2011年6月11日土曜日

ジム・ロジャーズ氏:「私はドルを買った」、高まる悲観逆手に

6月10日(ブルームバーグ):ロジャーズ・ホールディングスのジム・ロジャーズ会長は、市場がドルに対してますます悲観的になっていることから、それを逆手に「ドルを買った」と話した。同氏は先月、ドルは長期的に見て「最悪の状況」だと述べていた。

ロジャーズ氏はブルームバーグのラジオインタビューで、「実は、私はドルを保持している」と述べ、「市場では95%か96%の人がドルに対して弱気な見方だ。そこで、私は踏み入って、ドルを買った」と説明した。

同氏は、海外投資家が国債への信頼感を失いかけている中で、米国政府は歳出を抑え、赤字を削減する必要があると訴えた。ロジャーズ氏は近く、米国債にショートを建て始めると話した。インフレが加速し、国債発行が増加しているのが背景だ。

米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、ユーロ、円、英ポンド、豪ドル、カナダ・ドル、スイス・フランの6通貨に対するドルのネットショート(売り越し)は5月に10万1398枚と、今年1月以来の最低だった。主要6通貨に対するインターコンチネンタル取引所(ICE)のドル指数は年初から約5.8%低下した。

粒子放出量が過去最大の太陽フレア

Dave Mosher
for National Geographic News
June 9, 2011


 6月7日、太陽から比較的温度の低いプラズマが噴出して吹き出物のようなキノコ雲を形成した後、太陽表面に降り注いだ。観測史上最も大量の物質が宇宙に放出されたと考えられるという。

太陽表面で局所的に電磁波が異常に増大する太陽フレアという現象は、「並み」のクラスならばそれほど珍しいものではない。各地の天文台では2010年だけでも約70回記録されている。しかしそうした太陽フレアは、「巨大」フレアの10分の1程度でしかない。2007年以降、巨大フレアが発生したのは2回だけだ。

 今回の太陽フレアで科学者が衝撃を受けたのは、フレアの発生自体ではなく、噴き上げられた物質の異常な多さだった。その物質は拡散し、太陽表面の約半分に降り注いだ。太陽フレアと同時に粒子が宇宙空間に飛び出す現象は、コロナ質量放出(CME)と呼ばれる。

 NASAの太陽観測衛星ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)プロジェクトに携わる天体物理学者フィリップ・チェンバリン(Phillip Chamberlin)氏は、「まったく驚かされた。太陽表面のこの場所ではたいしたことは起こっていなかった。ところがこれが太陽の奥からやってくると、突然フレアが発生し、粒子が大量に噴出した」と話す。「これほど巨大なCMEは見たことがない」。

 宇宙空間に放出されたエネルギーと電子、陽子の質量を計算するには少し時間がかかるとチェンバリン氏は言う。それでも、粒子が広がった空間の体積は地球の体積の数百倍以上になるとのことだ。

 チェンバリン氏によると、太陽の右の縁付近から噴出した粒子は宇宙空間にまき散らされ、地球を直撃することはないが、地球の両極付近でオーロラを明るく輝かせる可能性はあるという。

 しかしチェンバリン氏は、宇宙天気の専門家は今後の太陽活動について心配していると注意を促す。

 太陽活動には、太陽表面の複雑な磁場により生じる11年の周期があるが、その周期の極大期が2013年後半か2014年前半に訪れる。この時期の前後は磁気の乱れが生じ、厄介な太陽嵐が発生しやすくなる。「(巨大)フレアが、2年に1度ではなく、2カ月に1度観測されるだろう」とチェンバリン氏は言う。

 その巨大フレアの1つが地球に面した場所で起こり、CMEが真っ直ぐ地球に向かってきたら、荷電粒子が人工衛星の部品に衝突し、一部をショートさせ、その部品が故障する可能性もある。

