2011年1月1日土曜日

エストニア:11年からユーロ導入、旧ソ連圏から初-計17カ国に

12月31日(ブルームバーグ):エストニアは2011年1月1日に、旧ソ連諸国として初めてユーロを導入する。ソブリン債危機が欧州を揺るがした影響でユーロ圏拡大は一時的に制限される見通しだ。

  ラトビアとロシアに挟まれ、バルト海に面したエストニアは1日午前零時に同国通貨をユーロに切り替え、17カ国目のユーロ導入国となる。同国の国内総生産(GDP)は140億ユーロ(約1兆5230億円)で、ユーロ圏ではマルタに次ぎ2番目に経済規模が小さい。

  欧州諸国が財政危機に取り組む中、今後数年でユーロ圏に加盟するのはエストニアが最後となる公算が大きい。次の加盟候補国であるリトアニアとラトビアは2014年の加盟を目指しているほか、他の東欧諸国は目標時期の設定を先送りした。

  エストニア中央銀行のリプストク総裁は欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーとなり、1月13日にフランクフルトで開催される金融政策決定会合から参加する。

米トウモロコシと大豆先物:2年4カ月ぶり高値-南米の天候懸念で

12月28日(ブルームバーグ):シカゴ商品取引所(CBOT)では28日、トウモロコシと大豆先物相場がともに上昇し、一時2年4カ月ぶりの高値を付けた。両穀物の輸出で米国に次ぐアルゼンチンとブラジルで、天候懸念が高まっている。

  米民間気象予報会社のTストーム・ウェザーは28日付のリポートで、アルゼンチンの一部地域では38度を超える気温と乾燥で、トウモロコシの作付けに支障が出るとともに大豆の生育が遅れると予想。ブラジルについては、南部が一段と乾燥する一方、北部では大雨で一部の農場に被害が出る恐れがあると指摘した。

  アドバンテージ・トレーダーズ・グループ(シカゴ)の穀物ブローカー、ダグ・バーグマン氏は「南米の生産をめぐる懸念が高まりつつある」と述べた上で、世界供給が減少する中、穀物相場は上昇していると指摘した。

  CBOTのトウモロコシ先物相場2011年3月限は、前日比8セント(1.3%)高の1ブッシェル当たり6.2325ドルで終了。一時は6.2425ドルと、中心限月ベースで08年8月以来の高値を付けた。10-12月(第4四半期)は26%上げている。

  大豆先物11年3月限終値は2.5セント(0.2%)高の1ブッシェル当たり13.87ドル。一時は13.9675ドルと08年8月以来の高値に達した。米国産大豆に対する中国の記録的な需要を受け、第4四半期の上昇率は中心限月ベースで25%となっている。

フィデリティが11年日本株読む、「金融など割安」「自動化の恩恵」

1月1日(ブルームバーグ):米運用会社のフィデリティ・インベストメント・マネジャーズのポートフォリオ・マネジャーで、「フィデリティ・日本・アジア成長株投信」を運用するデイル・ニコルス氏は、2011年相場に向け日本株の現状を「ほかのアジア市場と比べ、バリュエーションは間違いなく割安」と受け止めている。

  同社が昨年12月に公表した資料によると、ニコルス氏は、日本株への市場のセンチメントが弱いことは、「割安銘柄を物色する上では良いタイミング」とし、バリュエーションからは特に金融、不動産セクターに魅力を感じるとした。不動産株については、「多くは潤沢な安定したキャッシュフローがあるにもかかわらず、株価はこれを過小評価している」という。

  バリュエーションが割安に放置されている要因の1つとして、ニコルス氏は日本企業の配当政策を挙げた。「配当水準を引き上げる潜在能力を持つ企業は多く、こうした企業が配当重視政策に転じれば、日本株市場へのインパクトは計り知れない」と述べた。東証1部の配当利回りは12月末現在1.8%で、3-5%の欧州や2%前後の米国を下回る。

  一方、中国などアジアでは今後、人口増加や所得増によって中間層が拡大するため、力強い個人消費とインフラ投資需要が今後5年、10 年と持続すると予想。「日本企業もテクノロジー、機械、自動車部品の各セクターは中国向け輸出で恩恵を受ける」と指摘した。

フィデリティがHP上で開示する週次レポートによると、同氏が運用する「日本・アジア成長株投信」は12月17日時点の過去1年の投資リターンがプラス21%と、運用成績の指標であるベンチマークのMSCI ACパシフィック・インデックスの7.8%を大きく上回る。

  11月末時点のポートフォリオでは日本株が31%を占め、組み入れ上位銘柄は、ノンバンク大手オリックス、情報通信のソフトバンク、不動産投資信託(REIT)のケネディクス不動産投資法人、そして保険大手のMS&ADインシュアランスグループホールディングス。

工場での自動化投資、安全性がキーワード

  一方、「フィデリティ・日本小型株・ファンド」の運用を担当する檜垣慎司ポートフォリオ・マネジャーは、「日本経済は世界の景気サイクルと連動している側面が強いため、海外経済の安定が見込まれる11年は日本の景気にも明るさが広がる」との見方を示す。

  檜垣氏によれば、10年度もしくは11年度に史上最高益を更新すると見込まれる企業は、全上場企業の約6分の1に当たる600社余り。これは、08年のリーマン・ショック後の世界的な経済危機に対応した「合理化努力のたまもので、同時に魅力的な新製品の開発や新たな販売市場の開拓、M&Aによる海外展開など、積極的な施策によって現状を打破しようという経営戦略の成果」という。

  成長分野として同氏が注目するのが、工場での自動化投資だ。特に中国でこうした需要が急拡大している。「製品の品質維持、向上のための機械化投資も始まっており、これにこたえる機械設備や部品は日本企業が最も得意とする分野」でもある。

  「安全性もキーワードの1つ」と檜垣氏。中国やインドなど新興国ではモータリゼーションが加速するが、自動車関連分野で今後普及が加速するのはシートベルトやエアバッグといった安全製品。安全製品メーカーは、新興国での自動車生産の拡大以上に売り上げを伸ばすと予想している。

  少子高齢化で需要が伸びないと言われる国内分野でも、技術革新やライフスタイルの変化で成長しているものもあり、「インターネットはその代表例。これをどう活用し、それにより仕事の方法や生活がどう変わるかを考えると、まだまだ発展余地は大きい」と同氏は話していた。

  「日本小型株ファンド」の月報によると、10月末の組み入れ上位銘柄は、シートベルトなどの自動車安全部品を手がけるタカタ、医療関連情報を提供するエムスリー、住宅関連事業を展開する積水化学工業。11月末時点の過去1年間の投資リターンはプラス6.5%で、ベンチマークのラッセル/ノムラ・ミッド・スモールキャップ・インデックスの4.6%を上回っている。

NY金(31日):終値として最高値―通年でも10年連続高

12月31日(ブルームバーグ):ニューヨーク金先物相場は、オンス当たり1421.40ドルで取引を終了した。終値としては最高値。通年では10年連続上昇。増大するソブリン債危機を背景に、質への逃避としての金買いが優勢だった。

年初来からの上昇率は30%。12月7日には最高値の1オンス=1432.50ドルを記録した。

ミダス・マネジメント(ニューヨーク)のトム・ウィンミル社長は、「今年の金相場のパフォーマンスはとても素晴らしかった。政府の活動が、過去最大の財政赤字や低金利、財政規律の欠如を示唆しているからだ」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)COMEX部門の金先物2月限は、前日比で15.50ドル(1.1%)上昇した。

2010年12月26日日曜日

米SEC、中国企業の米証券取引所上場を調査=報道

[21日 ロイター] 米証券取引委員会(SEC)が逆買収を通じて米国の証券取引所に上場する中国企業に対する調査を開始した。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が関係者の話として報じた。
 同紙によると、今回の調査は何百もの中国企業が米国のペーパーカンパニーとの合併によって米市場に上場するという流れを受けて実施されている。

 SECは米国の会計事務所、銀行、法律事務所がどのような方法で合併をサポートしたかについて調査を開始した。また過去に発表した調査件数を上回る数の個別中国企業を対象に、違法な会計処理、監査慣行に関しても調査に着手している。

 SECのコメントは得られなかった。

 12月2日には中国のクリーンテクノロジー企業、リノ・インターナショナルRINO.PKが会計処理に関する申し立てに対し、十分な情報を提供できなかったことから、ナスダックの上場廃止処分を受けたと発表している。

英クリスティーズ:今年の売上高、過去最高の約4160億円-暫定集計

12月21日(ブルームバーグ):英クリスティーズ・インターナショナルは今年、美術品などの収集品で過去最高となる32億ポンド(約4160億円)相当の売り上げを記録した。同社が21日、暫定集計を発表した。

世界的な競売や非公開の取引などを含む売上高総額は、2007年に記録した従来の年間最高額(31億ポンド)を突破した。昨年の21億ポンドからは52%増えた。クリスティーズはフランスの資産家フランソワ・ピノー氏が所有する。

スペインの画家パブロ・ピカソが1932年に描いた絵画「ヌード、観葉植物と胸像」がニューヨークでの5月の競売で、美術品競売としては過去最高額となる1億650万ドル(約90億円)で売れたことなど、目玉となる収集品の競売が寄与した。

香港での需要も急増。11月29日には14.23カラットのピンク色のダイヤモンドが1億7990万香港ドル(約19億円)の値を付け、宝石としてアジア最高額で落札された。

ライバル競売商のサザビーズは今年の年間売上高をまだ発表していないが、同社のウェブサイトによると、今月13日までの世界の競売売上高は計42億ドルとしている。この金額には非公開取引などは含まれていない。

