2011年12月30日金曜日

BRIC時代の終焉:今年は投信資金が150億ドルの記録的流出

12月28日(ブルームバーグ):過去10年間に新興市場であるブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国に注ぎ込まれた投資信託資金は約700億ドル(5兆4500億円)となり、株価はS&P500種株価指数の4倍強の値上がりを記録、経済成長も米国の4倍のペースに達した。

  新興市場の中でも大国のこれら4カ国は、ゴールドマン・サックス・グループによって「BRIC」諸国と命名されたが、いまや同社は4カ国の最良の時期は終わったと指摘する。

  MSCI・BRIC指数は今年23%急落し、調査会社EPFRグローバルのデータによると、BRIC関連投資信託も今年は過去最大となる150億ドルの資金流出を記録したという。同指数の伸びは2001年11月から10年9月までの間にS&P500指数を390ポイントも上回ってきたが、ここにきて5四半期連続でS&P500指数を下回っている。これはゴールドマンが、BRIC諸国は2050年までに米国や日本などの経済大国と肩を並べるだろうとの予想を示した後で最長の期間となっている。

  EPFRグローバルによると、今年のファンド資金の流出は少なくとも1996年以降で最大で、インドの株式投資信託は40億ドル、中国は36億ドルのそれぞれ純減を記録した。ブラジルからは22億ドル、ロシアからは3億2600万ドルが流出したという。

  今年2月に新興市場諸国の株価下落を予想していた米マーケットフィールド・アセット・マネジメントのマイケル・シャオール会長は、「新興市場で、物事が改善される前に悪化するのを待っている状況だ」と指摘。HSBCプライベート・バンクのアジア投資責任者(シンガポール駐在)、アルフナ・マヘンドラン氏は、欧州債務危機に伴う流動性低下によりBRIC指数は来年さらに20%下落しようと予想する。

BRICの成長鈍化

  マヘンドラン氏は「BRIC諸国の成長鈍化は来年上期の大半の期間続くだろう」とし、「米国に比べて企業収益は、賃金上昇や金利上昇、為替変動といった悪材料がある中でさほど良くなかった。金融緩和の効果が表れてくるのは来年下期からだろう」と述べた。

  7-9月(第3四半期)のBRIC4カ国の国内総生産(GDP)伸び率は過去約2年間で最低だったが、ゴールドマン・サックスは、労働市場への参入人口が減っていることを理由に、4カ国の潜在的成長ペースは既にピークを打った可能性があるとした。

  ブルームバーグがまとめたアナリスト1万2000人強の予想によると、MSCI指数の企業利益の伸びは5%と、今年の19%から鈍化、株価もS&P500指数を5ポイント下回る見通し。

  国際通貨基金(IMF)が9月にまとめた推定によると、BRIC4カ国の成長率は来年6.1%と、2007年の9.7%から鈍化する見通しだ。世界全体の成長率は4%と予想されている。

大幅な鈍化

  新興市場で最大の経済規模を誇る中国では、欧州向けへの輸出が鈍化しているのに加え、当局の不動産投資規制が成長抑制要因となっている。インドでは1935年以来最速ペースの利上げと通貨ルピーの最安値水準への下落によって成長が頭打ちになった。またコモディティー需要の急増で過去10年間の成長が支えられてきたブラジルとロシアでは、金属相場の下落と中国の成長鈍化で打撃を受けている。

  ボントベル・アセット・マネジメントのマネーマネジャー、ラジブ・ジェイン氏は、「新興市場諸国はおしなべて、あらゆる数値が来年の大幅な成長鈍化を示している」と指摘する。

  ゴールドマン・サックスが7日に公表した報告「BRICsの10年-道半ばの偉大なる変革」は、長期的に見てBRIC諸国の経済成長率が鈍化すると予想。その理由として就労可能年齢の人口の伸びが鈍化し、やがて減少するとみられる点を挙げている。同社のエコノミスト、ドミニク・ウィルソン氏は「BRICをグループとして見ると、潜在成長力は既にピークを打った可能性が強い」と述べている。

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