 地上に過剰な太陽粒子が降り注ぐと、送電線に余計な電流が流れて過熱する。実際1859年に太陽嵐が発生したときには電信線が炎上した。この種の災害を防ぐため電力会社は送電線の負荷を分散しているが、活発な太陽嵐が発生すれば変圧器がパンクして停電につながる恐れもある。とくに、6月初めからアメリカ東部を襲っているような熱波の時期は危険だ。

「送電網には相当な対策がとられているとはいえ、それでも影響を被る危険性はある。何らかの深刻な事態に陥るかもしれない」とチェンバリン氏は述べた。

2011年6月8日水曜日

GFMS年次報告

ゴールド・フィールズ・ミネラル・サービシーズ(GFMS)は7日、2011年の年次報告を発表。

 金の現物相場は、投資家の旺盛な需要を背景に、下半期にも1600ドルを突破する可能性を指摘。

 また、銀、白金、パラジウムも金価格の上昇による投資意欲の高まりを受け、堅調を持続すると分析している。

 GFMS社のポール・ウォーカー最高責任者(CEO)は、米国、欧州、中国、インドといった金需要の高い国では実質金利(名目金利から物価変動率を差し引いた金利)がマイナスになっており、「これ(実質マイナス金利)こそが金価格の押し上げ要因」と指摘。

 金融緩和による資金余剰で低金利の長期化が見込まれる上、米国経済の減速や欧州財政問題に対する不安も加わって、安全資産とされる金への投資意欲は衰えないとした。
 ただし、投資目的の買いが中心となっているため、「必ず弱含む場面がある」(ウォーカーCEO)といい、今後3カ月間の下値は1300ドル台とした。

 一方、銀については金ほど市場に厚みがないため、値動きが激しくなる可能性があるとしたが、産業用の実需が下値を支えるとみられ、金が1オンス=1600ドルを付ける場面では1オンス=50ドル台に上昇すると予想。

 また、白金は1675~1925ドル、パラジウムは650~975ドルのレンジでの推移を予想。

驚異的な成績の逆張りの運用担当者-期待膨らませる投資先はサウジ

6月8日(ブルームバーグ):商品相場の変動に乗じて利益を上げるヘッジファンドの運用担当者として、ジョン・バーバンク氏は5月の1週目ほど、うまくいったことはないだろう。

  原油や金属など資源価格は2年ぶりの大幅下落を記録した。中国やインドのインフレ率上昇や中東・北アフリカの政治混乱を受けて投資家が新興市場投資を敬遠したためだ。ただ、バーバンク氏にとって相場下落はチャンス。サウジアラビア市場への投資をさらに増やす考えだ。ブルームバーグ・マーケッツ誌7月号が報じた。

  リビア情勢やシリアでの反政府デモに加え、バーレーンでのデモ鎮圧に向けたサウジの部隊派遣決定を知って投資を中断する動きもあるが、バーバンク氏は違う。パスポート・キャピタル(米サンフランシスコ)の創業者で最高投資責任者である同氏は、サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン資産の空売りで2007年にネットベースで220%のリターンを上げて名を成した。

  同氏の見立てではサウジの政権転覆や原油相場暴落の可能性はほとんどないということだ。08年まで外国人投資家の株式購入を認めなかった閉鎖的なサウジが市場を開放した際には、石油資源が豊富なサウジへの投資に着手する時だと判断。石油化学会社や銀行、建設会社の上場銘柄に加え、ヘルスケア関連会社の株式まで取得した。サウジ投資は、5月時点でバーバンク氏の旗艦ファンド「グローバル・ストラテジー」(運用資産21億ドル=約1700億円)の約11%を占めている。

            原油があるという現実

  顎いっぱいにひげを蓄え、エリート資産運用担当者というより港湾労働者の風貌に近いバーバンク氏(47)は、「サウジに原油があるという前々からの現実は、今回の危機でも変わらない」と語る。「サウジ投資に積極的なのは、割安で高い成長率や資本利益率(ROC)の上昇が見込まれ、かつそれが何年にもわたって続く公算が大きいためだ」と説明する。