中国国家発展改革委と人民銀、2011年融資目標めぐり意見相違=新聞

[北京 23日 ロイター] 2011年の中国の銀行新規融資目標をめぐり、中国国家発展改革委員会(NDRC)と中国人民銀行(中央銀行)の間に意見の相違がある。23日付の経済観察報が関係筋の話として報じた。
 NDRCが経済成長への影響を懸念しているのに対し、人民銀行は銀行融資の抑制を望んでいるという。

 同紙によると、人民銀行が6兆5000億元の融資目標を提案していた一方、NDRCは8兆元を提案。NDRCは結局、国務院(内閣に相当)への最終提案でこれを2010年の目標と同じ7兆5000億元に修正した。

 報道は、政策決定をめぐる当局内部の意見の対立を伝える数少ない記事。

 アナリストによれば、中国人民銀行は金融政策を決定するが、独立性を欠き、金利や人民元に関する主要な決定には国務院の承認を必要とする。

 一方、政府当局者によると、NDRCは政策決定にきわめて重要な役割を果たしている。

米債券投信から資金流出、過去2年で最大-逃避が加速

12月22日(ブルームバーグ):米債券投資信託から顧客が先週引き揚げた資金は、過去約2年で最大規模となった。債券投資からの逃避が加速している。

  米投資信託協会(ICI)によると、15日終了週に米債券ファンドが経験した資金引き揚げは86億2000万ドル(約7170億円)に達し、前週の16億6000万ドルを大きく上回った。これは2008年10月15日終了週以来最大の規模で、当時の資金流出は176億ドルだった。

  債券ファンドから投資資金が逃げ出しているのは、景気回復の兆しと株式相場の上昇で利上げ観測が高まっているためだ。米連邦準備制度理事会(FRB)は11月に6000億ドル相当の米国債を追加購入すると発表したが、それ以後、米国債の売りは加速。ブルームバーグのデータによると、10年債利回りは3.35%と、11月4日の2.49%から上昇している。

  投信コンサルタントのジェフ・ボブロフ氏は、投信から主に資金を引き揚げたのは恐らく機関投資家だと指摘。ファンドを通じるよりも直接購入することで高い利回りを享受するのが目的だろうと分析した。同氏は「個人投資家の大半はじっとしていると思う。資金が別のところに流れているようには見えないからだ」と語った。

  ICIによれば、資金引き揚げは課税対象の債券ファンドからが37億7000万ドル、地方債ファンドからは48億5000万ドルだった。

ブラジル:ABS業界の捜査や融資返済遅延、国内金融システムに警鐘

12月20日(ブルームバーグ):ブラジルでは、資産担保証券(ABS)業界が初めて捜査対象となったほか、消費者向け融資の返済遅延が増加し、銀行の株価が約10年ぶりの大幅安となるなど、国内金融システムの亀裂が表面化している。

規模の比較的小さい銀行の資金調達コストは、資産規模で同国21位の銀行パナメリカーノ銀行に対する11月9日の救済措置が捜査に発展して以後拡大しており、譲渡性預金(CD)の平均金利は11.8%から12.9%に上昇。融資債権の売買市場は機能を停止し、ブラジルの資本市場協会によると、資産担保コマーシャルペーパー(ABCP)の払い戻しは、同行の救済後これまでに合計23億レアル(約1100億円)に達した。

このような国内資本市場のストレスが、ブラジル株の指標ボベスパ指数を2008年12月以降81%押し上げた投資家の楽観ムードに水を差している。

コンプライアンス(法令順守)やリスクに関する助言サービスを提供する1982年創業のFTIコンサルティング(米メリーランド州ボルティモア)は「パナメリカーノの一件は警鐘となった」とした上で、「市場ブームの陰で信用の質低下のようなリスクが見過ごされている可能性がある」と指摘した。

信用リスクコンサルティング会社エクスペリアン(ダブリン)によると、11月のクレジットカードなど消費者向け融資の返済遅延は前年同月比23%増と、01年以来の大幅な伸びとなった。20カ国・地域(G20)で成長率4位のブラジルはまた、外国資本が大量に流入しており、インフレ率が5年ぶりの高水準に達している。

パナメリカーノ銀(サンパウロ)は、同行の経営権を持つバラエティショーの司会者シルビオ・サントス氏(80)から25億レアル(約1200億円)の融資を受けた。この救済措置が、同行の会計処理や融資債権購入、ABS業界全体を対象とする捜査につながった。

パナメリカーノ銀の株価は、10月13日に付けた今年の最高値から64%下落。ブルームバーグと米調査会社ビリニー・アソシエーツのデータによれば、ブラジルの金融株としては、遅くとも2000年から始まったボベスパ指数の上昇局面で最大の下落率を記録した。

パナメリカーノ銀の広報担当者は、捜査中の案件にはコメントしないとしている。サントス氏の経営会社グルポ・シルビオ・サントスの関係者に対して、業務時間後に電子メールと電話で取材を試みたが、これまでのところ返答がない。

金相場高騰の予期せぬ帰結-アフリカの村、鉛中毒で子供の死亡相次ぐ

12月21日(ブルームバーグ):ナイジェリア北部にある村スンケでは、泥れんが造りの家が寄り添うように建ち、9家族が暮らしている。金採掘熱の高まりを背景に、子供が相次ぎ亡くなる事態がこの村を襲った。

  村に住む子供25人のうちウムル・ムサさんの1歳の娘ナフィサちゃんを含む5人が5月に命を落とした。村人たちが近くの丘から鉱石を掘り出した後のことだ。村人は鉱石に鉛が含まれていることを知らなかった。金相場の上昇は思いがけない大きな利益を約束した。一方で、近代医学史上で最悪の鉛中毒危機を引き起こしている。

  大人たちが穀物粉砕機で鉱石を砕くと、地面に鉛ダストがまき散らされる。そのそばでは子供たちが遊び、ニワトリは鉛ダストを食べている。金をふるい分けるため鉱石を洗う共同井戸の周辺ではさらに多くの鉛が拡散される。鉛を大量に摂取した場合、子供たちは死に至る。

  「金採掘の代償は大きい。神が与えられるもので人間以上のものはない」-。ムサさん(40)は先月、白いマスクを装着した作業チームが自宅の中庭にまき散らされた鉛ダストを取り除く間、こう語った。

  政府当局者によると、ナイジェリアのザムファラ州では小規模金鉱山での採掘の結果、8つの村で5歳未満の子供少なくとも284人が鉛中毒のため死亡した。国境なき医師団(MSF)によると、血中鉛濃度が高水準の742人が治療を受けており、この数は来年末までに3000人に達する恐れがある。

              脳障害

  米コロンビア大学のジョゼフ・グラチアノ教授(環境衛生科学)は、脳障害や流産など鉛中毒による健康被害は数年間にわたってこの地域をむしばむと予想する。

  相次ぐ死者は、21世紀のゴールドラッシュの予期せぬ帰結だ。金の仲買人の頻繁な訪問に駆り立てられるように、村人たちは過去2年の間にこぞって採掘業に転じた。この間、金融危機の後遺症に苦しむ投資家が安全な投資先を求め、金現物価格は58%上昇。今月7日には過去最高値の1オンス=1431.25ドルに達した。

  米疾病対策予防センター(CDC)の予備検査によると、ナイジェリアでは29の村の土壌から子供たちにとって危険な水準の鉛が検出された。CDCは今回の危機について、死者数と子供たちの血中鉛濃度は「前例がない」と指摘している。CDCはこの地域で検査や治療体制の整備を支援した。MSFによると、一部の症例では、血中鉛濃度は緊急治療を必要とする水準の約15倍に達していた。

金高騰の「残酷な配当」-タンザニアの鉱山、採掘者の射殺が相次ぐ

12月23日(ブルームバーグ):産金最大手、カナダのバリック・ゴールドがタンザニアのケニア国境部近くに保有するノースマラ鉱山からは毎週、数百万ポンドの廃棄岩が掘り出され、村人が住む地域の周辺に積み上げられる。村人の約半数は1日当たり33セント(約27円)足らずで生活している。

  制服姿の子供たちが岩のがれきの山を横切って登校する。その周辺では、頭の上に水の容器を乗せた女性たちが歩いている。金が少なくとも90年で最長の上昇相場となるなか、バリック・ゴールドは増産を進めている。それに伴ってがれきの山も高くなっていく。

  ノースマラ鉱山は村人の祖先が何十年もの間働いてきた場所だ。村人たちも同鉱山で鉱石を採掘している。その作業は、時には命と引き換えになることもある。

  被害者の遺族や目撃者、地元当局者、人権団体の活動家28人へのインタビューによると、わずかな現金を手に入れるため金が混ざった岩を集める人々を、警備員や警察官が銃撃し殺害したとされている。

  地元政府の最高機関タリム地区協議会のメンバー、マチャジェ・バーソロミュー・マチャジェ氏は「彼らは逮捕したり、裁判所に連行したりはしない。銃撃するだけだ」と語る。

  インタビューした28人によると、この鉱山では過去2年間に少なくとも7人が警備隊との衝突で殺害された。報道によると、そのうち少なくとも4件について、警察当局は銃撃が事実だと認めている。

             負傷者も15人

  4人の子供の父親だったムウィタ・ウェレマさんは2009年10月、金相場が当時の過去最高値を更新した日の翌日に殺害された。チャチャ・ニャマコノさんは家族の中で初めて基礎教育を終えた。その1年後に殺された。妊娠中の妻と将来を築く夢を膨らませていたダウディ・ニャガブレさんは2月に銃撃され死亡した。

