができるよう、どのような課題・問題があり、どう考えられるのか、尽力をお願いしたい」と語った。

 本懇談会の座長は早稲田大学教授の三友仁志氏が、座長代理は上智大学教授の服部武氏が務める。

■ 周波数オークション、OECD諸国では日本は後発組
 周波数オークションは、携帯電話などで用いられる電波の帯域を割り当てる際、競売形式にして、より高い値付けをした事業者に割り当てるというもの。現在日本では「比較審査方式」を採用しており、複数の申請者が存在すれば優劣を比較して、より優れているほうを選定する。

 総務省が今回示した資料によれば、OECD(経済協力開発機構、経済的に発展した30カ国が加盟する国際機関)加盟国の多くで周波数オークション制度が導入済という。この資料では、チリやイスラエルなど、2009年以降にOECDに加盟した国の動向は不明となっているが、オークションを導入していないのは日本のほか、アイスランド、スロバキアで、制度はあるものの実際に事例がないのは韓国、フランス、スペイン、ハンガリー、ポーランド、ルクセンブルクとなっている。また、OECD加盟国以外では、インド、ブラジル、シンガポール、台湾でオークションが実施されているとのこと。

 海外の事例として、豊富な実績を持つ米国の状況も紹介された。米国では1981年以前は比較審査方式だったが、審査に時間をとられ、他の処理が進まない状況に陥ったことから無差別選択方式(くじ引き)を導入した。しかし、能力がない事業者、投機目的の事業者の存在が課題となり、1993年、周波数オークション制度が導入された。それ以来、75回のオークションが実施され、これまでの合計落札額は約8兆4000億円となっている。

 最も大規模かつ直近の事例としては、2008年に行われた、アナログテレビ跡地の帯域である700MHz帯のオークションが挙げられる。このときには、帯域をA~Eまでに分け、たとえばAの帯域(698~704MHz、728~734MHz、6MHz幅×2)は全国176エリアに、Dの帯域(758~763MHz、788~793MHz、5MHz幅×2)は全国で1エリアにして、競売にかけた。細かなエリアに分割された帯域は、中小事業者でも参入しやすくしたもので、より大まかに分けた帯域は全国展開する事業者の参入を念頭にしたものだった。帯域によっては「ユーザーが選択した端末やアプリを利用できるようにするオープンプラットフォームの帯域」「警察・消防など公共・安全ユーザーと民間で共用し、非常時には公共安全業務を優先する帯域」といった条件が付けられた。このオークションでにおける合計落札価格は約1兆8400億円(約190億ドル)にのぼった。

 このほかの国では、英国や米国において2000年に3G向け帯域が高額で落札されたことなどが紹介された。

■ 論点について
 第一回会合ということで、今後議題にすべき論点についての整理も行われた。総務省側から挙げられた論点案は以下の通り。


導入目的
払込金の法的性格
収入の使途
対象範囲
制度設計
二次取引(転売)
電波利用料制度との関係
免許制度との関係
その他(外国資本の位置付け)
 「導入目的」とは、そもそもなぜオークションを導入するのか、ということで、次いで「払込金の法的性格」は「事業者にとって新たな負担となる落札額を、なぜ支払わなければならないか」という理由をいかに考えるとか、ということになる。

 こうした総務省側の説明を踏まえ、懇談会構成員からも1人1人、差分となる部分や全体的な考え方が紹介された。なお構成員のうち、東芝研究開発センターの土井美和子氏、東京大学教授の森川博之氏は今回欠席している。

 日本総合研究所法務部長の大谷和子氏は、周波数オークション制度の目的について「誰のため、何のための議論かが最初の出発点。財源確保は副次的なものと考え、周波数割当の透明性確保が第一義になるべき」とした。また、これまで日本でオークション制度が取り入れられなかった理由、従来の電波利用料がその低コストを事業者がどう活かしたのかといった点を分析、検討すべきとした。

 大阪大学名誉教授の鬼木 甫氏は、周波数オークション制度の導入は、短期的にショックがあるものの長期的にメリットがあるとし、「いったん取り入れた国のうち、制度を辞めた国はないだろう。日本はOECD諸国では周波数オークション制度を最後発で採用することになるが、遅れているのは悪いことではなく、他の事例を学べる」と述べ、先に周波数オークション制度を導入した国々の事例を徹底的に研究すべきとした。