  こうしたサウジ投資は、世界の資源不足に目を付け非伝統的手法を駆使することに長けたバーバンク氏にぴったりの運用方法だ。2年間上昇してきた商品相場は4-6月(第2四半期)に入って低迷したが、新興国の発展に伴いほとんど名もない資源会社が今後数年間に「金のなる木」に変貌すると予想する。

  バーバンク氏は投機の動向で相場にゆがみが生じやすい商品自体の取引にはほとんど関心がない。その一方で、石油タンカー運営会社など商品需要が着実に拡大する限り成長が見込める企業の割安な株を購入し、10倍の投資リターンを上げたい考えだ。

  カザフスタンのカリからモザンビークのコークス用炭まで需要が高いさまざまな資源の鉱脈を発見する小企業を発掘することも忘れない。

             発掘能力

  投資家はバーバンク氏のこうした「発掘能力」の恩恵にあずかっている。パスポートの投資家から取得したデータによると、グローバル・ストラテジーは2000年8月の運用開始以降のリターンがネットベースで年間23.6%。HFRXグローバル・ヘッジファンド指数はこの間に4.3%上昇、S&P500種株価指数は0.6%上昇にとどまる。

  鉱物資源の新たな鉱脈を求めてしのぎを削るオーストラリアや中国、インドの多国籍企業に先んじようと、バーバンク氏の行動は素早い。出資する企業から採掘資源をこれら大手企業が購入してくれれば大きな分け前を得られる。もっと良いのは企業自体を買収してもらうことだ。

  07年にパスポートはモザンビークでコークス用炭開発を手掛ける豪リバーズデール・マイニングの株式取得を開始。掘削がまだ始まっておらず7億9900万ドルの損失を出していたにもかかわらず、10年の時点でリバーズデールはパスポートの保有資産で最大の比率を占めた。

  賭けは奏功した。英豪系鉱山会社リオ・ティントは昨年12月6日、リバーズデールに34億ドルの買収案を示し、その後、提示額を40億ドルに引き上げた。同社の株価は10年に138%上昇し、グローバル・ストラテジーが18.2%のリターン(経費計上後)を実現するのに寄与した。パスポートは今年1-3月(第1四半期)、保有株の大半をリオ・ティントに売却した。

             損失も経験

  もっとも、パスポートの投資家はこの10年間に二重の損に見舞われた。08年、世界的な信用収縮が新興市場株式にいかに影響を及ぼすかを軽くみたために、バーバンク氏は自分の会社を失いかけた。資源株をめぐって長期的な強気の投資が報われると確信し、市場でそうしたポジションの解消が相次いだ時でも買い増した。

  バーバンク氏は09年2月の顧客への報告で、「金融危機から生じる経済危機についてもっとうまく予想できていたら、より大規模な売りを仕掛けただろう」と語り、「魅力的な水準とみなした銘柄を買いたいという気持ちが先に立った」と釈明している。08年の運用成績はマイナス51%と、HFRX指数(23%低下)の2倍強の損失となった。

             大きな賭け

  ヘッジファンドの投資家向けコンサルティング会社エイジクロフト・パートナーズ(バージニア州)のマネジングパートナー、ドン・スタインブルッゲ氏は「パスポートはかなり大きな賭けをする。投資を任せる場合、パフォーマンスが変動することは理解しておく必要がある」と警告する。

  バーバンク氏の投資戦略は今年、重大な試練を迎えている。09年と10年に中国やブラジルなど途上国に流入した資金は今年に入って流出に転じた。米エマージング・ポートフォリオ・ファンド・リサーチによると、6月7日までに新興市場株式ファンドから77億ドル強の資金が流出した。中国の3月の消費者物価は5.4%上昇、3カ月連続で政府目標を上回った。中国やインドの中央銀行はインフレ抑制に向け利上げを進めており、資源の買い手である両国の経済成長に陰りが出そうだ。

           極めて大きいリスク

  アーテミス・ウェルス・アドバイザーズの投資責任者、ピーター・ラップ氏はバーバンク氏の投資について「リスクが極めて大きい」と警鐘を鳴らす。「私は顧客のすべてに中国やインド、ブラジルから投資マネーを引き揚げさせた」と語った。