  タンザニアのダルエスサラームを拠点とする人権擁護団体、法と人権センターおよびマチャジェ氏によると、この間に15人が重傷を負った。同氏は8月まで地区協議会の副会長を務めていた。

  バリックと、同社が株式の74%を保有する英アフリカン・バリック・ゴールドの文書によると、両社はノースマラ鉱山を警察当局に警備してもらうためタンザニア政府に資金を提供しており、武装した民間の警備員も雇用している。

  金相場は過去5年間で約3倍に高騰し、今月7日には最高値の1431.25ドルに達した。ノースマラ鉱山での暴力行為は金相場高騰の残酷な配当なのかもしれない。

  アフリカン・バリックはこの状況に関する質問に文書で回答を寄せ、ノースマラ鉱山には侵入者グループが頻繁に入り込み、武装している場合も多いと説明。これらの人々は価値のある鉱石を盗む目的で違法に侵入していると語った。

総額92.4兆円と過去最大、新規国債44.3兆円弱-来年度予算案

12月24日(ブルームバーグ):政府は24日夕、臨時閣議を開き、2011年度一般会計予算案を決定した。総額は92兆4116億円と今年度当初予算比0.1%増で過去最大を更新した。新規国債発行額は44兆2980億円に上り、当初予算としては2年連続で新規国債収入が税収を上回る内容となった。また、税収不足を補てんするため7兆円規模の税外収入を確保した。

  11年度予算案は、政府が6月に決定した「財政運営戦略」に沿った枠組みで、国債の元利返済に充てる国債費を除く歳出と新規国債発行額について、いずれも今年度の約71兆円と約44.3兆円を下回る規模に抑制するとの政府目標を辛うじて達成した。

  野田佳彦財務相は同日夜、臨時閣議後の記者会見で「税収よりも借り入れに大きく依存するのは1946年以来のこと。次第に税収は国債発行額に近づきつつあるが、この事態は異常だ。1日も早く脱却し、財政健全化の道を着実に歩めるようにしなければならない」と語った。

  菅直人首相は同日夜、内閣記者会のインタビューで予算案について「財政再建という意味でいえば、まだまだ不十分」としながらも、国債の新規発行抑制など「財政規律の面でもしっかりと約束は守ることができた」と表明。その上で、消費税率の引き上げを含む税制抜本改革については年明けの段階で今後の方向性を示したいと述べた。

  一般会計総額のうち、国債費を除き、政策的な経費に充てる一般歳出と地方交付税を合わせた歳出は、今年度(70兆9319億円)を若干下回る70兆8625億円に抑制した。一般歳出は今年度当初比1.2%増の54兆780億円と過去最大。地方交付税は同4%減の16兆7845 億円と5年ぶりに減少した。

  一般歳出のうち、社会保障関係費は同5.3%増の28兆7079億円と今年度に続いて一般歳出の半分以上を占めた。一方で、公共事業関係費は同5.1%減の4兆9743億円と5兆円を下回った。

  これに対し、国債費は前年度比4.4%増の21兆5491億円を計上した。国債の想定金利は、概算要求時の2.4%から2.0%に引き下げるなどして2兆5830億円を圧縮した。

         税収は2年ぶりに40兆円台回復

  歳入面をみると、税収は今年度当初比9.4%増の40兆9270億円で、当初ベースでは2年ぶりに40兆円台を回復。これによって国債依存度は47.9%と前年度(48.0%)をわずかに下回った。毎年の行政サービスにかかる政策的経費を国債などの借金に頼らず、税収などの収入で賄う基礎的財政収支(プライマリーバランス)も22兆7489億円の赤字と、前年度(23.7兆円)より改善する。

  新規国債発行額の内訳は、財政法第4条に基づく建設国債が6兆900億円、単年度の特別立法が必要な赤字国債が38兆2080億円。過去最大だった今年度(44兆3030億円)をわずかに下回ったものの、2年連続で40兆円の大台に乗った。

         国債発行残高、11年度末に891兆円

  日本の国債発行残高は、11年度末に国内総生産(GDP)を38%上回る668兆円程度、国・地方を合わせた長期債務残高は同84%上回る891兆円程度といずれも過去最大を更新する見込み。リーマン・ショック後の景気刺激策を優先し、債務残高が増加傾向にある主要7カ国(G7)の中でも突出して多い。

  税外収入は、過去最大だった今年度当初比32.2%減の7兆1866億円を計上した。基礎年金の国庫負担比率2分の1維持に必要な財源(2.5兆円)を独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」の利益剰余金1兆2000億円や財政投融資特別会計の積立金と剰余金全額の計1兆588億円、それに外国為替資金特会から特例的に11年度分2309億円を充てる。

  進行年度の外国為替資金特別会計の剰余金を前倒しで活用するのは2年連続。このほか、今年度分の剰余金2兆7023億円も全額一般会計に繰り入れることから、税外収入のうち特会の積立金などの埋蔵金は計4.2兆円に上る。

  基礎年金の国庫負担維持について野田財務相は「臨時財源頼みはもはや限界」とした上で、「税制の抜本改革で安定財源を確保しなければならない」と指摘。政府は12年度以降は消費税率の引き上げを含む税制の抜本改革で確保した安定財源を充てる方針を示している。

  歳出のなかでは、特に民主党のマニフェスト(政権公約)の実現や経済成長、雇用拡大などの関連事業を対象とする「元気な日本復活特別枠」で2.1兆円を計上。子ども手当や農業戸別所得補償制度、高校の実質無償化などのマニフェスト関連予算は総額で今年度当初比0.6兆円増の3.6兆円が充てられている。

  財務省は経済危機対応・地域活性化予備費1兆円を要望したが、子ども手当の財源に1500億円、菅直人首相の指示を受けた科学技術振興費の積み増しに400億円を転用するため、8100億円に減額となった。

激論!「日本経済は本当に破綻するのか」 細野真宏VS藤巻健史

週刊朝日 12月25日(土)16時5分配信

日本の借金は積もり積もって1千兆円近い。来年度の年金も減額されることになった。景気は? 消費税は? 社会保障はどうなる? 日本経済は破綻してしまうのか? ……次号から連載を開始する、経済に造詣が深い藤巻健史さんと細野真宏さんが徹底討論した。

藤巻健史(ふじまき・たけし) 1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを経て、現在は投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表を務める。著書に『日本破綻 「その日」に備える資産防衛術』(朝日新聞出版)など。ブログは、http://www.fujimaki-japan.com/takeshi/

細野真宏(ほその・まさひろ) 『経済のニュースがよくわかる本』が経済本で日本初のミリオンセラーに。数学、経済、投資など累計700万部突破。一貫し「数学的思考力」と「金融・経済教育」の重要性を説く


細野 今の日本の問題は、あらゆるニュースを悲観的に捉えてしまうこと。よくよく考えてみたらそれほど悪くないニュースであったとしても、閉塞感があるので、雰囲気で自然と思考が暗い方向に向かってしまう。様々なニュースを断片的に見るのではなく、それが何を意味しているのか総合的に冷静に捉える数学的な思考法が必要不可欠な状況なんだと思います。

藤巻 でも残念ながら、僕は現在の経済状況に関しては悲観的なんです。希望と分析は違う。むしろ楽観論ではいけないと思っています。遅かれ早かれ、日本は破綻する。ただ一度クラッシュした後に大復活をするとは思います。10年後の日本はすごく明るいでしょう。そういう意味では閉塞感を持つ必要はない。今やるべきことは、大復活の前の破綻に備えてどういう保険をかけておくか。あまり楽観的でいると、そのクラッシュを乗り切れない。

細野 10年後の日本がどうなるかは、これから1、2年の国民の理解度によると思います。「消費税が上がると景気が悪くなる」という誤解があります。これは「未納が増えると年金が破綻する」というのと同じ「ひっかけ問題」。消費税を上げると景気が悪くなるのではなく、消費税を上げない限り景気はよくならない。
 なぜなら、例えばこのままの状態が続くと財政破綻の心配がますます強くなり、国民の将来の不安は強まり続けます。しかも、このまま財源不足が続くと、社会保障も維持できなくなり、さらに将来不安が大きくなり続けます。日本の財政悪化の本質は、日本の年齢構成が変化し、高齢化率が世界一高い社会になったからです。社会保障のために消費税を上げ、医療や介護、年金、保育の分野に資金が回るようにし、国民の安心が得られる状態にしない限り、財政に対しても、社会保障に対しても、国民の将来不安は消えない。つまり、このままの状態では、個人金融資産が1450兆円もあっても将来が不安で使えないという状態がずっと続いていくわけです。

藤巻 消費税を上げれば景気がよくなるのか、悪くなるのか、僕にはわかりません。ただ、今や消費税を5%程度上げただけでは破綻が避けられないほど財政が悪化している、とは言えます。時すでに遅し、です。なにしろ、税収よりはるかに大きい額を長年支出してきたからです。最近は特にそれが加速している。
 家計でもそうですが、収入以上に目いっぱいカネを使っていれば破綻するのは当たり前です。日本はバブル崩壊以後、財政出動をして30兆、40兆円もの巨大赤字を毎年のように積み上げ続けた。そして累積赤字が今年度末には973兆円にもなるわけです。1年に10兆円ずつ返しても完済に100年かかるんですよ。今年度予算での税収が37兆円、税外収入をあわせても48兆円ですから、10兆円返すためには38兆円しか使っちゃいけないところを、92兆円も使っている。それでは100年かかっても返せっこない。
 さらなる問題は、今は金利がゼロだからいいけれど、5%に上がったら、金利の支払いだけで、いずれ50兆円に達してしまうということです。税収はバブルの絶頂期だった1990年度でも60兆円でした。このときは消費税は3%でしたが、5%だったとしても65兆円でしょう。それなのに50兆の金利支払いがあったとしたら、財政は破綻するのに決まっています。

