2012年2月1日水曜日

利上げできない香港にハイパーインフレのリスク-ビンドラ氏

1月30日(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を2014年遅くまで低水準に維持すると表明したことで、香港でハイパーインフレのリスクが生じている-。英銀スタンダードチャータードのアジア部門最高経営責任者(CEO)を務めるジャスパル・ビンドラ氏がこうした見方を示した。

  同氏は27日、世界経済フォーラム(WEF)年次総会が開催されたスイスのダボスで記者団に対し、香港ドルが米ドルとのペッグ(連動)制を維持しているということは中国の経済成長が香港の景気を刺激し物価上昇を促しても、香港は利上げできないということを意味すると述べた。

  ビンドラ氏は「香港には極めて深刻な影響が及ぶ」と言明。「中国の影響で香港のインフレ率が6、7%強に達し、中国のおかげで香港の成長率が6、7%になるときに金利がゼロ付近なら、ハイパーインフレが起きることになるだろう」と指摘した。

  同氏とは対照的に、英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)とオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)は先週、アジアへの資本流入を加速させたとされる2010年の米金融緩和策と比べ域内の政策当局はそれほど懸念する必要ないとの認識を示している。欧州の債務危機が輸出を脅かし世界経済の見通しを暗くする中で、アジアの当局者は政策の焦点をインフレと資産バブルから経済成長に移しつつある。