  バーバンク氏は、FRBの6000億ドルの米国債購入計画終了で、年内に商品関連証券が一段と売られるのではないかとみている。量的緩和第2弾(QE2)と呼ばれるこの計画はドル安の要因となり、インフレヘッジとして商品投資を促したとみている。

  パスポートの投資家によると、グローバル・ストラテジーは5月以降、保有する商品関連資産を縮小するなどして、純資産価値の1-2割を現金に充てている。「流動性ショックの間は商品に過剰に投資したくない」と語るバーバンク氏は、いったん市場が底入れしたら、お気に入りの銘柄を安く購入するつもりだ。

国内企業:コモディティ市況想定価格、非鉄や穀物など【一覧表】

6月6日(ブルームバーグ):商社や非鉄製錬会社などの今期業績の前提としているコモディティ市況の想定価格は以下の通り。



【商品市況】
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<原油>(バレル当たり)    <LME銅>(トン当たり)
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三菱商    92ドル(ドバイ)      三菱商事    8378ドル
三井物    94ドル (JCC) 住友商事    8819ドル
住友商    98ドル(ブレント)     丸紅   8800ドル
伊藤忠   109ドル(ブレント) JXHD    8708ドル
丸紅    85ドル(WTI)      住友金属鉱山  8500ドル
双日     90ドル(ブレント) 三菱マテリアル 8378ドル
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6日の価格 100.44ドル(WTI)    6日の価格  9133ドル
      115.90ドル(ブレント)
3日の価格 108.61ドル(ドバイ)

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<LMEニッケル>(トン当たり) <LME亜鉛>(トン当たり)
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三井物産 22046ドル 住友商事  2249ドル
双日 24251ドル 三井金属  2200ドル
住友金属鉱山 24251ドル 東邦亜鉛 2187ドル
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6日の価格   22850ドル      6日の価格  2273ドル

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<LMEアルミ>(トン当たり)    <LME鉛>(トン当たり)
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三菱商事     2400ドル      東邦亜鉛   2244ドル
昭和電工     2250ドル      三井金属   2250ドル
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6日の価格    2640ドル      6日の価格   2451ドル

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<シカゴ大豆>(ブッシェル当たり) <NY粗糖>(ポンド当たり)
J-オイルミルズ  13.5ドル      三井製糖 25セント台
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6日の価格     14.13ドル      6日の価格  23.95セント

(注):昭和電工は2011年12月期決算、それ以外は2012年3月期決算。
各社の決算資料、聞き取りから。

ブラジルのヘッジファンド詣で引きも切らず、高成績で低リスクが魅力

6月7日(ブルームバーグ):ごく少数の時もあれば10人のグループの時もあるが、毎週のように投資家がやって来る。サンパウロのグアルリョス国際空港から直接来る人もいる。彼らが向かう先はヘッジファンド会社のクレディ・スイス・ヘッジング・グリフォだ。世界屈指の運用成績を誇るヘッジファンドに多額の資金を投資させてくれと懇願にいくのだ。

  ヘッジング・グリフォの運用担当者の返事は大抵の場合、丁寧だが断固としてノーだ。ヘッジング・グリフォのベルデ・ファンドは1997年以降のリターンが年平均でプラス33%。同社ストラテジストのルイス・パウロ・パレイラス氏は、ある米国人は3年間の解約請求を認めないという条件まで付けて投資したいと申し出たが、「年金基金や寄付基金、政府系の資金を全て断った」と話す。

  パレイラス氏によれば、ヘッジング・グリフォは80億ドル(約6400億円)を運用するが、規模が大きくなり過ぎると自社の取引がブラジル市場を動かすことになりかねないと運用担当者らは懸念している。ブルームバーグ・マーケッツ誌7月号が報じた。