細野 僕は今の日本の一番の問題は、思考停止だと思います。実は2008年末までに社会保障国民会議という、日本医師会、経団連、連合などが参加した総理直轄の有識者会議で、これからの「あるべき社会保障の像」について徹底的に議論をし、精緻なシミュレーションもやって、すでに議論の段階は終わっていたわけです。
 ところが民主党が「予算を組み替えれば簡単に10兆、20兆すぐ出てくる」といった勘違いを国民に広めてしまったため、この2年間は思考停止状態が続き、まったく状況が変わらず、閉塞感だけが漂っていたわけです。ようやく菅首相とその周囲は予算を組んで現実が見えてきて、「2011年の6月までには消費税をいくら上げるかを決める」というところまできた。当初は「政権交代からの4年間は消費税の議論すらしない」と言っていたことを考えれば、随分な進歩ですよね。要は、何党が与党になろうが、実は選択の余地はほとんどなく、日本が進むべき道は2008年末の段階で決まっていたんです。

藤巻 そのとおりで、「事業仕分け」でも無駄が省けなかったから、この数年間は埋蔵金でなんとかやりくりしてきた。しかし、今や埋蔵金ではなく埋蔵“借”金です。巨額の赤字があっても、今は景気が悪く金利が低いので、なんとか予算を組めていますが、景気がよくなったら間違いなく破綻します。景気がよくなればお金を借りる人が多くなり、金利が上がるからです。

◆国の借金はゼロにする必要なし◆

 ところで、巨額の借金を返すために、孫子の代までただただ働くのか? なにせ10兆円ずつ返しても100年かかるのですから。それとも我々の世代でつくってしまった借金だから我々が責任をもってきれいにして、きれいな日本を孫子に渡すのか? 徳政令で借金棒引きにするのも一法ですが、これはあまりに過激で、銀行などがつぶれてしまうからだめです。残るはハイパーインフレしかない。だが政治的には許容できない。唯一残されているのは、マーケットが反乱してハイパーインフレになるというシナリオです。国債の入札で応札額が募集額に届かない、つまり未達が起きて、株と債券と円が大暴落する。
 でも円が大暴落すれば、不幸中の幸いがある。日本はそれを武器に輸出を伸ばせるわ、工場が日本に戻ってきて仕事が増えるわで、10年後には大回復することができるのです。今の韓国がそうです。97年の通貨危機で通貨ウォンの価値が3分の1になった。それで大回復した。

細野 藤巻さんの論で一つ申し上げておきたいのは、藤巻さんの前提は「国の借金をゼロにするには」ということですが、個人の借金の場合とは違って、国の借金についてはゼロにしなくちゃいけないというわけではないですよね。会社と同じように国家も長く存続していくものなので、借金があること自体が問題ではなくて、要は、借金をしながら回していければいいわけですよね。財政破綻が起きるのは貸手がいなくなるからで、1998年のロシアを例に挙げると、短期国債の利率が172%という、とんでもない金利になっていた。そこまでいってデフォルト、破綻ということになる。
 日本は2010年6月に「財政運営戦略」というスキームを作って、2015年度までにプライマリーバランスの赤字を半減し、2020年度までにプライマリーバランスを黒字化させる、という枠の中で予算を組むことを決めています。消費税を安定的に上げていくことなどによって、雪だるま式に増えていた借金を一定ラインで落ち着けることができれば、持続的に回していけるわけで、必ず破綻するというわけではないと思います。これは、冒頭でお話ししたように、「これから1、2年の国民の理解度による」という話が大いに関係あるわけですが。

藤巻 僕は、国家は原則、借金をしてはいけないと思っています。借金をして、それを元手に利益を生もうという企業とは違うのです。国家が、例えば借金をして橋を造るのなら、その橋が老朽化するまでにその借金を返済しておかなければなりません。そうしないと、建て替え用の借金がその上に積み重なってしまうからです。残念ながら日本国の借金は巨大化してしまった。

◆5%の金利変動は珍しくない◆

 プライマリーバランスというのは国債の元利払いを除いた話です。プライマリーバランスを達成したところで、金利が上がって5%になったときに発生する金利50兆円の支払いをどうするのかということです。累積赤字が100兆円、200兆円ならプライマリーバランスを達成することに意味はあるけれど、973兆円の元本があると別の話です。今の日本は480万円の年収の人が毎年920万円使っている。そして、すでに借金は9730万円に膨れあがっているのと同じ状態です。収入を600万円に上げ、金利支払いと元本返済以外の支出を600万円に抑えたとしましょう。600万円の収入に対し600万円の支出ですから、プライマリーバランスが達成できたのです。このとき借金総額が100万円といった少額なら将来に望みがあります。しかし、借金はすでに9730万円もあるのです。金利が5%になれば金利支払いは約500万円です。600万円の給料ではまったく追いつかない。1100万円の収入にしないと、借金はぐいぐい増えていってしまうのです。
 ちなみに1100万円の収入では借金は増えなくても元本は減りません。人生、借金を返すためだけに働くのです。プライマリーバランスを達成しても、何にも解決にならないことがおわかりかと思います。

細野 国の財政破綻の話は2段階で考える必要があるわけですよね。まずは「国の仕事を毎年の税収の中でやりくりできるようにする」というプライマリーバランスの話。そして、もう一つは、借金の金利の話ですよね。国の借金というのは、対GDP比、経済規模との比較で考えるもの。つまり、国の借金が雪だるま式に増え続けないようにするには、プライマリーバランスの黒字化と同時に、借金の金利以上に経済成長をする必要があるわけですよね。これは、なかなかハードルが高いと思います。だからこそ、政治を中心とした今のような思考停止が続いている状態は問題だと思っています。

藤巻 5%の金利って珍しいことでもなんでもない。今の政策金利0~0・1%も異常金利ですが、僕がディーラーになった80年には、今の政策金利に相当する金利は12・75%でした。そう考えれば今から金利が5%上がるのは、決して想定外の話ではない。金利の支払いだけで税収がすべて消えてしまう可能性がある。そのときにどうやって公務員の給料を払うの?っていう話です。毎年40兆、50兆の国債が新たに発行されてきたわけですが、これは個人がお金を銀行に預けて、そのお金で金融機関が国債を買っているからできる話です。つまり個人金融資産が増えないと、新たに国債を買うお金が出てこないわけです。
 ところが個人資産は10年ほど前の1400兆円から50兆円しか増えていない。最低でも毎年100兆円ぐらい個人資産が増えていないと、毎年新たに発行する40兆から50兆の国債を吸収できないはず。じゃあ、お金はどこからやってきたのか。これまでは金融機関が貸付金を引っぺがして、そのお金で国債を買っていた。でもそのお金ももうない。だから危ない、国債が売れない可能性があるというのです。

細野 確かに日本は世界一の借金国ではありますが、ここで押さえておきたいのは、そもそも、その973兆円の借金はどこへ行っているのかという点です。消えてなくなっているという誤解があると思うんです。例えば公共事業などで使われたお金は、民間の企業に発注され、最終的にそこで働く人々の給与や株主の配当になって個人に回っている。つまり基本的に国の借金というのは個人金融資産になっているという面があるわけです。しかも、日本は経常黒字の国なので、国内のお金は増え続けてもいるんですよね。

藤巻 でも、毎年40兆~50兆円新たに発行される国債を買うほどには増えていない。これは新規の借金なんですから。だから、国がいつまで借金をし続けられるのか心配なのです。そこで、為替について一言、言っておきたい。80年と比べると、米ドルに対する通貨の価値が中国の人民元で4分の1ぐらい、ウォンでも2分の1になっている。それに比べて円は3倍。だから日本は、これらの国々に比べてダメなんです。景気が悪くなったら通貨を安くして国際競争力を増やさなければいけないのに、円高にして競争力をそいできた。
 もし円が今、1ドル=240円になったら、輸出もよくなるし、工場は国内に戻ってくるから仕事も増える。工場の周りの商店街やレストランも栄える。観光客もたくさん来る。こうして景気もよくなるから、年金問題もなくなるし、財政赤字もなくなる。それなのに、みな為替は動かせないと思っている。動かすのは簡単です。外貨建て商品の利益にかかる税金をゼロにすればいい。1450兆円の個人資産のうち10%動けば145兆円。これだけの円売りがあれば、かなりの円安になる。ポイントは1450兆円をどうやって海外に向けるか。そうすれば円安になり景気もよくなり財政出動する必要もなかった。

◆国にできることは高が知れてる◆

細野 最後に消費税増税についても誤解が多いと思うのですが、実は2009年に成立した改正所得税法で消費税は社会保障の目的税化しているんです。つまり、これから消費税の増税分は、すべて国を通して私たちの社会保障に回っていくことが決まっているわけです。もっと具体的に言うと、医療や介護や保育で働く人の給与となったり、私たちの年金になるわけです。
 例えば消費税2%分で5兆円の財源が生まれます。これは160万人の給与分に相当し、これだけ雇用が増えれば、現在5%台の失業率は2・8%程度にまで低下するという試算もできるわけです。消費税の増税というのは、社会保障の安定とともに雇用の創出も行うわけで、国民の金融資産がそのまま国民の金融資産に向かっていくだけの話なんです。
 そして、私たちは必要に応じて医療や介護や保育といった社会保障のサービスを安価で受けることもできるようになるわけです。日本は「お金がないから景気が悪い」というわけではなく、お金はそこそこ持っているのに、「漠とした将来不安があって、使えないから景気が悪い」という状況。消費税を上げるのは実は「家計から家計への新しいお金の流れをつくる」ことで、私たちの過剰な将来不安が解消されていく、という話なんです。