 上智大学教授の服部 武氏は、大谷氏と同じく周波数オークションの導入目的は免許手続きの透明性確保としたほか、電波利用料が干渉対策などの技術開発に有効活用されており、周波数オークション制度の導入で大幅に下がれば次の技術開発に向けた資源がなくなるため、電波利用料を確保した上でのオークション導入が重要とした。さらに周波数帯によってはより高い技術力が必要な場合もあることなどから、一律なオークション制度ではなく、ニーズの高い“プレミアムバンド”とその他の帯域に考慮した制度を求めた。また、技術開発を促進する制度の必要性も指摘し、自由化によって、事業者のやる気が削がれる状況に陥るリスクを避けるべきとした。

 電波利用料制度に関する総務省のワーキンググループにも参画していたという名古屋大学准教授の林 秀弥氏は、国民共有の財産である電波をいかに活用するか、という視点で周波数オークション制度について議論すべきとした。また、外国資本の参入についても懸念を示し、「米国では無線に関して外国資本の参入は厳しい規制がある。安全保障の視点かもしれないし、(オークション制度の議論の本筋に)付随的かもしれないが関心がある」とした。

 インターネット総合研究所代表取締役所長の藤原 洋氏は、通信量が過去10年で飛躍的に増大し、今後のインターネットはさらなる大容量化とワイヤレス化が進むと分析した。またフランスや韓国で、オークション制度が導入されているものの、実行には慎重とされるとした上で、その要因の分析が今後役立つとする。そうした他国の状況を踏まえ、日本が今後導入する周波数オークション制度は、世界の規範を目指した制度になれば、と述べていた。

 公共調達分野に携わるという野村総合研究所未来創発センター長の山田 澤明氏は、公共調達で示されている指針が周波数オークション制度の参考になる部分があるとする。1つは公平性や透明性を確保した上での事業者の選定、2つ目が安価なことだけではなく品質とコストのバランスを確保すること、3つ目がエンドユーザーが利用するときに高い満足度が得られること、4つ目がサプライサイド(供給者、オークション制度では入札者)も適正な収益を得て健全な発展ができることという。

 A.T.カーニー プリンシパルの吉川 尚宏氏は、台湾でのオークション制度導入にアドバイザーとして携わった経験があるとして、「周波数オークションは、よく不動産の定期借地権にたとえられるが、既に利用されている電波を早く他事業者に移行させるという手段として、免許更新時期を早める権利を入れる必要があるのではないか」とコメント。さらにオークションで入札する際、落札金額で競うのか、「その周波数利用で得た売上の何%を支払う」というパラメーターで競うのか、といった点も議論すべきとした。MVNOへの接続義務の有無、誰も使っていない帯域のオークションと、周波数再編時のオークションをどうするか、といった点も指摘した。

 このほか、現在国会に提出されている電波法改正案で、既に利用されている帯域の移行コスト負担でオークション制度の考え方を取り入れた制度を創設する、としている点については、既に決定した内容として本会合では議論の対象外となったが、今後説明が行われることとなった。

 今回、総務省側と構成員側から一定の論点が示された一方で、広く論点を募集することも本会合で承認され、近日、総務省から論点案そのものの募集開始が報道発表されることになった。



■ URL
 会合案内
 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/syuha/

2011年3月3日木曜日

世界の食料価格指数:2月は過去最高、乳製品などの値上がりで-国連

3月3日(ブルームバーグ):国連が3日発表した2月の世界の食料価格指数は、過去最高を更新した。乳製品や穀物、食肉の値上がりが影響した。

国連食糧農業機関(FAO)がウェブサイトで発表したところでは、食品原材料55種で構成する同指数は前月比2.2%上昇し236となった。8カ月連続で前月の水準を上回っている。1月は230.7だった。

FOAの通商・市場担当ディレクター、デービッド・ハラム氏(ローマ在勤)は発表資料で、「予想外の原油価格高騰が、既に不安定になっている食品市場の状況をさらに悪化させる恐れがある」と指摘。「このため価格見通しは一段と不透明感を増している」と付け加えた。

投資家ファーバー氏:アジアでは債券より株式魅力、日本株は長期で

3月3日(ブルームバーグ):ニューズレター「グルーム・ブーム・アンド・ドゥーム」の発行人で、著名投資家のマーク・ファーバー氏は3日、東京都内のホテルで開かれたCLSAのフォーラムで講演し、アジアでは債券の利回りより高い配当を受け取れる株式の方が「より魅力的だ」と語った。