  過去10年のヘッジング・グリフォの高リターンは中南米最大の経済規模を誇るブラジルでも群を抜いているが、新規投資家をなお受け入れている他のブラジルのヘッジファンドもさほど出遅れてはいない。欧米人はそれに気付き始めている。

  ブラジルのファンドが9割を占めるユーリカヘッジ中南米オンショア・ヘッジファンド指数は、2001-10年に世界全地域で最も高い年平均プラス20%のリターンを記録した。

            株式と債券だけ

  皮肉なのは、大半のブラジルのヘッジファンドのトレーディング戦略がインデックス投信に似ている点だ。ブラジル当局は投信と区別するためにヘッジファンドをマルチ戦略会社と呼んでいるが、ブラジルのファンドマネジャーらは運用資産のほぼ全てを債券と株式に投じている。

  ヘッジファンドを規制されない資本プールと位置付けられる米国とは異なり、ブラジルのヘッジファンドは資産価値を監督当局に日々常に報告する。ポートフォリオを開示する必要があるほか、投資家から解約請求があった場合には通常、数日以内に対応できるようにしなければならず、高リスク投資を数多く実行することができない。

  そのような状況は、ブラジルのヘッジファンドの運用が比較的容易であることを意味していると米サンフランシスコのヘッジファンド、ルーメン・アドバイザーズの共同創業者、サイモン・ノセラ氏は考えている。同氏は「ブラジルの株価指標であるボベスパ指数と国債を買うだけでいい。超アクティブで優秀なトレーダーである必要はない」と指摘する。

             新たな富裕層

  それでも投資家から不満は聞こえてこない。過去10年の間、国債と株式が世界の大半の指数を上回るリターンを記録し、ブラジルのファンドがもうけてきたためだ。財政緊縮策と記録的輸出、所得の増加が急成長を後押ししてきた。

  01年以降を見ると、2年物のブラジル国債は年平均プラス17%のリターンを記録し、ボベスパ指数は年16%上昇した。この間、S&P500種株価指数の上昇率は1%にとどまり、ユーリカヘッジによると、世界のヘッジファンドのリターンは年間プラス11%だった。

  ブラジル経済は昨年7.5%成長と、20年ぶりの高い伸びを記録し、新たな富裕層投資家階級を生み出している。バンク・オブ・アメリカ(BOA)のワールド・ウェルス・リポートによれば、06-09年に3万8000人が100万ドル以上の資産を持つミリオネアとなった。毎日26人のペースだ。

サンパウロの調査会社エコノマティカによると、ブラジルのアナリストやトレーダー、元インベストメントバンカーらは過去1年間にヘッジファンド31本を新規設定し、同国のヘッジファンドの数は462本に達している。

  ブラジルが09年に初めて投資適格級格付けを獲得したことで、ブラジル国債は大幅上昇。しかし、通貨高騰やインフレ加速を考えると、現在と同じような高いリターンが今後も続くかどうかは疑問だとゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのジム・オニール会長は警告する。

          「ブラジル・キット」

  ブラジルのヘッジファンド業界には「ブラジル・キット」と形容される運用戦略がある。運用資産の約66%を債券に投資し、残りの大部分を株式に配分する一方、通貨やブラジルの金利関連にも多少の投資を行うもので、極めて単純な戦略であるためこう呼ばれる。

  レブロン・エクイティーズ・ジェスタン・ジ・レクルソスの共同創業者、マルセロ・メスキタ氏によれば、ファンドマネジャーらはブラジルの資産家から常に国債を上回るリターンを求められており、その多くが国債のリターンを下回ることを心配するあまり、割安株への投資機会を逸しているという。ユーリカヘッジによると、中南米のヘッジファンドの運用報酬は、預かり資産の平均1.88%と運用収益の20%で欧米と同じ水準だ。メスキタ氏はリスクを取らない運用者にこれほどの報酬を支払うべきではないとの見方を示す。