藤巻 いずれにせよ、今は政府に頼っちゃいけない。カネがなければ政府は何もできない。アメリカ人的に「自分のものは自分で守る」という認識をもたないと、人生も財産も失ってしまう。

細野 その点は賛成です。「政権交代すれば景気がよくなる」というのが「ひっかけ問題」であったのは、まさにそこが本質です。藤巻さんの仰るとおり、財源がなければ、国にできることなんて高が知れているわけです。多くの人は「少なくとも今ぐらいの社会保障は維持してほしい」と考えていると思います。そろそろ「無駄の削減」と「社会保障のための消費税のアップ」は両立できるものだという話に気付くべきタイミングなんだと思います。そこに早く気付かないと、藤巻さんの仰るような財政破綻ということまで視野に入れざるを得ない状況になってしまいますから。

「日本破綻」を生き抜くボーナス運用術

カリスマディーラー・藤巻健史の35問35答

週刊朝日2010年7月9日号配信

大手企業で平均75万9728円(日本経団連調べ)。今夏のボーナスは昨年よりもすこし増える傾向だそうだ。しかし、それを素直に喜べない世界の経済状況がある。日本でも「財政破綻」の危機がささやかれ、消費税率引き上げもありそうだ。ボーナスをどう使えばいいのか、「カリスマディーラー」の藤巻健史氏に聞いた。



 Q1 ボーナス、どうすればいいですか?
 A 日本では企業がどんどん海外に出ていき、給料を稼ぐ場所が減っています。ならば、お金に稼いでもらうことを考えるべき。それは、投資をすることです。

 Q2 預金ではなく?
 A 現金や預金はいちばん危険です。猛烈な勢いで物価が上がるハイパーインフレが来るかもしれないからです。一生懸命働いて100万円貯めても、タクシーの初乗りが100万円になれば貧乏ですよね。

 Q3 インフレになる?
 A なると思います。国の借金は今年度末に973兆円になる見込みです。毎年10兆円ずつ減らしても100年かかる。こうなると、ハイパーインフレを起こして、973兆円を実質的に意味がないものにするしか考えられません。政治的にはできないので、最終的には金融市場が先導することになるでしょう。

 Q4 日本は「破綻」するというのですか?
 A すると思います。日本は国債を発行し続け、今年度も44兆円の国債を新規発行します。新しく44兆円が必要なのです。多くの国債を買ってきたのは日本の金融機関ですが、その元手は預金です。ふつうGDP(国内総生産)の伸びに比例して預金が増えますが、この20年ほど、日本のGDPは伸びていない。いずれ国債が売れ残る。子ども手当も国家公務員の給料も支払えなくなります。

 Q5 おおげさでは?
 A 1996年、橋本龍太郎政権が財政再建法の制定を打ち出しました。このままいけば財政が「破綻」しそうだと思ったからですが、この法律は停止されました。橋本元首相は空騒ぎをしたのでしょうか?
 その後も財政状態は一直線に悪くなり、当時と比べて、借金額は2・7倍になりそうです。

 Q6 何をきっかけに「破綻」するのですか?
 A 国債入札の「未達」だと思います。これは、発行予定額に応札額が届かない状態を指します。

 Q7 その後の動きは?
 A 「未達」のニュースが流れた途端に日本の金融市場はジ・エンドでしょう。いま金融市場では先物商品の取引が大きいのですが、これが連日ストップ安で市場が開かれないような状態に陥るでしょう。それをみて現物も連鎖して下がる。国債だけでなく株も円も暴落し、トリプル安です。

 Q8 投資家だけの問題ではないのですか?
 A 銀行の「とりつけ騒ぎ」が起きると思います。たとえば、国内最大の銀行であるゆうちょ銀行では、保有する資産の8割が日本国債です。国債価格が暴落したら、貯金している人も心配になって、お金を取り戻そうとするでしょう。

 Q9 銀行が倒産するのですか?
 A そうならないように政府と日本銀行が超法規的な対策を練るでしょう。国債入札の未達は民間銀行が国債を買わないから起きるので、法改正して日銀が政府から直接買えるようにします。民間銀行からも国債を買い取り、お金を渡して騒ぎを沈静化させる。日銀が懸命に紙幣を刷るので、お金の価値が下がりインフレにつながります。

 Q10 菅直人政権は「強い財政」を掲げ、「2020年度までに基礎的財政収支(PB)を黒字化する」と言っていますが?
 A PBというのは、国債発行収入を除いた歳入と、国債の元利払いを除いた歳出を比べたものです。PBが黒字化しても、借金が積み上がることはあります。
 しかも景気がよくなれば金利は上がりますから、利払いの金額も大きくなる。いまでも国債の元利払いで20兆円かかる一方で税収が37兆円しかないのですから、「PBの黒字化」というのは、ごまかしでしかない。

 Q11 消費税率を10%に引き上げてもだめですか?
 A 今年度は「埋蔵金」などの税外収入10兆円があったので、新規国債が44兆円で済んだ。でも、「埋蔵金」は一度掘ったらおしまいです。
 一方で、消費税を5%幅上げると、国税分を4%とすれば、増収は10兆円弱になります。「埋蔵金」の分を補填するので精いっぱいです。

 Q12 「法人税率の引き下げ」も掲げていますが?
 A 法人税率を引き下げても、財政面では大きな影響がありません。なにしろ、昨年度の法人税収は5兆~6兆円にとどまるとも言われます。

 Q13 では、日本財政はいつ「破綻」するのですか?
 A わかりません。大地震と同じで、明日かもしれないし、5年後かもしれない。今年「破綻」する確率も3割あると思っています。来年度の予算を組めない可能性があるからです。

 Q14 「破綻」の確率が3割なら、残りの7割に賭けたほうがいいのでは?
 A 7割、つまり「破綻」を回避すれば日本株は上がると思いますが、3割のことが起きたときに影響があまりにも大きすぎる。積極的な運用は危険です。

 Q15 では、どう運用すべきですか?
 A まず、国を頼ってはいけません。災害が不安なときは保険をかけるでしょう。運用でも「保険」をかけることを気にする時期です。

 Q16 「保険」とは?
 A 財政が「破綻」しても影響を受けないものへの投資です。持ち家を含めて、日本国内に持っている資産は、一時的にはダメージを受けてしまう。それを相殺するため違ったものに分散して投資すべきです。

 Q17 インフレの兆候が見えてからでは遅いですか?
 A 国債入札の未達から始まるシナリオであれば、一瞬でインフレになります。

 Q18 ボーナスのうち、どれぐらいを「保険」に回すべきですか?
 A 円建て資産をどれだけ持っているかで変わります。すべて円建てであれば、今回のボーナスでは、投資できる金額すべてを「保険」に回す時期だと思います。

 Q19 どんな金融商品が「保険」ですか?
 A 財政問題の解決に向けて、世界的に中央銀行がお金をどんどん供給し、インフレが強まっています。こうした状況に強い株や不動産商品を選ぶべきです。

 Q20 具体的には?
 A 「保険」としては米ドル建て資産をお薦めします。今後いちばん強いのが米国経済だと考えているからです。日本の財政が「破綻」すれば円安になるので、為替だけで利益を得られます。

 Q21 米国株ですか?
 A そう思います。具体的には、よく知られている「ダウ工業株平均」に採用されている30銘柄から選ぶのがいいでしょう。コカ・コーラやウォルト・ディズニーなど、なじみのある会社ばかりです。

 Q22 米国株の値動きをどう確認すればいいですか?
 A わたしはインターネットで、無料の「CNNマネー(※)」を見ています。日本語であれば、日本経済新聞の夕刊にも載っています。

 Q23 米国の債券は?
 A 株だけでは心配な人はドル建て債券もいいでしょう。ただ、債券はインフレになると価格が下がります。その影響を避けるには満期までの期間が2~3年以内と短いものがいいでしょう。米国債以外であれば、発行組織の信用度(健全性)をよく確認しましょう。株にしろ、債券にしろ、運用をプロに任せる投資信託もいいでしょう。

 Q24 投資信託では、どんな商品がいいですか。
 A ドル建て債券や米国株で運用する投資信託がいちばん魅力的かもしれません。ドル建てのMMFも選択肢に入りますね。

 Q25 ドル建て商品はどうやったら買えますか?
 A 米国株などは日本の証券会社の店舗に行けば買えます。インターネット証券でも買えます。

 Q26 欧州はなぜよくないのですか?
 A 財政危機のギリシャは欧州通貨ユーロから離脱すると思います。財政赤字に陥った国の最も効果的な政策は輸出を伸ばす作用などがある通貨安ですが、ギリシャはユーロ国である以上、これができません。ギリシャ以外にも、続々とユーロから離脱する国が出てくるかもしれません。そういうときにユーロ建て資産は買いにくいですね。

 Q27 BRICsも注目を集めていますが?
 A BRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)は、経済は強い半面、金融市場が小さすぎ、売りたいときに売れないリスクがあります。BRICs経済が本当に強いと思うなら、そこに進出している日本や米国の企業の株を買えばいいでしょう。