日本株については、買う場合は長期で保有すべきとの見解を示唆。円相場は短期的に円高方向に向かうが、国債の利払い増加や財政赤字の拡大が「負担になってくる」とし、国債価格の下落を通じて長期的には円安になるとみて、株式に資金が流入すると予測する。

  ファーバー氏は「私なら今は、現金で持っていたり国債を買ったりしないで株を買う」と述べた。

  また同氏は、原油や金などの商品を魅力的な投資対象として挙げた。中東情勢については、現状の混乱が他国にも波及していき、原油の供給が先細る可能性を指摘。米国が通貨の供給を続けることでインフレが続けば、原油価格が現状よりさらに高い水準で推移するだろうとの見方を示した。

2011年3月2日水曜日

中国での金購入:今年に入って200トンに、最高値更新の一因-UBS

3月2日(ブルームバーグ):中国での金の購入量が1-2月に200トンに増加し、金相場の過去最高値更新の一因になったとの見方を、スイス最大の銀行UBSが示した。中国の人々がインフレに対する資産の防御手段として金購入を増やしたためとしている。

  UBSの世界商品ストラテジスト、ピーター・ヒックソン氏は1日の電話インタビューで「ここ数カ月の金の状況に関して興味深いのは、中国が大口の買い手であるという点だ」と指摘。「年初以降、約200トンの金が中国に購入されたと推計している」と述べた。UBSは昨年の数値は持っていなかった。

  中東での反政府行動の拡大やインフレ加速、通貨価値の低下を背景に投資家による価値保存のための購入が加速したため、金相場は1日に過去最高値の1オンス当たり1434.93ドルに達し、これに近い水準で取引されている。昨年は約30%上昇した。

  ヒックソン氏は「明らかに金は魅力的だ。市場がインフレやアフリカの政情不安を懸念すればするほど、安全性の高い投資先として金に注目する人が増える」とし、金相場は向こう半年以内に1オンス当たり1500ドルに上昇する可能性があるとの見方を示した。

中国:2010年産金量、前年比8.57%増の340.88トン-工業情報省

3月2日(ブルームバーグ):中国の2010年の産金量は前年比8.57%増の340.88トンとなった。工業情報省が2日、ウェブサイトで公表した。

NY金先物が最高値更新、1オンス=1437.20ドル

3月2日(ブルームバーグ):ニューヨーク商業取引所(NYMEX)COMEX部門の金先物4月限は一時、前日比0.4%高となり、1オンス=1437.20ドルの過去最高値を記録した。

2011年3月1日火曜日

COLUMN-〔ロイター為替コラム〕中東・北アフリカ情勢が有事のドル買いを引き出すのはこれから

 By Jeremy Boulton、Neal Kimberley
 [ロンドン 28日 ロイター] 中東・北アフリカ(MENA)地域の緊張に起因する質への逃避の動きは、米国債買いに反映されても、必ずしも米ドル押し上げにはつながらない。

 為替トレーダーはむしろ、MENA情勢で受ける影響が最も大きいのは米国で、したがって米国は事態収束に向けた国際的取り組みの先頭に立つに違いない、とみる傾向がある。1990年8月のイラクのクウェート侵攻では、それがよく表れた。ただ、今回は、米ドル買いを引き起こす可能性をはらむ重要な違いがある。

 1990年は、年末にかけ金とスイスフランが買われたが、これはドルが全般に売られるなかで起こった。それ以外にドイツマルクの上昇が最も顕著で、主要原油輸入国にもかかわらず円も買われた。
 為替市場は、MENA情勢が不安定になると米政府は国益の保護という観点から必ず、安定化に向けた外交、金融、そして必要なら軍事的にも主導的役割を担うとみていた。

 2011年に話を戻すと、当時と同じような要因が働いている。原油高が成長を脅かし、米金融緩和が維持されるとの見方から、ドルは対主要通貨バスケットで3カ月ぶりの低水準をつけた。

 安全性を求める為替投資家はスイスフラン、さらに円にシフトしている。

 今回、民主化圧力に直面しているMENAの政府は、多かれ少なかれ米政府とつながりがある。原油資源に乏しいバーレーンも、国内に米海軍の司令部があるという状況だ。

 イラクのクウェート侵攻は、多国籍軍の作戦により7カ月で終了、市場の不安を解いた。

 しかし、今回のように、民衆デモが市場を動揺させているとなると、政治的結果に対する不確実性がより大きいのは間違いない。市場の緊張は、広範囲なリスク回避の動きに発展し、トレーダーは米ドルなど流動性が最も高い安全資産に逃避する可能性がある。