  ブラジル株の選択肢が乏しいことも、このような運用戦略が採用される背景にある。ブラジルの上場銘柄数は467銘柄と、米国の5700銘柄に比べて少なく、ボベスパ指数の時価総額の5割を上位10銘柄が占めている。ファンドマネジャーの選択肢が限られる中で、「誰もが同じような運用を行うため差別化が難しい」と野村ホールディングスの中南米ストラテジスト、トニー・ボルポン氏は分析している。

  だが、多くの投資家にとって運用をめぐるこうした状況は不安材料ではない。ブエノスアイレスの資産運用会社ガイア・キャピタルのパートナーで顧客資金を7年間にわたりブラジルのヘッジファンドに投じてきたセサル・スタンヘ氏は「運用戦略の幅は比較的狭いが、非常に巧みな運用担当者が存在する。有能な人々と堅調な市場の組み合わせによって、素晴らしい成果が得られる」と強気だ。

国債市場の「Xデー」、4年後から到来リスク高まる-SMBC日興

6月8日(ブルームバーグ):日本国債の利回りが急騰(価格は急落)する「Xデー」は、今から4年後に当たる2015年からの10年間に到来するリスクが高まる-。SMBC日興証券によると、国債利回りが大幅に上昇した場合、国内銀行が最も打撃を受ける恐れがある。

  末沢豪謙金融市場調査部長は7日の記者説明会で、日本は第2次オイルショック後の約30年間にわたって経常収支の黒字基調を維持し、積み上がった家計の金融資産が主に金融機関への預貯金を通じて官民の資金需要を賄ってきたと説明。昨年ごろから「世界的に財政プレミアムが長期金利に乗ってきた」中でも、日本は主要国でも突出して低い金利を保っていると指摘した。

  米欧の格付け会社が近い将来に日本国債の格付けを引き下げた場合でも「金利上昇を招く可能性は極めて小さい」と強調。しかし、少子高齢化と家計貯蓄率の低下に加え、東日本大震災による景気低迷の長期化や生産拠点の海外移転もあり、将来は大規模な経常黒字の維持は難しくなると分析した。

  「Xデー」は「日本の金利が急騰するタイミング」と発言。仮に経常収支の赤字が続いた場合には「限界的なファイナンスを海外に依存しなくてはならない。海外勢は多分、今の金利水準では日本国債を買ってくれない」ため、利回りが「米国やドイツの水準に近づいていく」と予測した。ただ、日本は世界最大の対外純資産と同2位の外貨準備を保有しているため、ギリシャなど財政危機の渦中にある国々との比較は妥当ではないとの見方を示した。

長期金利は足元1.1%半ば

  長期金利の指標とされる新発10年物国債利回りは足元で1.16%。過去10年間はおおむね1%台で推移。昨年の最高は4月に付けた1.405%。一方、米独の10年債は3.0%台、ギリシャは15%台後半だ。日本の経常黒字額は4月に前年同月比69.5%減の4056億円。震災後のサプライチェーン(供給網)の寸断や電力不足を背景に生産・輸出が滞り、貿易収支は赤字に転じた。

  末沢氏は、長期金利が1%上昇した場合に投資家が被る損失を試算。生命保険やゆうちょ銀行などは国債の大半を「満期保有目的」「責任準備金対応」という時価評価が不要な区分で保有しているが、トレーディング目的での保有額を近年急速に増やしている国内銀は金利が上昇すると「一番大きく投資行動が変わってきやすい」と語った。

  2015-25年の間にリスクが高まる「Xデー」を先送りするには、日本が海外から「常にフローベースで稼げる構造」が必要だと指摘。震災を踏まえ「効果的な復興戦略や実効性ある成長戦略を再構築」しなければならないと述べた。

         公的債務、主要国で最悪

  自民党は8日午後、国債価格が暴落する「Xデー」への対応策を協議する財務金融部会・X-dayプロジェクト(座長・林芳正元経済財政担当相)の報告書をまとめた。国債利回りが急上昇した場合、一部金融機関の経営不安につながる恐れがあると指摘。金利が1%上昇すると1年で1兆円、2年で2兆5000億円の利払い費増が発生すると試算した。

