2009年2月24日火曜日

米金融機関破たん要因のCDS、円にも打撃か-為替予測で注目度増す

2月23日(ブルームバーグ):半年前までは国債の保証コストを示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の価格にあまり関心がなかったと話す三菱東京UFJ銀行の為替ストラテジスト、リー・ハードマン氏(ロンドン在勤)がここにきて、為替相場を予測するためCDSの動向を分析している。同氏はその結果、円と英ポンドの下落が予想されると言う。

ハードマン氏は、昨年9月の米リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの経営破たんを発端とした信用市場の機能停止「以前は、国債CDSに関して極めて詳細に検討しようとは考えはなかったが」、「今は、為替レートを決定する主要な要素として注目が高まる可能性のある分野だ」と指摘する。

債券のデフォルト(債務不履行)に対する保証コストを示すCDSは、昨年の米ウォール街の混乱に拍車を掛けた要因として批判されたが、ここにきて国債のCDSが通貨の力を測る指標としてトレーダーに利用され始めている。世界各国が少なくとも2兆4000億ドルの景気刺激策を約束し、国債を増発するためだ。各国中央銀行は政策金利をゼロに近づけており、国債利回り格差が縮小していることから、金利差は為替レートの予測手段として有用性が低下している。

円との相関性

本来、社債のデフォルトに対する保証として考案されたCDSは今、カナダ・ドルやニュージーランド(NZ)ドルなどあらゆる相場の方向性を予測する手段として活用されており、国債のデフォルトに対する保証コストとしての利用が増えている。CDSの価格は発行体の返済能力が低下したと認識されると上昇する。

1月以降、円と日本国債のCDSの価格の相関係数はマイナス 0.43に振れ、投資家の懸念が高まっていることが示唆されている。円とCDSの価格は昨年の同時期には、相関係数はプラス0.88で並行して動いていた。

政府統計から日本のリセッション(景気後退)の深刻化が示されている。2008年10-12月(第4四半期)の国内総生産(GDP)は前期比年率で12.7%減と、1974年の石油危機以来最大の落ち込みだった。円は対ドルで今年2.9%下落し1ドル=93円35銭付近で推移しており、2月は昨年4月以来最大の下げとなりそうな様相を呈している。

CDSの価格は日本国債のデフォルトが近いことを示唆しているわけではないが、17日にはCDSスプレッドは121ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、1月30日の49bpから急上昇した(CMAデータビジョン)。CDSスプレッド1bpは債務1000万ドルに対する保証料1000ドルに相当する。

英ポンドと英国債のCDS価格の過去1年間の相関係数はマイナス0.94。ポンドは同期間に対ドルで26%下落した。英国債の保証コストは17日時点で175bpと、1月30日の123bpから上昇。ポンドは同期間に0.8%下落した。

リーマンの破たん以前は、両国債の保証コストは74bpを上回ったことはなかった。ハードマン氏は保証コストの急上昇は、一段の通貨下落のシグナルだと指摘する。同氏はポンドが1-3月(第1四半期)末までに1ポンド=1.35ドルに、円は09年末までに1ドル=100円にそれぞれ下落すると予測している。

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