 いまのところ、リスク回避ムードは限定的で、原油価格が少しでも下がるとリスクを取りに行く動きもみられる。

 トレーダーの中には、最近の下落はドルのロングポジションをとる機会とみている向きもいるようだ。

 ドル指数.DXYがそれを最も良く反映すると言えるが、取引の規模が少なく、流動性が高くない。指数に占めるウエートが58%以上のユーロをみてみると、ユーロ/ドルEUR=を現在の1.3800ドル台で売るのは強いリスク・リワード取引となり得る。

 ユーロ/ドルの2011年の高値は1.3858ドル(2月2日)、安値は1.2875ドル(1月10日)。1.4000ドルを上回る水準がストップとみられ、それを上抜けるとかなりのブルインパクトが生じる。

 MENA情勢緊迫化は、為替市場にリスク回避の高まりをもたらし得るが、株式市場も為替市場に影響を与えそうだ。

 勢いを失ったとはいえ、株式市場はいまだに買い優勢だ。株投資家を動揺させるのは、ダウ工業株30種.DJIが1万2000ドル割れ、日経平均.N225が1万円割れを起こした時だろう。
 それが起こった場合、投資資金はキャッシュに向かう可能性がある。米市場は最も高い流動性を持つことから、2008年の金融危機のように株式市場が下落に転じた場合に最大の恩恵を享受するはずだ。

 株式市場の下落を懸念するだけの理由はある。

 原油高は、世界成長の阻害要因である一方、すでに高まっているインフレ期待をさらに押し上げることが予想される。

 中東の緊張が長期化すればするほど、原油価格の高止まりも続き、成長やインフレへの影響も大きくなる。

 そうなると、ユーロ売り・ドル買いが利益をあげられるだろう。

 ユーロ/ドル弱気派が意識している、ユーロ安/ドル高につながる要因は株安以外にもある。その代表的なものはユーロ圏周辺国債券スプレッドの拡大だ。ユーロ圏の金利見通しやチャート分析上の強気サインを材料にしたユーロ/ドル上昇で無視されているが、こうしたネガティブ要因はユーロ・ロングが積み上がるにつれて、より重くのしかかってくるはずだ。米商品先物取引委員会(CFTC)の直近のIMM通貨先物の取組では、ユーロの買い越しが前週から40%以上増加した。

 中東、北アフリカ情勢不安によるリスク回避は、これまでのところドル押し上げに寄与していない。しかし、緊張の高まりに対するヘッジの根拠は十分ある。そうすることがユーロ圏周辺国問題に関するリスクヘッジになり、さらに維持不能な投機的リスクの高まりのリスクをヘッジすることにもなるだろう。

バフェット氏の手紙、市場の追い風となる可能性も

[ニューヨーク 27日 ロイター] 米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が26日、毎年恒例の株主への手紙の中で、米国内への投資を進める意向を示した。
 週明けの米国市場で注目を集めるとみられている。 

 バフェット氏は株主への手紙で、米国の経済や国民性を高く評価。市場関係者は、特にここ数年の手紙と比べ、驚くほど楽観論が目立つと指摘している。 

 バフェット氏は株主への手紙で「資金は常にチャンスの方に流れていく。米国には数多くのチャンスがある」と指摘。

 「悲観的な予測ばかりする人は、極めて重要な点、確かな点を見逃している。人類はまだまだ潜在能力を使い切っていない。潜在能力を解き放つ米国のシステムは健在であり有効だ」と述べた。

 バフェット氏は、住宅市場の回復が「およそ1年以内」に始まるとも予想。「米国の全盛期が待っている」とも指摘した。

 国内最大級の鉄道会社、保険会社、銀行、消費財メーカー、流通企業の株式を保有するバフェット氏が、今回の手紙で、米経済の将来に太鼓判を押したと受け止めることも可能だ。 