  日本の公的債務残高は国内総生産(GDP)の約1.9倍と主要国で最悪。財務省によると、国債・借入金・政府短期証券を合わせた国の債務残高は3月末に過去最大の924兆3596億円に達した。今年度の第一次補正予算を反映した国債発行計画では発行総額が171兆6000億円、うち市中消化額は144兆9000億円と、それぞれ過去最大。新規国債発行額も約44兆3000億円に及ぶ。

  米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は1月27日、日本の長期国債格付けを約8年9カ月ぶりに引き下げた。4月27日には格付け見通しを「ネガティブ」に変更。ムーディーズ・インベスターズ・サービスも2月22日、日本政府の格付けの見通しを「ネガティブ」に下げ、5月31日には引き下げ方向で見直すと表明した。

3カ月以内に格下げ

  フィッチ・レーティングスも5月27日、日本のソブリン債格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げた。末沢氏は、ムーディーズは日本国債の格付け引き下げで同業他社に後れをとっているため「3カ月以内」に格下げを実施すると予想した。

  もっとも、日本銀行の統計では、公的債務の国内消化余力の目安される家計の純金融資産は昨年末時点で1129兆47億円。国債の95%前後を国内勢が保有している。末沢氏は家計の金融資産には「時価会計基準も適用されないし、ホームカントリーバイアスも強い」と指摘した。

  末沢氏は政府の行政刷新会議が昨秋実施した事業仕分け第3弾で、国債や借入金の償還や利払いに充てる国債整理基金特別会計などの仕分け人を務めた。4月3日付の日経ヴェリタスが報じた「債券アナリスト・エコノミスト人気調査」では債券アナリスト部門で6位。

2011年6月5日日曜日

グーグルのシュミット会長、「私はSNSで失敗した」公開インタビューでCEO時代を振り返る

グーグルのエリック・シュミット会長が、米ウォールストリート・ジャーナルの技術系情報サイト「オールシングスデジタル」の公開インタビューに登壇し、「私はソーシャルネットワーキング分野で方向性を間違った」と語ったと海外メディアが伝えている。

 シュミット氏がグーグルの最高経営責任者(CEO)を退いて会長職に専念したのは今年の4月。それまでの10年の経験を通して、同氏が今のネット市場をどう見ているのかが分かる内容だ。

「フェイスブックには称賛すべき功績がある」

今春から会長職に専念しているグーグルのエリック・シュミット氏〔AFPBB News〕
 この中で同氏は、「今のネット市場で情報伝達を向上させるためには、ユーザーやその友人が誰であるかという情報が重要になる」とし、そうした情報を入手できるソーシャルネットワーキングの分野でグーグルは出遅れたと説明している。

 「何かをしなければならないことは明白だったが、私はしなかった」「CEOは責任を取るべきだ。私は失敗した」と述べたと米ブルームバーグは伝えている。

 米フェイスブックは実名登録制のサービスを展開し、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)世界最大手となった。ユーザーに現実社会のプロフィールを入力してもらい、それらの情報をもとに人々がネットでつながる仕組みを提供した。

 その人物が誰であるかや、嗜好までもが分かる仕組みが奏功し、フェイスブックはネット広告市場でグーグルなどの脅威となった。

 シュミット会長は、「フェイスブックには数々の称賛すべき功績がある」としたうえで、「グーグルもその膨大なユーザーにアクセスしようとフェイスブックとの提携を試みた。しかし結局は提案を拒否され、フェイスブックは米マイクロソフトと提携した」と述べている。

ネットは「4人組の一団」が支配している
 また同氏は、今の消費者向けネットの市場は「4人組の一団」によって支配されているとも述べている。その“4人”とは、グーグル、フェイスブック、アップル、アマゾン・ドットコムの4社のことだ。いずれも自社のネットサービス上で他社のサービスが展開されるという、いわゆるプラットフォーム戦略に成功している企業だ。

