2009年3月25日水曜日

SDRを新準備通貨とする案、長期的な議論必要=IMF筆頭副専務理事

3月25日10時34分配信 ロイター

[ワシントン 24日 ロイター] 国際通貨基金(IMF)のリプスキー筆頭副専務理事は24日、IMFの特別引き出し権(SDR)を新たな準備通貨とする案は特に目新しいものでなはないと指摘した上で、今後も議論が続くとの見方を示した。
同筆頭副専務理事は、SDRを米ドルに代わる世界的な準備通貨とする提案を中国高官が行ったことに対し、記者会見でコメントを求められ「こうした議論には、世界の経済と金融システムがどれだけ堅調かという懸念が伴う」と述べ、「多くの国により運営される機関が管理する通貨を世界的な通貨とするアイデアは、
目新しいものではない」と指摘した。
ただ「これは真面目な提案であり、この案の支持者も短期的な問題ではなく、長く研究し検討しなければならない案件であると認識していると考える」と述べ、SDRを新たな準備通貨とする案を完全には否定しなかった。


特別引出権(SDR)
http://www.imf.org/external/np/exr/facts/jpn/sdrj.htm
SDRは、加盟国の既存の準備資産を補完するために1969年にIMFが創設した国際準備資産です。SDRはIMFのクォータに比例して加盟国に配分されます。SDRはIMFや一部の国際機関における計算単位として使われています。SDRの価値は主要な国際通貨のバスケットに基づいて決められます。

SDRの創出の理由と現在の利用目的
特別引出権(SDR)は、1969年に固定為替相場制のブレトン・ウッズ・システムを支援するためにIMFによって創出されました。このシステムに参加している国は、為替相場を維持する義務に従い、世界の為替市場で自国通貨を購入するために使用できる公的準備―政府または中央銀行が保有する金及び広く受け入れられる外貨―を必要としました。しかし、その重要な準備資産の2つである金*と米ドルの国際的供給は、世界貿易の拡大と当時起こりつつあった金融発展を支えるには不十分であることがわかりました。そのため、国際社会はIMFの監視の下に新しい国際準備資産を創出することを決めたのです。

しかしながら、それからわずか2-3年後、ブレトン・ウッズ・システムは崩壊し、主要通貨は変動為替相場体制に移行しました。さらに、国際資本市場の成長により、信用力のある国の政府の借り入れが促進されました。これらの結果、SDRの必要性は減少しました。

現在では、SDRは準備資産としては限定的に利用されているに過ぎず、その主な機能はIMF及び他の一部の国際機関の計算単位として使われるというものになっています。SDRは通貨ではありませんし、IMFに対する請求権でもありません。
むしろ、それはIMF加盟国がもつ自由に利用できる通貨に対する潜在的請求権といえます。SDRの保有者は次の二つの方法でSDRと引き換えにこれらの通貨を入手することができます。一つは、加盟国間の自主的な交換取り決めを通じて、もう一つは、IMFが強い対外ポジションを持つ国を指定して、弱い対外ポジションを持つ国からSDRを購入させることによってです。

SDRの価値
SDRの価値は当初、純金0.888671グラムに相当するものと決められましたが、これは当時、1米ドルに相当しました。しかし、1973年のブレトン・ウッズ・システムの崩壊に伴い、SDRは通貨バスケットとして再定義されました。今日、バスケットはユーロ、日本円、英ポンド、米ドルで構成されています。米ドルで表示したSDRの価値はIMFのウェブサイトに毎日掲示*されています。その価値は、ロンドン市場における正午の為替相場をもとに、4通貨の特定金額を米ドルに換算したものの合計として毎日計算されます。

バスケットの構成は、世界の貿易及び金融制度における各通貨の相対的重要性を反映させるよう、5年ごとに見直されます。2005年11月に行われた最新の見直し*では、財およびサービスの貿易額、IMFの他の加盟国によって保有される当該通貨建ての準備の額に基づいて、SDRバスケットの通貨割合が改定され、同改定は2006年1月1日から実施されました。理事会による次回の見直しは2010年末に予定されています。

SDRの金利
SDRの金利*は通常の(譲許的でない)IMF融資*に対して加盟国に課される金利や、SDR保有に対して加盟国に支払われたり課されたりする金利、そしてクォータ出資額の一部に対して加盟国に支払われる金利を計算する際の基礎となります。
SDR
金利はSDRのバスケット構成通貨国の金融市場の代表的短期借入金利の加重平均をもとに毎週決定*されます。

SDR の配分
IMF協定の下では、IMFは加盟国に対しその出資割当額に比例したSDRを配分することができます。IMFはSDRの配分により利息がつかないが利払いもないコストのかからない資産を加盟国に提供します。ただし、加盟国のSDR保有額が配分額を上回る場合には、超過分に対して金利が支払われます。反対に保有額が配分額を下回る場合には当該国は不足分に対して金利を支払います。IMF協定はSDRの消却も認めていますが、現在までのところ、この条項は適用されておりません。また、IMFは自身にSDRを割り当てることはできません。

配分方法には次の二通りがあります。

SDRの一般配分:一般配分の決定は既存の準備資産を補完するという長期的かつグローバルなニーズに基づかなければなりません。一般配分は5年毎に検討されますが、これまでに配分決定は2回しか行われていません。第一回目の配分は1970-72年に行われ、総額93億SDRが配分されました。第二回目の配分は1979-81年で、累計額は214億SDRに達しました。

SDRの特別配分:1997年9月、IMFの総務会はIMF協定の第4次改正案を承認し、1回限りの特別配分を認めました。その結果、SDR配分の累計額は428億SDRに倍増することとなりました。この特別配分の趣旨は、81年以降にIMFに加盟した国々―加盟国の5分の1以上に達する―がこれまで一度もSDRの配分を受けていなかったという状況を是正し、IMFの加盟国すべてが公平にSDR制度に参加することができるようにするというものです。第4次協定改正案は総投票権数の85%を保有するIMF加盟国の5分の3(111カ国)が同意したときに発効します。2008年3月末現在では、77.68%の投票権*を持つ131カ国が改正案に同意しており、したがってもし16.75%の投票権を持つ米国が賛成すれば、改正案は発効することになります


詳細情報は、IMFのウェブサイト http://www.imf.org/ でご覧いただけます。

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