 Q28 日本の金融商品は?
 A ハイパーインフレがくれば、日本株も将来値上がりしますが、日本財政の「破綻」による混乱期につぶれない企業かどうかを考えて銘柄選びをしてください。

 Q29 日本株の狙い目は?
 A 円安が進むと業績が伸びる輸出株でしょう。「破綻」するのは日本の財政であって日本経済全体ではないので、日本が生きていくために必要なもので外資が入りにくい業種、電力やガスなどもあるでしょうか。でも、ある程度は海外に分散投資をすべきです。

 Q30 不動産商品は?
 A リート(不動産投資信託)や不動産会社の株でしょう。為替の利益も狙うつもりならドル建てがいいでしょうね。

 Q31 マンションを買うのはどうですか?
 A ハイパーインフレが起これば値段が上がります。ただ、借金で買う場合には、混乱期にきちんと元利金を払えるめどがあるか考えてからにしてください。自分が失業すれば払えませんし、賃貸に出す場合も、テナントが倒産していなくなる危険性があります。

 Q32 住宅ローンはどうすればいいですか?
 A わたしなら、早めに変動金利型から固定金利型に変えます。固定金利のほうが金利は高いのですが、それも「保険」だと考えてください。

 Q33 金がいいという人もいますが?
 A 世界のインフレ率に価格が連動するので悪くはありませんが、オールマイティーではありません。金の価格はドル建てなので、日本で金を売買するときには、金自体の価格だけではなく為替にも影響されます。日本でハイパーインフレがくると、円安となって為替ではもうかる半面、金自体の価格が日本のハイパーインフレに追いつくほど上がるかは疑問です。

 Q34 藤巻さんが言う「保険」で損はしませんか?
 A ずっと「破綻」しなければ、損する場面もあるでしょう。しかし、損しても、「保険料」と考えるべきです。万が一、「破綻」が起きた場合、ドル建て資産でいくぶんでも救われる。まさに火災保険と同じ。火災が起きなければうれしい。

 Q35 未来はそんなに暗いのですか?
 A 韓国では、原因は違いますが、97年に通貨危機で「地獄」をみました。それが、今年の実質GDPの伸び率を5・8%と上方修正するなど、実体経済でも企業業績でも日本を凌駕しています。ウォン安のおかげでしょう。
 日本もトリプル安が起これば、10年後には大回復している可能性があります。ただ、当初の混乱はすさまじいと思われるので、その準備をする必要があります。大震災に備えて避難訓練をしておくのと同じです。

【コモディティストラテジー2011年】金、原油、穀物、銅は一段と上昇へ=丸紅経研

サーチナ 12月26日(日)11時44分配信

丸紅経済研究所代表の柴田明夫氏に、2011年の金価格の行方とともに、コモディティ市場を展望してもらった。柴田氏は、現在の米国の金融緩和が簡単に引き締めに向かわないこと、また、新興国の旺盛な需要などから、金価格をはじめとしたコモディティ価格の上昇は終わらないと見ている。

――金価格の高騰は続くのか? 

 2009年後半から資源価格は、急速に戻りつつあって、世界経済の予想以上の回復ペースを移している。特に原油が30ドル近辺から70ドル台に回復し、すでに1年以上にわたって70ドル-80ドルで安定している。資源の代表である原油が、90年代の20ドル弱から比べると、4倍のところで安定している。これにともなって、相対価格の調整が進んでいる。コモディティ価格の全体のバランスが、原油に合わせるというイメージだ。

 金は、必ずしも原油のように4倍ではない。90年代の前半に原油と金がバランスしていたときは、原油価格は20ドル弱に対して金の価格比は20倍くらいだった。ところが、90年代後半に金の価格の大暴落があって、400ドルから250ドルまで下げてくる過程で、原油の値段は変わらずに20ドル程度だったので、原油と金の価格比は10倍程度にまでなった。それが今、2000年代に入って、もとのレベルに戻りつつある。現在、原油価格が85ドルとすると、20倍で1600-1700ドルという金の値段がみえる。

 金の値段については、昨年10月に1000ドルを超えてからは、未知の世界であって価格の理論値などはなくなっている。そこで、ひとつの目安として金と原油の価格比を見てみると、このようなことがいえる。

 2010年夏以降の金価格の上昇は、米国の金融緩和、FRBの金融緩和が大きい。ギリシア問題が出て、アメリカの経済自体も住宅減税、自動車減税などの政策効果が剥げ落ちてくると、結局経済の実態が悪化し始めた。特に雇用環境が改善せず、住宅市場も再び悪化してきたので、米国の出口戦略はなくなった。また、デフレの問題から脱却するために、追加の金融緩和政策をとってきた。景気が良くなるまではゼロ近辺の金利を維持していく。基軸通貨ドルの金融の一段お緩和を受けて、流動性インフレで金を買う余地が出てきている。

 世界全体をみても、ヨーロッパのソブリンリスク、南欧州諸国の財政問題は長引く。世界的なソブリンリスク問題が出てきて、それに対する安全資産の逃避先としての金が注目されてきている。

 金の需給をみても、需要は新興国の台頭。中国もインドも金の需要は伸びている。インドは、今年も9%近い成長を遂げている。1000ドルを超える金の現物でも着実に需要が出てきている。中国も国家として金の外貨準備を増やしていく。これは、インド、ロシアも同じ。また、金ETFも引き続き資金を集めている。金は強い材料ばかりだ。

 ただ、勢いが強いので、ちょっとした金利の引き上げなどで、いったんは大きく下がるという局面もありうる。それでも、下げたら新たな買いが入るということで、来年は、1600ドル程度にはいきそうな感じがしている。

――金以外での注目コモディティは? 

 原油と穀物、銅地金には、上値がありそうだ。

 原油は、再び100ドル台に乗せてきそうだ。前回、2008年の年明けの100ドル乗せは、7月に150ドルに迫るところまで値上がりした。今回は、このような上昇はないと思う。2008年当時はその後のリーマン・ショックで暴落したのだが、現在は、70-80ドル台で下値が固まっている。これをベースにして、じわじわとレンジ相場の上限を上抜けてきている。これは、産油国と消費国が折り合いながら、原油の上昇を容認するような動きに感じられる。先進国の原油需要は頭打ち、または、マイナス傾向なのだが、BRICsをはじめとした新興国需要が押し上げている。一方で、先進国の在庫は過去最高レベルにあるので、原油の供給面に不安感は少ない。世界の石油需要の伸びに応じた、緩やかな上昇になるだろう。

 穀物は、基本的には原油価格が4倍になった影響を生産コスト面で受けてくる。近代農業は燃料代、化学肥料代、飼料代、農薬代など、これらは原油と関連している。特に中国など、賃金の上昇と農業資材の投入コストの上昇、海外を含めた農産物価格の上昇によって、食品価格が2桁に上昇している。また、中国では需要増で輸入が増えている。2010年は、大豆を5700万トン輸入した。トウモロコシも130万トン輸入して、いよいよ、中国がトウモロコシの輸入国に転換するのではないかと注目されている。

 そうなると、トウモロコシはアメリカが世界の生産の40%以上を占め、貿易量の6割を占める国。そのアメリカの国内ではトウモロコシのエタノール需要が増えていて、11月の農務省の見通しでも4割近くがエタノールに使われ、この比率は毎年増えている。これは、2007年12月にブッシュ大統領のときに成立したエネルギー安全保障法というのが利いている。脱中東、脱石油のなかで、エタノールを増やしている。この結果、米国のトウモロコシ輸出余力が低下する。中国が輸入国になると、アメリカくらいしか輸出できる国はないので、供給面に不安がある。

 すでに、トウモロコシの2011年7月末の在庫は6.2%に下がる見通し。大豆は5.5%。これは綱渡りの状況。6%の在庫は端境期には1粒もなくなってしまうくらいの状況。供給に少しでも懸念が出てくれば、投機マネーが大暴れしそうな、乾ききったマーケットになっている。

 銅は、中国にインフラ整備で大量の需要が見込まれる。2020年に向けて、中国は高速鉄道の整備を進める。50万人都市を新幹線で結ぶという計画を進めている。そこに合わせて電力開発が進む。これによって高圧電線の需要が膨らんでいる。

 また、モータリゼーションで、中国の自動車販売台数は、2010年に1800万台とういう数字が出てきている。2011年は2000万台という予測もある。それでも1000人あたりの自動車保有台数が40台に満たない。さらに来年は電気自動車が量産体制に入る。銅をはじめとするレアメタル、レアアースの需要が一気に拡大する。

 アルミの資源は多いのだが、銅は鉱山の品位が下がってきている問題がある。需要が旺盛なために枯渇の問題が浮上している。チリにある世界最大の銅鉱山の品位が1%程度だったのが、0.5%くらいに下がってきている。環境コストも価格に反映させられ始めた。銅の価格は8800ドル台をつけているが、来年は1万ドルもありえる。資源価格が上がることによって、省エネ・省資源、新エネルギーなどの開発が促されてくるが、新エネルギーの開発スピードが遅くなれば、従来型のコモディティの相場は上がっていくという図式が継続する見通しだ。

【コモディティストラテジー2011年】金の高値は継続し、工業用メタルにも注目=スタンダードバンク

サーチナ 12月26日(日)12時22分配信

スタンダードバンク東京支店代表兼支店長の池水雄一氏に金(ゴールド)を中心とした貴金属市場の見通しを聞いた。池水氏は、2011年のコモディティ市場は「2010年の流れを引き継いで強い」と見通している。また、「金以外の銀、プラチナ、パラジウムといった工業用メタルには、金以上の投資妙味がある」とする。

――2011年は、金の価格の見通しは? 