 <早すぎた予想>
 バフェット氏は2008年10月17日付のニューヨーク・タイムズ紙に寄稿し、「米国株を買っている」と表明。

 記事が出た前日のS&P総合500種指数終値は946.43で、その後1週間、同氏のコメントは株価の支援材料となった。

 ただ、寄稿のタイミングは完璧とは言えなかった。同指数はその後300ポイント下落、2009年3月に底を打った。 

 ただ、株価反転に対する懸念が広がる中でバフェット氏が明るい見方を示したのは、良い兆候だとの声も出ている。

 ハリス・プライベート・バンクのジャック・アブリン最高投資責任者は「特に米国への投資にとって、好材料となることは間違いない。手紙の中で触れている資金の規模に驚いた」と指摘。

 「週明けの株価上昇につながるかどうかは不明だが、バフェット氏は長期の投資家だ。人に先んじて動くことが多い」との見方を示した。 

 <大型買収を視野> 

 バフェット氏が、買収を通じて自力で株式市場を押し上げる可能性もある。

同氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイ(BRKa.N: 株価, 企業情報, レポート)は約80社を保有。保有株式の価値は数百億ドルに達する。

 出資先の企業は鉄道会社からアイスクリーム会社まで様々だが、出資先として一番良く知られ、投資規模が最大となっているのが保険事業だ。 

 同氏は今回の手紙で、保険以外の事業を拡大する必要があると指摘。「象撃ち銃は再装弾され、引き金を引く指がムズムズしている」とし、「大きな買収」が必要だと強調した。 

 同社の手元資金は380億ドル。不測の事態に備えて100億ドルを手元に残しても、巨額の買収が可能だ。 

 バークシャーの株主である資産運用会社YCMNETアドバイザーズのマイケル・ヨシカミ社長は「バフェット氏は大型買収を狙っているはずだ。バークシャーには巨額の現金収入がある。何か大きなことが起きると予想している」と述べた。

2011年2月27日日曜日

米下院予算委員長、政府機能の閉鎖求めず-短期間の予算延長の意向

【ワシントン】米下院予算委員会のポール・ライアン委員長(共和、ウィスコンシン州)は20日、予算案の膠着状態が続いているが、政府機能の閉鎖を目指すつもりはないと述べ、交渉を進めるため、共和党が短期間の暫定予算延長を求める意向を示した。 

 同委員長はCBSの「フェース・ザ・ネーション」番組で、「支出削減で交渉する一方で、短期的な延長を求めていくだろう」と語った。

 米国では、暫定予算の下で連邦政府を運営しているが、3月4日が期限切れ。共和党と民主党はその時までに妥協が成立しないと、別の短期的な支出措置が必要になり、さもなければ政府機能が閉鎖される。

  チャールズ・シューマー上院議員(民主、ニューヨーク州)は、共和党は民主党が提示している以上に大幅な予算削減を要求しており、政府機能の閉鎖の可能性を脅しに使っていると批判した。同議員はCNNの討論番組で「彼ら共和党は自分の道を貫くため、政府機能の閉鎖を利用しようとしているのだ」と述べた。 

 下院は19日、9月30日までの予算で現行支出水準から610億ドル削減する案を賛成235、反対189で可決した。裁量的支出額の削減としては過去最高となる。

   シューマー議員によれば、上院民主党はオバマ大統領の提案額に基づいた予算案から410億ドル削減する提案を出している。しかし共和党の予算案は大統領の提案から約1000億ドルの削減を求めており両党の間には約600億ドルの開きがある。

HSBCに再び「見誤り」リスク-アジアに軸足戻す時期は遅過ぎたか

2月25日(ブルームバーグ):英銀HSBCホールディングスのインド部門責任者、ナイナ・ラル・キドワイ氏は、同国で急増する中間所得層への融資を通じて利益を拡大する計画が頓挫した時のことを鮮明に覚えている。

  あれは2008年2月のことだった。負債で身動きが取れなくなった農業従事者の救済を図ろうと、シン首相が国内の銀行に農家向けの融資計150億ドル(約1兆2400億円)を帳消しにするよう突如命じたのだ。この債務免除に触発され、HSBCの顧客も含めたあらゆる社会階層の借り手が、強引なローン回収業者に対する政治家の批判の強まりにも乗じて、債務返済の責任を放棄し始めたのだという。

  キドワイ氏(53)の消費者向け部門は結局、08、09年の2年間で3億7400万ドルを失った。クレジットカード利用者と小口資金の借り手が支払いをやめたためで、同行インド部門の09年の利益はほぼ半減したと、ブルームバーグ・マーケッツ誌(4月号)は報じる。同氏は「突然、ローンを返済しなくてよくなったのだから、銀行業界全体が苦境に陥った」と、ニューデリーの中心部にある10階建てビルの1階にあるオフィスでコーラを飲みながら、当時を振り返った。