日本国債バブル「18カ月以内に崩壊する」 米サブプライム危機を予見した男、「日本売り」公言

2012/1/29
日本の公的債務は間もなく1000兆円を超える見通しで、財政問題はのっぴきならない状況にある。欧州を揺るがす債務危機が日本に波及するリスクはないのか。「日本売り」を公言する米有力ヘッジファンドヘイマン・キャピタル・マネジメントの創業者、カイル・バス氏に日経ヴェリタスが聞いた。
──日本国債に以前から警告を発しています。  「過去20年間を振り返ってみましょう。この間、日本では名目国内総生産(GDP)が減り、株価はピークから8割下げました。住宅価格も7割の下落です。そんななかで、唯一価値を失わなかったものがあります。日本国債です。長期金利は低下(価格は上昇)を続け、日本国債は最も運用成績の良い金融資産だったのです」  「私が住む米国でも、ほぼすべての人が絶対に下がらないと信じ込んでいた資産がありました。住宅です。しかし、米国の住宅市場のバブルは崩壊しました。果たして日本国債の安全神話はずっと有効なのでしょうか。答えは明らかにノーでしょう」 ■深刻な構造変化 14年に経常赤字か  ──いつ日本の危機が顕在化するとみていますか。  「私は国債バブルの崩壊が今後18カ月以内に起きるとにらんでいます。詳しいことはお話しできません。しかし、日本の長期金利の上昇と為替の円安に備えたポジションをすでにとっています」  「日本の公的債務はGDPの229%と世界で最悪です。2011年度の税収はざっと41兆円。これに対し国債の利払いが11兆円にも達しています」  「(私の試算では)金利が今の水準より1%上がるだけで、10兆円規模の利払い負担が増える計算になります。これが2%の上昇となれば、計算上は日本の財政が持続できなくなり、実質的に破綻することもあり得ます」  ──日本の国債バブルの崩壊はずっと言われてきたことでもあります。なぜ、今なのでしょうか。
「これまでにない深刻な構造変化が起きているからです。震災後の原発停止で割高な液化天然ガス(LNG)の輸入が急増し、日本は昨年、31年ぶりに貿易赤字になりました。今年も状況の好転は期待しにくいでしょう。自動車や電機などの製造業は拠点をアジアに移しています。生き残りを賭けた企業の動きは、もう後戻りできません。私は14年半ばに日本が経常収支でも赤字になるとみています」  
「12年度に財政赤字のGDP比は約10%まで上がるでしょう。日本の人口は過去3年半で290万人も減りました。少子高齢化もいよいよ深刻になっています」
──財政の立て直しに向けた日本政府の取り組みはどうですか。  「日本の政治には大きな問題があります。増税を打ち出した首相はみな強烈な反対にあい、退陣を迫られる事態を繰り返してきました。野田政権は消費税の引き上げの方針を明確にした昨年12月、支持率が一気に下がりました。増税が実現する可能性は低いと言わざるを得ません」
■日本の当局者も危機を覚悟
「日本の財政が持続可能でないのは明らかです。この間訪日した時に、日本人も同じ問題意識を持っていました。例えば、ある日本の当局者に『ギリシャの債務不履行(デフォルト)があったとして日本はどうなるか』と聞かれ、『遅くとも2、3年で同じ危機が起きますよ』と言うと、『いやそんなことはない。5~7年は大丈夫だ』と言われました。つまり時期はともかく、日本の関係者もいずれ本格的な危機に直面せざるを得ないと思っているのです」  ──日本政府の12年度予算案に対しても、ずいぶん厳しい見方をしているようですね。  「これほどの茶番はありません。社会保障費は一般会計ベースで約26兆3900億円と前年度から8%減っていました。一般会計の総額も90.3兆円と前年度を下回り、一見すると立派な予算案です。ただこれには看過できないトリックがありました」
──どういう意味でしょう。 「過去も大丈夫だったから、当面は何とかなるだろう」という心理に警告を発するカイル・バス氏 「一般会計から切り離し、『年金交付国債』なる耳慣れないものが登場していたのです。これは基礎年金の国庫負担分2.6兆円を、将来の消費税増税で償還して穴埋めする仕組みです。まだこの世に存在せず、実現する保証もない増税をあてにして交付国債を発行する。こんなことが許されていいのでしょうか」
■公的債務と民間資産を同列にとらえるな
「米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは新規国債発行額を約44兆円に抑えたという日本政府の主張はナンセンスだと断じました。当然でしょう。特別会計で別枠扱いした交付国債や震災復興債を合わせると総額は約50兆円に達し、財政赤字のGDP比は10%を超えるのです。見かけをとり繕ってやりすごそうとする日本政府に、もはや何の信認もありません」
──ただ日本には1400兆円の個人金融資産があり、日本国債の投資家も9割以上が国内で占められています。
 「よく聞く話です。まず、日本が抱える公的債務と民間の資産を同列にとらえるのはやめるべきでしょう。日本人がいつまでも国債に投資し続ける保証はどこにもありません。個人が銀行に預金し、銀行がそのお金を日本国債に投資する流れがずっと続いてきました。しかし加速する高齢化は預金の引き出しを招き、金利の低下を支えてきたこの循環は断ち切られることになるでしょう」
──国債市場の危機はどのように到来すると予想しますか。  「今の市場が均衡を保っているのは極めて心理的な要素に基づいていると思います。『過去も大丈夫だったから、当面は何とかなるだろう』という心理です。しかし金利上昇は、ある日突然起きるものです。ギリシャがそうでした。国債入札の札割れといった深刻なイベントが何も起きなかったのに、唐突に金利が上がり始め、一気に欧州危機が訪れました。人々の物の見方は一瞬にして変わります。日本だけが例外でいられる理由はありません」
──日本の投資家はどうすべきだと思いますか。  「国債市場が崩壊すれば金利が急上昇し、預金をしていた一般の人々が最も大きな損失を被ります。私ができるアドバイスは、円資産をできるだけ手放した方がいいということです」  「これからは、自律的な経済成長が可能で、金融の膨張や信用創造に頼ってこなかった国に投資すべきです。生産性の高さや若い労働者がいる人口構成も重要な要素です。条件に合致するのはカナダやノルウェー、豪州、インドネシア、インドなどでしょう」
■先進国の信用創造 明らかに過剰
──欧米など先進国はどうですか。  「借金が膨れあがった国は投資に値しません。02年から10年にかけて政府や民間を合計した世界の債務は年率で11%増えてきました。これに対し、世界のGDPの伸び率は平均で4%前後にとどまります。実体経済の規模に比べ信用創造が明らかに過剰だったわけです。これがもう限界に来ています。特に厳しい状況にあるのが日本や欧州、米国などの先進国です」
──欧州の債務問題をどうみていますか。  
「ギリシャでは債務減免交渉が長引いています。仮に民間債権者が元本を50%程度減額することで合意できても、同国のデフォルトは避けられないでしょう。その程度の債務削減ではギリシャの財政再建は期待できません」  「欧州中央銀行(ECB)が流動性の供給で何とか欧州危機を食い止めようとしていますが、イタリアなど南欧諸国では預金の流出に歯止めがかかりません。12年中に、ギリシャからポルトガルにまで波及する連鎖的なデフォルトが起きる可能性は高いとみています」
──これまで米住宅バブルの崩壊や欧州の債務危機を予見してきました。投資家として心がけていることはありますか。  「世の中で正しいと思われていることを、そのまま受け入れないということです。自分の力で考えて、常に論理的であろうとすること。我々はこれまで、中央銀行のバンカーたちが提示する世界観を受け入れるよう求められてきました。まるで彼らだけが真実の箱の中身が何かを知っているかのように。その彼らは今、無制限にお金を刷り、経済の安定を何とか保とうと躍起になっています。しかし、この経済政策に限界が来ているのは明らかです。もはや、国家を信用することはできません。自らの力で考え、生き残っていかなければならない時代が来ているのです」