 金は、2011年も引き続き強い。最大の要因は、世界金融緩和の流れ、米国FRBをはじめとした世界の政府、中央銀行が、景気の腰を折らないために資金を市場に大量供給している。そういったお金は、本来であれば、設備投資など景気拡大のために使われるべき資金なのだが、今の状況は、本来の目的には使われず、市場に回流し、それが、金をはじめとした貴金属やコモディティ市場に入ってきている。このジャブジャブの流動性と低金利が変わらない限りは、金は強いと思う。

 また、ヨーロッパの財政危機など、「通貨」に対する不安が台頭していることも、代替通貨として金に注目が集まる理由になっている。これまで金に対する投資を行ってこなかったファンドなどが、どんどん金を買っていることの背景には、過剰流動性と通貨不安という2つの理由がある。これは来年も基本的に変わらない。世界的な金融緩和から、出口戦略へと方向転換が図られ、金融引き締めに動くようになると、金は売られるだろうが、2011年には、そのようなことにはならないと思う。

 一方、需給関係から見て、金については中国の動きが注目されている。たとえば、2010年1月から10月までに、中国が金を210トン輸入していることが明らかになった。2009年の同時期の輸入量が45トンだったので、ほぼ5倍に拡大している。その上で、中国は、世界一の金の産出国であり、年間約350トンを産出している。つまり、輸入と合わせて年間に約600トンを国内で消費している計算だ。このインパクトは大きい。

 たとえば、中国の銀行では日本に学んで「(金の毎月積み立てのような)金貯蓄」を導入する検討が進められているが、中国の4大商業銀行のひとつである中国農業銀行は、保有する個人口座数が3億口座ある。仮に1口座に1グラムずつ金を売ると3億グラム、すなわち、300トンの新規需要が生まれる計算だ。数億口座という単位で個人口座を持っている中国の商業銀行には、巨大な金購入のポテンシャルがある。基本的に、中国人は金が好きな国民であるだけに、「金貯蓄」という金融商品が生まれた場合の金の現物需要は、相当大きな数値になりそうだ。

 一方で、中国の中央銀行である人民銀行でも、外貨準備高に占める金の割合が欧米と比較して低いのを是正しようと考えられている。外貨準備高に占める金の比率は、米国や欧州先進国が60-70%を占めるが、外貨準備高の多い、中国、日本は、金比率が2-3%と異常に低い。代わりに米ドルを大量に持っている。サブプライム問題以降、米ドルの一極集中はリスクだと意識されてきている。そこで、中国では金の保有を2%から引き上げる議論がされてきている。

 この外貨準備の多様化という議論は、中国に限らず、韓国、ロシア、インドなど新興国の課題になっており、現在の米ドル偏重から金の保有高を引き上げるという動きがある。中央銀行は、ずっと金の売り手であったものが、2009年ごろから買い手に転じてきている。2010年から中央銀行セクターは、初めて明確にセラーからバイヤーに変わった。このような金の現物保有を伴う実需の買い手が現れたことは需給バランスの上では、買い方優位に働く。ファンドによる買われすぎで、高値になると下がるのだが、そこで実需の買いが入ってくると底堅くなる。その繰り返しによって、価格が上昇する動きが一段と強くなろう。

――2011年の高値のメドは? 

 もはや、最高値水準を駆け上がっているので、いくらまでという価格予測ができない水準になっている。あえて言うなら、1600-1700ドルがあっても不思議ではないといえるが、その価格には根拠がない。

――金以外で妙味のある貴金属は? 

 たとえば、2010年のパフォーマンスを振り返るとわかりやすいが、1月4日からもっとも値上がりしたのは、パラジウムだった。12月6日までの値上がり率を見ると、パラジウムが92%上昇している。次いで銀が82%上昇。金は28%の上昇だったことと比較して、大きな上昇率になった。プラチナは2009年のうちに値上がりしていたため、2010年は18%上昇にとどまった。

 この金と、他の3つのメタルは特徴的に違っていて、シルバー、プラチナ、パラジウムは工業用メタルといわれていて、実需が80%程度ある。プラチナは、自動車の排ガス用の触媒として使われている。プラチナがなければ、実質的に自動車が販売できないという状況だ。このように常に需要が存在しているので、景気が戻ってくれば、おのずと需要が入ってくる。

 金のように宝飾品として使われているものは、価格が高くなると誰も買わなくなる。シルバーは太陽光電池などに使われている。その需要が戻り始めている。しかも、この3メタルともにETFが組成されてきていて、ETFを通じて資金が入ってきている。すなわち、金と同じように投資資金が入ってきている一方で、実需でも旺盛な需要が出始めている。投資と実需の両面から資金が入ってきている。もし、投資するとすれば、金よりも、3メタルの方に妙味があると思っている。

.【コモディティストラテジー2011年】ペーパー資産への信用低下で金は一段高=第一商品

サーチナ 12月26日(日)12時46分配信

 第一商品フューチャーズ24の村上孝一氏に、2011年のコモディティの見通しについて寄稿してもらった。村上氏は、「世界の経済・金融の先行きが不透明なことや、先進国を中心とした量的緩和策による財政赤字拡大やインフレ懸念などにより、ペーパー資産に対する信用が低下しつつある中、資産運用先として商品先物が今後もより一層、注目される」とみている。

――2011年のNY金の予想レンジ 

 1トロイオンス=1250ドル~1700ドル。高値時期は、10月~11月頃、安値時期は、7月~8月頃。

――NY金の強材料は? 

 先進国を中心とした金融緩和政策による過剰流動性の継続。米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和策の継続を背景とした、将来のドル安とインフレ懸念。米国の減税延長措置を背景とした米財政赤字拡大と米国債の格下げ懸念による、中・長期的なドルの信認低下。ユーロ圏の債務危機問題の長期化と周辺国への拡大懸念。新興国を中心とした中央銀行の金保有量増加見通し。中国やインドでの需要増加見通しなど。

――NY金の弱材料は? 

 米景気回復を示す経済統計発表によるドル高・米長期金利上昇、投資資金の株式市場などへの流出。 米FRBの追加量的緩和(QE3)の見送り。ユーロ圏の債務問題の後退。中国の金融引き締め策による国内景気の悪化と商品需要の減退懸念。米国での商品市場の持ち高制限導入など。

――2011年のコモディティ市場における注目の先物は? 

 金に注目している。

 2011年の金相場は、現在の中・長期的な強基調を継続するとみており、最大の注目材料は米FRBの金融政策。大型の所得税減税の2年間延長を柱とする包括減税法が成立したことで、経済や雇用の回復が期待されている。しかし、米FRBが重視している雇用情勢は失業率が10%近くの高水準にあるうえ、長期失業者の高止まりなどの本格的な改善を阻む構造的な要因がある。さらに、12月のFOMC声明では「雇用者は依然雇用増に消極的」と雇用情勢の厳しさを指摘している。現在の量的緩和第2弾(QE2)による米国債購入は2011年6月で終了するが、厳しい雇用情勢とインフレ指標に変化がみられず、FRBがQE3実施の観測が強まった場合や、7月以降にQE3に踏み切った場合、10月~11月頃に1700ドルを付ける可能性はある。

 米国の量的緩和や財政赤字拡大に加え、長期化の様相を呈しているユーロ圏の債務問題により、安全資産としての金の魅力が高まり、投資資金の流入が期待される。また、こうした要因から通貨に対する信用が低下することになれば、中国やインドなどの新興国の中央銀行が外貨準備高に占める金の比率を高めるため、金購入に踏み切る可能性もある。中国では経済成長に伴い富裕層を中心に金購入量が増加しているうえ、政府による金市場自由化策によりさらなる需要増加が期待されている。

 弱材料として挙げた4つの要因、特に米国の追加金融緩和が見送りとなった場合、2011年第3四半期にも1250ドルまで下落する可能性はある。しかし、強材料として挙げたように、通貨に対する不安感により、中・長期的な強基調は継続するとみている。

 また、白金系貴金属に注目している。

 米国の量的緩和策やユーロ圏の債務危機を背景に、先物市場や上場投資信託(ETF)への投資資金流入が継続するとみている。需給面では新興国を中心した自動車販売台数の力強い成長を背景とした自動車触媒需要の増加が期待される。特に、パラジウムはロシアの国家在庫が枯渇するとの観測が現実味を帯びるようだと、1000ドル台に乗せる可能性がある。

【コモディティストラテジー2011年】資産保全に加え投資用の需要増で金価格は上昇=エース交易

サーチナ 12月26日(日)13時24分配信

 エース交易取締役第一事業部長兼大宮支店長の大橋正直氏に、2011年のコモディティの見通しについて寄稿してもらった。大橋氏は、「資産保全、投資用需要の増大で金の上昇は続く」と見通している。

――2011年のNY金の予想レンジは? 

 1,300~2,000ドル。高値時期は12月頃、安値時期は2月頃。

――強気に見通す材料は? 

 欧州信用リスクが依然として根強く残っているため、安全資産としての魅力が急低下する環境にはない。また、米国では景気回復を示す明確な兆しが見られていないことから、更なる追加緩和が実施される可能性もあり、インフレ対策としての金の需要も継続されるだろう。さらに、中国では四大銀行を通じて個人向け金投資の選択の幅が拡充され始めており、資産保全の面だけでなく、投資用の需要も拡大すると見ている。

――弱気に見通す材料は? 