例えば、グーグルにはネット検索やモバイル端末用の基本ソフト(OS)「アンドロイド(Android)」がある。

 フェイスブックにはサービス上で動く様々なウェブアプリケーションがあり、アップルにはアイフォーン、アイパッドとその上で動くアプリが、アマゾンには、ネット通販のほか、電子書籍などのデジタルコンテンツがある。

 シュミット会長は、これら4社が消費者や投資家に膨大な恩恵をもたらしているとし、4社を合わせたその価値は5000億ドル(約40兆円)にも上ると見ている。同氏によると、この額はテクノロジー史上前例のないもので、またこれほどの規模で4つの企業が成長していることも前例がないという。

一般的なテクノロジー企業がたどる道
 ただ、米シーネットニュースによると、シュミット会長はこれら4社の現在の地位は将来にわたって約束されたものではないとも述べている。1つの企業がインターネット市場でトップの座に君臨できる期間はここ最近どんどん短くなっているからだという。

 そのためには、やはりイノベーションが必要なのだと同氏は指摘している。同社は一般的なテクノロジー企業が次のような経緯をたどると説明している。

 「まず2人の共同設立者で会社を興す。やがて株式公開し、金持ちになる。すると次第にその会社は退屈なものになり、老けてもいく」――。

 これを避けるためにどうしても必要なのが、製品やサービスのイノベーションなのだという。

FRBは25年後には存在しない、議長再指名は「間違い」-タレブ氏

6月2日(ブルームバーグ):ベストセラーとなった「ブラック・スワン」の著者、ナシーム・タレブ氏は2日、米連邦準備制度理事会(FRB)は25年後には存在しないだろうとした上で、バーナンキ議長の再指名は政策運営上の「間違い」との見解を示した。

  ユニバーサ・インベストメンツのプリンシパルを務めるタレブ氏はモスクワでの会議で、バーナンキ氏をFRBトップの座に据え続けるのは「資格のないパイロットに航空機を操縦させるようなものだ」と語った。

サンローラン氏から怒りの手紙――グッチ再建のフォード氏が告白

CNN.co.jp 6月2日(木)13時33分配信

(CNN) 米著名ファッションデザイナーのトム・フォード氏(49)が、ファッション業界の先駆者でライバルでもあった故イヴ・サンローラン氏から手紙で何度も怒りをぶつけられていたことをCNNとのインタビューで明らかにした。

フォード氏がクリエイティブディレクターを務めていたファッションブランドのグッチは、1999年にサンローラン氏のブランドの一部を買収した。フォード氏によると、最初はサンローラン氏も協力的で、「何度か夕食を共にし、私の最初のコレクションにも来てくれた」という。

しかしグッチが急成長してフォード氏が注目されるようになるとサンローラン氏から敵視されるようになり、「『君はたった13分で私の40年のキャリアを破壊した』と書かれた手紙を受け取った」と振り返る。

サンローラン氏は2002年にファッション界から引退し、脳腫瘍のため08年に71歳で死去した。

フォード氏は04年にグッチを去り、自身の名を冠した「トム・フォード」のブランドを創設する。しかし最初は自分のブランドをコントロールできなくなることが不安だったと打ち明ける。

「今はもう、お金のために働く必要はなくなり、プライドのために働いている。だから自分の名をコントロールできなくなり、自分の名を冠した製品に誇りを持てなくなったらと思うと不安だった」

最近では映画にも進出し、監督としてクリストファー・イシャーウッドの小説を原作とする「シングル・マン」を手掛けたフォード氏。ハリウッドへの転身は「ごく自然なことだった」と話す。

「私は自分が作りたい映画についてはっきりした構想を持っていた。知らなかったことがないとは言わないが、映画を監督することと、大手ファッションブランドのクリエイティブディレクターであることにそれほど大きな違いはない」

具体的な共通点として、「まずビジョンを持つこと」「そしてそのビジョンの実現に手を貸してくれる人々の素晴らしいチームを雇い、創造性を発揮してもらえる環境を作ること」「次にそのチームが自分のビジョンの実現を助けてくれるよう、ゆっくりと注意深く導くこと」を挙げている。