2009年11月29日日曜日

ジム・ロジャーズが語るドル安と通貨危機

2009.11.03(Tue) Financial Times

著名投資家で、執筆業にも勤しむジム・ロジャーズ氏が、本紙(英フィナンシャル・タイムズ)の東京特派員リンゼイ・ウィップの取材に応じ、米ドルに対する懐疑的な見方や通貨危機が起きる恐れについて語った。以下はビデオインタビューに編集を加えた概要。


ジム・ロジャーズ氏はドルは欠陥通貨だと言い切る〔AFPBB News〕
FT かなり前から、ドルに対してネガティブだとおっしゃっていますね。今も懐疑的な見方は変わりませんか。

ロジャーズ ええ、変わりません。今、ありとあらゆる人がドルに懐疑的になっています。ドルは欠陥のある通貨です。今や何年ぶりかの安値水準にあります。

 ただ、悲観的な人がこれだけ大勢いますから、ドルが高騰する局面があっても驚きません。悲観派が大勢いる時――私を含めて――は、大抵、相場は反発するものですから。


悲観一色、ドルが反発すれば「売り」

 なので、仮にドルの上昇局面があったとしても、それが長続きするとは考えられない。長くても、1年か2年程度でしょう。私としては、その上昇局面で売り抜けるだけ賢明でありたいと思っています。

 一方で、ドルの上昇局面がなく、このままドル安が進むようなことがあれば、私は恐らくほかの人たちと一緒になって、パニックしてドルを売るんでしょうね。いずれにせよ、今後10年から20年について言えば、ドルには悲観的です。

FT ドルが準備通貨であることに対しても懐疑的だ、ということですね?

ロジャーズ ええ、そうです。多くの人が今、言っていますよ、「一体どうしたらいいのか」と。中国は特別引出権(SDR)を提唱しました。ほかの人々も様々な提案をしています。それが仮に「我々はどうすればいいんだ」と言うだけであったとしても。

米国と敵対する国は、ドル以外の通貨を使い始めています。ベネズエラはユーロを使い始めているし、イランは日本円を使っている。米国の友好国も心配し始めています。

 そう、だから必ず何か手は打たれるでしょう。市場がそれを強要するか、人々が迫り来る問題を認識してそれを解決するか、どちらかです。後者については、疑わしいと思っています。世界がそれほど賢明であることは、めったにない。特に官僚はそうです。ですから恐らく今後数年内に、市場が我々全員に解決策を強いることになるでしょうね。

FT それは、どんな解決策になると?


20年後であれば、ドルの代わりになる通貨は人民元以外に考えられない〔AFPBB News〕
ロジャーズ もし米国が今日海に沈んだとしたら、それ(解決策)はユーロなんでしょう。というのは、代わりとなる通貨がユーロ以外にないからです。今から20年後であれば、人民元かもしれません。

 現時点では馬鹿げた考えですよ。人民元は小さな通貨で、兌換性もありませんから。しかし、今後20年内にこの問題を解決し得るような、大規模な経済と人口、そして十分な外貨準備を持った国の通貨は、人民元しか考えられません。

 今から20年後までの間には、人はしばらくの間ユーロを試すかもしれない。いざとなれば、すてばちになってやるしかないでしょうね。あるいは、通貨バスケットやSDRを試すこともできる。ただ、長続きするとは思えません。コモディティー(商品)のバスケットをベースとした別の通貨を試すこともできるかもしれませんが。

1~2年以内に再び通貨危機が起きる

 これだけ多くの不均衡が存在しているので、私は今後1~2年内に、通貨危機、あるいは半ば危機のような「セミ危機」が起きると思っています。極端な話に聞こえるかもしれませんが、常にそれが繰り返されてきたんですよ。多くの問題が重なった時は、必ず、為替市場で問題が生じた。

FT 通貨危機とおっしゃる場合、もう少し詳しく言うと、どんなことが起きるんでしょうか。

ロジャーズ あなたがアイスランド人だったら、通貨危機がどんなものか分かっているでしょう。2~3年前に自国の通貨が崩壊し、すべてを失ったか、資産の大部分を失ったわけですから。

何が起きるかと言うと、ある特定の通貨がほぼ完全にその価値を失うんです。人々はもう、その通貨を受け入れなくなる。人々は破産していきます。

 次の危機は恐らく・・・どこで起きても不思議じゃない。ウクライナなのか、アルゼンチンなのか、私には分かりません。もしかしたら今回は、英国で起きるのかもしれないし、米国かもしれない。

 通常は、我々が普段考えもしないような小さな国があって、そこで何か問題が起き、どんどん雪だるま式に問題が膨らみ、ふと気づけば誰もが「一体どうしてこんなことが起きたのか」と口を揃えて叫ぶことになる。それが再び起きるでしょう。それも、さほど遠くない将来に。

FT 金についてはどう見ていますか。

金は数年内に2倍になる

金相場が下がる局面があれば、買い増すチャンス〔AFPBB News〕
ロジャーズ 金は持っていますよ。売ってはいません。金相場が下がれば、恐らく買い増すでしょうね。もし米国がイランを侵攻して、金相場が上昇すれば、その他の世界情勢次第でもっと買います。

 いや、でも金はもっともっと上昇しますよ。今後数年で、今の水準から少なくとも2倍にはなるでしょう。そうならないわけがない。

FT あなたは英ポンドにもネガティブですね。政権が代われば、懐疑的な見方が和らぎますか。

ロジャーズ 私はポンドは一切持っていません。今も、英国経済と英国の貿易収支の状態については心配しています。政権交代が役に立つとは思えません。

(動画インタビューはwww.ft.com/vftmで視聴できます)

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