インドネシアが原油輸出停止を検討、輸出先に日本も

[ジャカルタ 26日 ロイター] インドネシアは国内需要の高まりを受け、原油輸出の停止を検討している。副エネルギー相が26日、明らかにした。ただ、停止する時期は示さなかった。

インドネシアは原油を主にオーストラリア、中国、日本、韓国に輸出している。中銀の最新の統計によると10月の輸出量は日量約47万7000バレル。インドネシアが輸出を停止した場合、アジア地域の原油需給がひっ迫する恐れがある。

副エネルギー相は記者団に対し「インドネシアは基本的に輸出より国内需要を優先する。需要が増大し、生産が減少していることから、原油輸出の停止を検討している」と述べた。

バーナンキ米FRB議長の会見要旨

[ワシントン 25日 ロイター] バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は25日、連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見を行った。 発言内容は以下の通り。
<バランスシートの拡大>

バランシートの拡大が今も1つの選択肢であることは間違いない。特に完全雇用に向けた動きが不十分になった場合や、インフレ率が極めて低い状態が続いた場合、非常に真剣に検討する。したがって、引き続き検討していくことになる。

<インフレ目標と雇用の関係>

われわれは絶対主義者ではない。雇用改善のために、インフレ率の目標達成を少し遅らせることが必要であれば、積極的にそうする。

<追加刺激策の実施>

インフレが目標を下回り、失業率の改善ペースが極めて緩慢な状況が続いた場合、われわれの枠組み、枠組みに関する論理は、一段の措置を検討すべきであることを示している。

インフレ目標とできる限り迅速な景気回復の支援を達成する政策を採用する必要がある。

そのためわれわれの枠組みについて説明することには利点がある。なぜなら景気回復とインフレ正常化のペースが改善しない場合、追加刺激策を実施する方策について検討する必要性をわれわれの枠組みが明確に示すからだ。
<モーゲージ元本の減免>

元本減免は、どういった構造で行うかに左右されるが、返済延滞を減らすには有用な可能性があるとみられる。

ただ、同時にある程度の難点が伴う可能性がある。その1つは、米国内に約7000億ドルという巨額のネガティブ・エクイティがあり、全ての国民を赤字から守るプログラムは想像できないという事実だ。

200億、250億ドルあるいは、どのような規模が減免の対象になろうとも、できるだけ多くの国民を支援でき、コスト効率が最も優れた方法は何かということが問題になると思う。この問題については、依然協議が続いている。

<住宅市場>

住宅セクターのぜい弱さは、景気がより力強く回復していない重大な原因だ。また住宅金融の問題は、金融政策がより強力ではない理由の1つだ。なぜなら波及メカニズムの一部は借り換えに影響を与える低金利を通じて行われるためだ。これは(借り換えだけでなく)住宅販売・購入にも影響する。

これに加え、われわれは銀行監督当局として、サービシング、ローンの条件変更、支払い延滞など住宅ローン融資のあらゆる要素に多大な関心を抱いている。

<経済見通し>
国際金融市場の緊張が、引き続き経済見通しに対する著しい下方リスクとなっている。

消費者および企業信頼感の改善、金融市場の持ち直し、極めて緩和的な金融政策スタンスの継続とあわせ、経済活動は今後緩やかに加速する見通しだ。

<雇用>

最近発表されている多くの指標は、全般的な雇用状況における一段の回復を示しているが、失業率は高止まりしている。FOMCは景気回復が緩やかなペースになるとの予想を踏まえ、失業率は今後数四半期で、FRBの責務と一致する水準に向かって緩やかにしか低下しないと予想する。

<資産売却>

2014年終盤まで超低金利政策の解除時期見通しを先延ばししたことは、バランスシート上にある資産の売却開始時期が従来予想よりも後ずれし、おそらく2015年になることを示唆している。そのためわれわれは、より長期にわたりバランスシートを高水準に維持すると見込んでいる。

<自然失業率>

大規模な長期失業で一部労働者の技術が失われることや、労働人口から外れる可能性をわれわれは懸念している。少なくとも当面はこのような理由から、自然失業率は押し上げられる公算が大きい。
この方向に作用する要因は複数あるが、いずれにしても、正確にどの水準が自然失業率なのかということについて、強い不透明性があることは確かだ。その一方で、8.5%という水準は明らかに、あらゆる推定値を優に上回っていると思われ、従ってわれわれは引き続き、労働市場は明確に活気のない状態であると考えている。

<最近の指標>

昨年第4・四半期や最近発表された指標で確認されている勢いが2012年も継続することを望んでいるが、引き続き状況を注視していく。現時点で、米経済が力強い新局面に入ったと宣言する用意はできてない。