 経済危機からの回復を果たしつつある新興国、特に中国の金利動向に注意したい。世界最大の経済規模を誇る中国の利上げは、早期回復を目指す世界経済にとって重石となり、株式市場から商品市場へ波及し、全面安に直面する可能性もある。また、米欧が現在直面する問題についての抜本的対策案が打ち出された場合、急落を余儀なくされるだろう。各中央銀行、政府関係者の言動にも注目したい。

――2011年のコモディティ市場における注目の先物は? 

 世界的に金の注目度が上昇してきている。2000年以降、金の裏付けのあるETF(上場投資信託)が世界の主要取引所で上場され、年金基金を中心とした需要が増加した。また、ファンド等の資金も流入し、金市場は活況を呈している。その後、サブプライム・ショック、リーマン・ショックなどの経済危機を迎える度に、金の有用性が再認識され、発行体リスクのない実物資産としての地位を再構築してきた。

 一部の新興国を除いては、未だ経済危機からの立ち直りが見えず、米国では緊急緩和による過剰流動性資金の膨張が問題視されている。行き場を失った資金の一部が金市場に流れることが大きな価格変動要因となっており、「質への逃避」と呼ばれる資金シフトは今後も続くと考えられる。また、欧州では財政問題を抱える国が続出しており、EU(欧州連合)やIMF(国際通貨基金)の支援にも限界があると思われる。この状況がさらに拡大すれば、欧州経済の破綻は免れず、ユーロ脱退の苦境に立たされる国が出てくる可能性もある。ドル、ユーロ共に経済基盤が不安定であるため、通貨の信用が低下しており、実物資産である金が選ばれるのも道理といえる。

 世界最大の外貨準備高を有する中国では、2億を越える口座数を持つ中国工商銀行で純金積立の販売が開始され、また、11年中に店舗数を増加させる計画を明らかにしている。さらに、中国証券監督管理委員会(CSRC)が中国で初となる金ETFを対象とする投資ファンドの設立を承認したことで、個人向け金投資の裾野が広がりつつある。中国政府の指示の下、国内金備蓄の強化を図っているとの憶測が飛び交うほど、現在の金市場において、中国の動向は重要な要因とされる。

 欧米諸国の経済情勢の安定化の兆しが見られれば、金価格高騰の潮流が変化する可能性もある。ただ、金融危機時に金の売却益を株式の損失穴埋めに充てるなどして難を逃れた経緯などもあり、金融機関や各中央銀行が「ラストリゾート」とされる金を大量に手放すとは考えにくい。仮に大きく値を下げる局面があったとしても、アジア勢を中心とした現物の買いなどによって価格が支えられると見ており、長期上昇トレンドは11年も継続されると予想している。

【コモディティストラテジー2011年】資産保全に加え投資用の需要増で金価格は上昇=エース交易

サーチナ 12月26日(日)13時24分配信

 エース交易取締役第一事業部長兼大宮支店長の大橋正直氏に、2011年のコモディティの見通しについて寄稿してもらった。大橋氏は、「資産保全、投資用需要の増大で金の上昇は続く」と見通している。

――2011年のNY金の予想レンジは? 

 1,300~2,000ドル。高値時期は12月頃、安値時期は2月頃。

――強気に見通す材料は? 

 欧州信用リスクが依然として根強く残っているため、安全資産としての魅力が急低下する環境にはない。また、米国では景気回復を示す明確な兆しが見られていないことから、更なる追加緩和が実施される可能性もあり、インフレ対策としての金の需要も継続されるだろう。さらに、中国では四大銀行を通じて個人向け金投資の選択の幅が拡充され始めており、資産保全の面だけでなく、投資用の需要も拡大すると見ている。

――弱気に見通す材料は? 

 経済危機からの回復を果たしつつある新興国、特に中国の金利動向に注意したい。世界最大の経済規模を誇る中国の利上げは、早期回復を目指す世界経済にとって重石となり、株式市場から商品市場へ波及し、全面安に直面する可能性もある。また、米欧が現在直面する問題についての抜本的対策案が打ち出された場合、急落を余儀なくされるだろう。各中央銀行、政府関係者の言動にも注目したい。

――2011年のコモディティ市場における注目の先物は? 

 世界的に金の注目度が上昇してきている。2000年以降、金の裏付けのあるETF(上場投資信託)が世界の主要取引所で上場され、年金基金を中心とした需要が増加した。また、ファンド等の資金も流入し、金市場は活況を呈している。その後、サブプライム・ショック、リーマン・ショックなどの経済危機を迎える度に、金の有用性が再認識され、発行体リスクのない実物資産としての地位を再構築してきた。

 一部の新興国を除いては、未だ経済危機からの立ち直りが見えず、米国では緊急緩和による過剰流動性資金の膨張が問題視されている。行き場を失った資金の一部が金市場に流れることが大きな価格変動要因となっており、「質への逃避」と呼ばれる資金シフトは今後も続くと考えられる。また、欧州では財政問題を抱える国が続出しており、EU(欧州連合)やIMF(国際通貨基金)の支援にも限界があると思われる。この状況がさらに拡大すれば、欧州経済の破綻は免れず、ユーロ脱退の苦境に立たされる国が出てくる可能性もある。ドル、ユーロ共に経済基盤が不安定であるため、通貨の信用が低下しており、実物資産である金が選ばれるのも道理といえる。

 世界最大の外貨準備高を有する中国では、2億を越える口座数を持つ中国工商銀行で純金積立の販売が開始され、また、11年中に店舗数を増加させる計画を明らかにしている。さらに、中国証券監督管理委員会(CSRC)が中国で初となる金ETFを対象とする投資ファンドの設立を承認したことで、個人向け金投資の裾野が広がりつつある。中国政府の指示の下、国内金備蓄の強化を図っているとの憶測が飛び交うほど、現在の金市場において、中国の動向は重要な要因とされる。

 欧米諸国の経済情勢の安定化の兆しが見られれば、金価格高騰の潮流が変化する可能性もある。ただ、金融危機時に金の売却益を株式の損失穴埋めに充てるなどして難を逃れた経緯などもあり、金融機関や各中央銀行が「ラストリゾート」とされる金を大量に手放すとは考えにくい。仮に大きく値を下げる局面があったとしても、アジア勢を中心とした現物の買いなどによって価格が支えられると見ており、長期上昇トレンドは11年も継続されると予想している。

【コモディティストラテジー2011年】安全資産への逃避でNY金1800ドルも=日本ユニコム

サーチナ 12月26日(日)13時46分配信

 日本ユニコム調査課部長の菊川弘之氏に、2011年のコモディティ市場の見通しについて寄稿してもらった。菊川氏は、「安全資産への逃避で金が買われる流れは、2011年も継続」とし、NY金の価格は1トロイオンス=1800ドルもあると見ている。

――2011年のNY金の予想レンジは? 

 1200ドル~1800ドル。高値時期は12月頃、安値時期は3月頃。

――強気に見通す材料について

 リーマンショック以降、リスク商品が売られる過程の中で、損失補填的に金のロングが解消されて押し目を付ける場面は度々見られたが、振り返ってみると結果として良い押し目買いの機会を提供したことになっており、「安全資産への逃避」で買われる流れは、2011年も継続見通しだ。

――弱気に見通す材料について

 QE2が終了する6月以降、米国の出口戦略が見えてくるようなら、過剰な資金供給が解消され、順調な景気回復と共に金利が徐々に上がってゆく「良い金利上昇」となり、ドル・米株上昇、金利がつかない金(GOLD)は売られるシナリオも考えられるが、現段階でその確率は低いと見る。ただし、5月に株式市場で見られたフラッシュ・クラッシュのような動きには注意を払いたい。

――2011年のコモディティ市場における注目の先物は? 

 FRBは11月のFOMC(連邦公開市場委員会)で、2011年6月までに6000億ドルの量的緩和を実施する事を決定した。過去にない規模の過剰流動性相場が継続しており、商品市場は需給よりも金融相場化した値動きが続く見通し。米国の財政赤字は巨大で、金融機関から政府へ危機が移行したに過ぎず、夏前後には不良債権問題の再燃も懸念される。ギリシャショックに端を発した欧州のソブリンリスクも、スペインや英国の危機に発展するリスクがあり、「通貨」の側面も持つ金が買われるだろう。

 アジアの中央銀行を始めとして外貨準備における金の比率を高める動きも継続見通しで、世界最大の金の生産国となった中国は、公的部門・民間部門共に、売り手としてではなく、金の買い手としての存在感が増しそうであり、名目ベースで史上最高値を更新している金が、2008年の原油市場と同様、インフレ換算した実質ベースでも史上最高値をトライする流れを予想する。2010年大きく上昇したパラジウムを始めとするPGM系も、ロシアの在庫枯渇や中国を始めとする需要増加を材料にETFへの資金流入が期待される。市場規模が小さいが故に、値が飛ぶリスクには注意を払いたい。

 また、ここ数年の大豊作にも関わらず在庫積み増しができていない穀物市場は、上値リスクが囃され易い。ラニーニャ現象の発生もあり、世界各地で異常気象が報告されている中、主産地での生育不良となるなら、「豊作でなければ旺盛な需要は賄えない構造」の穀物市場に投機資金は流入しやすく、それがインフレ懸念として金(GOLD)の買い材料にもなるであろう。

 さらに、中東情勢も懸念材料だ。イランのアフマディネジャ大統領・イスラエルのネタニヤフ首相共に対外強硬派で、オバマ大統領による中東和平の動きは後退しており、中東情勢の有事は、金・原油市場の買い材料となるだろう。