  HSBCは一見、アジアの急成長に伴う痛みには無縁に見える。同行は1865年に設立された香港上海銀行が母体。現在は中国に進出している海外金融機関の最大手であり、インドでも有数の規模を誇っている。さらなる成長を目指し新興市場重視の姿勢を取っているが、これまでに数々の挫折や規制のハードルに直面した。キドワイ氏がインドで経験した悪夢はその一例にすぎない。

           重要な20年間に回り道

  HSBCは、インドが海外投資家に経済を開放した90年代と、中国が経済大国へとのし上がった2000年代というこの重要な20年間、アジア以外に目が向いていた。同行は1993年に本社を香港からロンドンに移転。時価総額で欧州の銀行最大手となった。

  そして03年には、サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)を手掛けるハウスホールド・インターナショナルを155億ドルで買収し、米国に進出。これは後に悲惨な結果をもたらした。07年に米住宅市場が崩壊し始めると、HSBCは北米事業の損失引当金として580億ドル余りを計上する羽目となった。

  JPモルガン・チェースで日本を除くアジアの株式とアジアの銀行・金融サービスの調査責任者を務めるスニル・ガーグ氏は、HSBCが「過去10年間にわたる米国進出によって、アジアでのチャンスを逃した」と指摘する。

             難題の克服目指す

  このような回り道を経て、HSBCは現在、新興市場国で最も潜在的な魅力を秘めたインドと中国で、難題の克服に努めている。中国は単一の海外投資家による銀行の持ち分の上限を20%に規制し、インドは新たな支店の認可に消極的なことなど、事業の成長を阻む多くの規則が存在する。またインフレ進行も利益にはリスクだ。さらに米銀シティグループや英スタンダードチャータード銀行などとの競争で、ローン金利や投資サービスの委託手数料を一定以上に引き上げることができない。

  HSBCのマイケル・ゲーガン前最高経営責任者(CEO)はCEOを退任する少し前の昨年11月5日の電話会議で、「新興市場が改善の一途をたどるとの見方をすべきではない」と述べた。競争に加え、香港と中国の不動産価格上昇が難題の一部だとも指摘した。ただ、「新興市場の長期的なファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)には従来通りの魅力があると考えている」とも付け加えた。

  同行の取締役会は、投資銀行部門責任者だったスチュアート・ガリバー氏(52)をゲーガン氏(57)の後任に選んだ際、新興国重視を表明。ガリバー氏はCEO就任後直ちに、同行のアジアにおける歴史や87の国・地域に進出している実績を活かす戦略に立脚し、アジア優先の方針を打ち出した。

           投資家はアジア重視を歓迎

  投資家らはこの戦略を大歓迎。HSBCの株価は09年3月9日の304.1ペンスから、今月23日には696.8ペンスと2倍以上に上昇した。同行株はロンドンと香港で取引されているが、年内にも上海上場を果たしたい意向を幹部らは示している。

  米投資会社ナイト・ビンケ・アセット・マネジメントのマネジングディレクター、デービッド・トレンチャード氏(ロンドン在勤)は「われわれはHSBCのアジアへの動きを歓迎してきた。これは当社がずいぶん前から求めてきたことだ」と語った。

  HSBCは、キドワイ氏のインドでのリテールバンキングでの経験を教訓に、現在はアジア全域の富裕層をターゲットにしている。バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチとキャップジェミニが昨年6月に発表した調査によると、インド国内で投資可能な資産を100万ドル以上保有する人口は09年に51%増加し、12万6700人となった。中国の同人口も31%増の47万7400人となっている。HSBCは、10年までの4年間で中国の支店・店舗を3倍に増やし107カ所とした。また中国の銀行2行への出資も拡大している。

            富裕層顧客を呼び込む

  HSBCの中国事業の責任者、ヘレン・ウォン氏は同行が持つ世界的なバンカーのネットワークの利用を提案することで富裕層顧客を呼び込んでいる。同行は、昨年1-4月期に中国本土顧客のため米西海岸に4万口座を開設した。HSBCの香港タワーから徒歩わずか10分のパシフィック・プレイスには、スタイリッシュなファッションに身を包んだ男女がプラダなどのショッピングバッグを抱えて歩いている。香港では、クレジットカードで買い物をする中国人がますます増えている。