われわれは引き続き、保有するポートフォリオ、保有証券を見直していく。景気回復が腰折れした場合や、インフレ率が目標に向かわない場合、その方向で追加措置を講じる用意はできている。これは明らかに検討されている選択肢だ。(決定をめぐり)明言することは時期尚早だが、この選択肢を見極め、状況によって正当化されれば、利用するかどうかを判断する。

<インフレと雇用>

インフレが長期間、目標を下回る水準にとどまり、失業状況の進展が極めて遅い場合、追加の政策措置が妥当かどうかが暗黙の問題となる。引き続き状況を見守りたいが、実際にこうした不本意な状況に陥った場合、われわれは当然、経済を支援するさまざまな手段を検討する用意がある。

<インフレ目標>

米連邦公開市場委員会(FOMC)は、個人消費支出(PCE)価格指数の年間変化率で2%とするインフレ率が、連邦準備理事会(FRB)の法的責務と一層長期的に最も整合がとれると判断した。
時間の経過とともに、インフレ率が上昇すれば、一段と長期的な経済・金融に関する決定を正確に行う国民の能力は低下する。一方で、インフレ率の低下は、デフレに陥る高い確率と関連づけられる。

国民に、この2%の長期的インフレ目標を明確に伝えることは、物価安定の実現および長期金利を穏やかな水準に維持することに寄与するとともに、経済が大きな不安定に見舞われた際の雇用最大化を促進する上でのFOMCの能力を強化する。雇用最大化は、金融政策の目標として物価安定と同等の地位にある。

<成長見通し>

最近の指標は、世界的な経済成長の一部減速にもかかわらず、経済が緩やかに拡大してきたことを示している。住宅市場の低迷や、家計・中小企業向けの与信が依然タイトな状況となっていることを反映し、経済成長が今後数四半期、緩やかなペースになるとFOMCは予想する。

FOMC参加者は、2012年の実質国内総生産(GDP)伸び率が2.2─2.7%との見通しを示した。世界的な金融市場の緊張は引き続き、見通しへの著しい下方リスクとなっている。

ルービニ氏:中国経済は今年「かなり減速」-利下げ、融資規制緩和

1月20日(ブルームバーグ):中国経済は2012年に減速し、政策当局は利下げと融資規制の緩和に動くことになる。08年の金融危機を正確に予測したことで知られるヌリエル・ルービニ氏が指摘した。
  ルービニ氏は20日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「中国の経済成長は今年、かなり減速する」と述べ、「住宅部門は収縮傾向となり、輸出の伸びも鈍化する。政府当局が金融・財政面で何らかの刺激策を打ち出さなければ、成長率は8%を相当下回るリスクがある」との見方を示した。
  中国の国内総生産(GDP)は昨年9.2%成長と、02年以来の低水準に並んだ。住宅市場が鈍化したことに加え、欧州債務危機の影響で輸出が不振だった。中国人民銀行(中央銀行)は先月、3年ぶりとなる預金準備率の引き下げを実施。事情に詳しい複数の関係者が今週明らかにしたところによると、人民銀は国内大手銀行5行に対し1-3月(第1四半期)の融資拡大を認めた。
  ルービニ氏は、世界2位の経済大国である中国が今年「経済の活性化」に向け、1-6月(上期)に追加の預金準備率引き下げを行い、08年以来となる利下げを行うと予想。中国は今年、中央政府のトップ交代を控えており、成長率が8%を下回れば「政治的雑音」が生じることになると同氏は指摘した。
  米ニューヨーク大学教授であるルービニ氏は、06年にピークに達する前に同国住宅市場のバブルを指摘したものの、09年の世界的な株価の戻りを予想することはできなかった。

2012年1月29日日曜日

ルービニ氏:ギリシャ12カ月以内にユーロ圏離脱-ポルトガルも追随か

1月28日(ブルームバーグ):ルービニ・グローバル・エコノミクスの共同創設者、ヌリエル・ルービニ氏は、ギリシャが恐らく今後12カ月以内にユーロ圏を離脱せざるを得ないだろうとの見方を明らかにした。

  同氏はスイスのダボスで、「ユーロ圏は緩やかな列車事故のようだ。ギリシャだけでなく、他国も支払い不能だ」と指摘。「すべての国がユーロ圏にとどまることはできない。ギリシャと多分ポルトガルもユーロ圏を離れる可能性がある。ギリシャは今後12カ月以内。ポルトガルはもう少し時間があるかもしれない。今後3-5年にユーロ圏が崩れる可能性は50%だ」と述べた。