2010年2月13日土曜日

本物の「金脈」はこうして発掘せよ-ウィンミル氏に投資戦略を学ぶ

2月11日(ブルームバーグ):2009年は金相場が好調だった。しかし、トム・ウィンミル氏が運用する「ミダス・ファンド」の成績は、その金相場すら上回った。

  運用資産1億2500万ドル(約112億円)のこのファンドは、金属などを採鉱・処理する企業や商品に投資する。昨年1年間のリターン(投資収益率)はプラス83%。ブルームバーグが集計したデータによると、これはファンド全体の95%をしのぐ。今年は、10日までのリターンがマイナス7.6%。過去3年間の年間のリターンは平均でマイナス4.8%、過去5年ではプラス13.5%となっている。

  ウィンミル氏(50)によると、弁護士として積んだ経験が、鉱床の技術報告をふるいにかける上で役立っている。その作業は「トレッキングシューズを履いて鉱山を歩き回るよりずっと重要だ」と語る。

  ウィンミル氏が銘柄を選択する際のチェックリストの上位には、日程通りに予算内で生産を開始する能力や、株式の価値を維持する能力が挙げられる。「鉱山会社には配当の支払いを望む。そして絶えず株式を発行するのではなく、時には買い戻してほしい。また、勢力を拡大しようと株式が希薄化するような買収を行うのは避けるべきだ」と語る。これらの条件に加え、良質なプロジェクトが鍵になるという。

        金1500ドルに上昇へ

  1月時点で、ウィンミル氏はファンドの資金の大部分を産金株に投資していた。投資家が保有資産の価値のヘッジを目指すなか、同氏のファンドのリターンは強気相場を追い風に上昇。「ドルの価値下落と債券バブルの崩壊が多くの投資家に打撃を与え、多くの貯蓄者がインフレによる痛手を受けるだろう」との見方を示す。

  ウィンミル氏は1月の時点で、金相場は今年1-3月(第1四半期)が平均1200ドル、年末までに1500ドルに上昇すると予想した。昨年、金は24%上昇。今年は10日に1オンス=1072ドルと、年初から2%下落している。

  ウィンミル氏の投資眼にかなう鉱山会社の1つに、カナダのノーザン・ダイナスティ・ミネラルズがある。同社は英アングロ・アメリカンとともに米アラスカ州のペブル金・銅プロジェクトを進めている。英・オーストラリア系リオ・ティントが株式の20%を保有するノーザン・ダイナスティの株価は昨年124%上昇。今年は10日までに3%上昇し、8.52ドル。「これらの企業は鉄鉱石の採鉱について実に良く心得ており、経験豊富な上に資本も充実している」と指摘する。

  ミダスは米ニューハンプシャー州を拠点とするジャガー・マイニングの株式も保有している。同社はブラジルで老朽化した金鉱山の生産を再開。ウィンミル氏は、ジャガーの生産量が約5年以内に60万オンスと、08年の11万5000オンスから増加すると見込んでいる。買収される可能性も高いとみる。今年は10日までに、ジャガーの株価は14%下落し9.60ドル。

           4つの観点

  ウィンミル氏は、金相場を4つの観点から分析する。米国の財政政策と金融政策、市場の需給、そして地政学的な出来事だ。

  米国の財政赤字の拡大はドルの購買力低下につながると指摘。米国のマネーサプライ(通貨供給量)は01-09年にほぼ倍増し、8兆5000億ドルに達した。約14兆ドル規模の米GDP(国内総生産)は向こう10年間、年率平均1-2%の伸びにとどまる可能性が高いとみている。「米国のドル供給は倍増し、富は同程度だろう。従って、ドルの購買力は現時点の半分に低下する」と説明。その仮定に基づけば、金は価値の保存手段になると語る。

  需給見通しにはやや強気だ。スクラップ供給が増加する一方、宝飾品需要は後退、中央銀行は金の買い手となっており、鉱山からの供給は減少傾向にあるとウィンミル氏は指摘する。相場は通常、予想される最悪のケースを織り込むため、金相場を分析する上で最も重要度の低い観点は、戦争の危機など地政学的な事象ということになるという。

  ウィンミル氏はニュージャージー州ロカストで育ち、エール大学を1981年に卒業。4年後にワシントン大学で法律の学位を取得した。シアトルで弁護士として勤務した後、88年にニューヨークを拠点とする投資顧問会社ブル・アンド・ベア・グループに入社。当時父親が率いていた同社の名称を、99年にウィンミル・アンド・カンパニーに変更した。95年にミダス・ファンドを買収し、ウィンミル氏は2002年に同ファンドのポートフォリオマネジャー職を引き継いだ。

  08年には、ウィンミル氏は妻とともにニューヨークからニューハンプシャー州ウォルポールに転居。同州で通学する2人の息子たちの近くに住むためだ。田舎暮らしは気に入っていると言う。自分の土地でまきを割り、カエデの木を植えている。昨年の春にはメープルシロップを作るため、カエデの樹液を煮詰めた。その時の蒸気で自宅の壁紙の一部がはがれてしまったと笑う。この家は1866年に建てられたものだ。

            柔軟性あり

  ウィンミル氏によると、ミダス・ファンドは金だけに重点を置いているわけではない。「わたしは金専門というわけではない。資産価値の上昇に最も強くこだわっている」と言う。ファンドは、投資家に利益をもたらすため、プラチナや銅などの商品にも投資する柔軟性を兼ね備えているが、現時点ではそうする必要はないとし、「今、金は素晴らしい好機にあると思う」と語った。(マリアン・ブッソ)

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