  だが、メディオバンカのアナリスト、クリストファー・ホイーラー氏(ロンドン在勤)は、香港の好景気について、いったんインフレの抑えが効かなくなるとHSBCの事業も鈍化させる可能性を示唆していると指摘する。同行のアジア太平洋地域責任者、ピーター・ウォン氏も、北京や広東など中国の都市での賃金や食品価格、不動産価格の上昇が最も懸念されると語った。

  HSBCは前回の大きな世界的なシフトの際、投資時期を見誤るというミスを犯した。サブプライム危機の前に住宅融資を手掛ける企業を買収し、多額の損失を被った。現在は再びアジアへと軸足を戻し、過熱している同地域に投資しているが、最終的には冷え込みを迎えるかもしれない。そうしたリスクに再び直面している恐れがある。

英銀HSBC:アジアで収益率低下に直面か、競争激化で-28日決算

2月25日(ブルームバーグ):アジア事業への依存の大きい英銀、HSBCホールディングスは同業のスタンダードチャータード銀行とともに、アジアでの収益率低下に直面しているとみられる。域内外の銀行との間で競争が激化しているためだ。

  金融危機で撤退を余儀なくされていたシティグループなどの米銀も、アジア事業を再強化している。HSBCとスタンダード銀にとって、収入と人材の双方での競争激化を意味する。さらに、中国工商銀行などの中国勢も国内市場での優位を手離すつもりはない。プライスウォーターハウスクーパースの概算によれば、中国での外国銀行の市場シェアは2%にすぎない。

  エクサンBNPパリバのアナリスト、イアン・ゴードン氏は「利ざや縮小の圧力がある」として、「アジアに戻りつつある他の外銀および中国本土の銀行は、攻勢を強めている。特に香港ではそうだ」として、HSBCなどに強い逆風が吹いていると指摘した。

  HSBCは28日朝に2010年通期決算を発表する。スタンダード銀の決算は3月2日。両行は100年以上にわたりアジアで事業展開している。昨年1-6月(上期)の利益でアジアの割合はHSBCが50%余り、スタンダード銀は約75%だった。

  ドイツ銀行のアナリスト、ジェーソン・ネイピア、デービッド・ロック両氏によれば、HSBCのネットの利ざやは2.83%と2.94%から低下、スタンダード銀は3.52%と3.76%から低下した見込み。

  2010年業績のアナリスト予想は以下の通り(単位は百万ドル)。



HSBC
純利益 13,912

税引き前利益 20,453

収入 69,274

不良債権引当金 14,063

スタンダード銀
純利益 4,220


税引き前利益 6,145


収入 15,894

不良債権引当金 988.5

米国債(25日):週間で5月以来の大幅高、リビア騒乱で

2月25日(ブルームバーグ):米国債市場では10年債が週間ベースで昨年5月以来の大幅高。リビア騒乱で安全を求める買いが入った。原油高が景気腰折れにつながるとの懸念が強まったことも買い材料。

  第4四半期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み、年率)改定値が予想を下回り、国債利回りは2日連続で低下した。株価が上昇し、スイス・フランが逃避需要の弱まりを映して下落したものの、30年債利回りは過去1カ月の最低水準に低下した。ニューヨーク連銀が72億ドル相当の2018年5月-21年2月償還債を購入したことも相場を支えた。

  ジャニー・モンゴメリー・スコットのチーフ債券ストラテジスト兼エコノミスト、ガイ・リーバス氏は「中東情勢というリスクがあるため、市場は売り持ちを敬遠している。週末で流動性は低下するがイベントリスクは低下せず、市場は逆をつかれるのを望んでいない」と指摘した。

  BGキャンター・マーケット・データによると、ニューヨーク時間午後5時5分現在、10年債利回りは4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01ポイント)低下の3.41%。10年債(表面利回り3.625%、償還2021年2月)価格は9/32高の101 24/32。利回りは週間では2010年5月21日以来で最大の17bp低下。

  S&P500種株価指数は1.1%上昇。ニューヨーク原油先物4月限は今週14%上昇。前日には1バレル=103.41ドルに上昇し、日中としては2008年9月日以来の高値をつけた。

 通常の10年債とインフレ連動国債(TIPS)10年物の利回り差は前日に2.44ポイントと、昨年4月以来で最大に拡大した。